第四章 成長 第四十八話 嘘
第四章 成長 第四十八話 嘘
村の神社に、妖女の女が住んでいた。
妖は人間には見えないはずなのに、その男には見えていた。
こんなところで何をしているの?と男は尋ねると、女は、素直に、自分は妖であり、この場所から動くことが出来ないと言った。
男は、驚く様子もなく、それなら、私が、毎日、夕方に来るから、一緒にお話をしよう。と言った。
妖は半信半疑であったが、人間の男は毎日通った。
人間の男の話は、妖の女が知らない都会の話や海外の話だった。
男の話は大変魅力的だった。
妖の女は、目を細めながら笑った。
そして、妖の女はある日、気付いた。
自分は妖でもあるのに、この男を愛してしまったことを。
妖の女は、この男に会いたくはなかった。
だって、会うたびに、どんどん好きになってしまうのだから。
妖の女は、正直に、人間の男に言った。
会えば会う程、好きになる。
もう、辛いから、会いたくないと。
そうしたら、人間の男は言った。
自分も妖である君を、愛している。
男は、ある日、陰陽師を連れてきた。
妖をその場所から、動かすことが出来るという。
但し、代価がある。
それは、妖の女と過ごす日数分、人間の男の寿命も縮まるというものだった。
人間の男は、そのことは、誰にも、話さずに、女の妖と民家で暮らすことになった。
村人達は、最初は、この民家を避けていたが、いつしか、大勢の村人が訪れるようになっていた。
二人とも幸せだった。
ずっと、このまま、幸せな日が続くことを祈っていた。
暫くして、男は、原因不明な病気で、床に伏すようになった。
陰陽師が言っていた代価だった。
自分は、あとどれほど生きられるのだろう。
残り少ない人生を悲しむよりも、妻と幸せな時間を楽しもうと考えていた。
ある日、あの時の陰陽師が、その家に訪問した。そして、本当に後悔しないか?
と男に尋ねた。
彼女と一日生きるほうが、百年独りで生きるより価値がある。思い残すことはない。
ただ、私が亡くなった時、妖の女である妻が心配だ...
陰陽師は答えた。
心得た。お主が亡くなったあと、私がたまに、訪問しよう。
それで良いか?
かたじけぬ...
女は隣の部屋で二人の会話を聞いていた。そして、その場に崩れ落ちるように震えながら涙を流した。
陰陽師が帰ると、男は女を呼び、こう言った。
先程、陰陽師と名乗る男が、薬をくれた。
その薬を飲んでビックリ!治ったよ。
わははは...
妖の女は、男の嘘が心苦しかった。
人間という生き物は、他人の為に、自分を犠牲にしてまで生きる。そして、嘘をつく。
妖の女は、男の嘘に付き合った。
病気、治って良かったね!と妖の女も嘘をついた。
神代レイカは、車の中で、蒼也に説明した。
私達の先祖が、その陰陽師であり、引き継いで、毎年、レイカが訪問していることを。
そして、村に、車を止め、その民家に向かった。
女は、満面な笑顔で答えた。
レイカさん、こんにちは!




