第四章 成長 第二十六話 フォークダンス
第四章 成長 第二十六話 フォークダンス
キャンプファイヤーの燃え盛る炎が、夜空に火の粉を散らしている。周囲を取り囲む中学生たちの歓声が、山間の空気に溶け込んでいく。林間学校のメインイベント、フォークダンスが始まった。
「さやかちゃん、お待たせしました!」
聞き慣れた声に振り返ると、神代蒼也が当たり前のように私の手を引いた。私たちの交際が始まって、もう三年以上が経つ。教室ではいつも一緒だし、放課後の帰り道も、休日のお出かけも、私たちは常に二人セットだった。周囲の友人たちも今さら驚くことはなく、むしろ「やっと動き出したか」とでも言うような生暖かい視線を送ってくる。
流れてきたのは、軽快なステップの曲だ。蒼也の大きな手が、迷いなく私の手を包み込む。三年以上の積み重ねがあるからこそ、ダンスの動きは息がぴったりだ。互いの足がもつれる心配なんて皆無で、私たちは周りの騒がしさも忘れて、ただ二人の世界に没頭していた。
「蒼也君、少し歩幅大きい」
「わかってるよ。でも、こういう時くらいカッコつけさせてよ。
蒼也は苦笑しながら、少しだけステップを小さく合わせてくれた。付き合いが長い分、言葉を交わさなくても相手が何を考えているのかわかる。今の彼の照れ臭そうな顔も、わざと私をリードしたがる子供っぽい見栄も、全部ひっくるめて愛おしい。
ダンスの振り付けで手を取り合い、背中合わせになる。3年という月日は、私の中の彼の存在を、空気のように欠かせないものに変えていた。
「さやかちゃん小学校の林間学校の時も、こうしてダンスしたよね。」
「覚えてるよ。あの頃はまだ、二人で話すだけで顔を真っ赤にしてたのにね」
そう言って笑い合うと、蒼也は少しだけ切なげに眉を寄せ、
蒼也は少しだけ手を強く握った。フォークダンスの輪の中で、周囲の友達が冷やかし半分に笑う声が聞こえるけれど、私たちの耳には届かない。
「3年経ったけど、やっぱり緊張するよ」
「嘘つき。さっきまでドヤ顔でリードしてたじゃない」
「……さやかちゃんだからだよ。ずっと隣にいてほしいって、三年経っても思うんだから、仕方ないでしょう?
蒼也の直球の言葉に、私は思わず俯いた。山頂の夜風は冷たいはずなのに、繋いだ掌からは、熱いほどの体温が逆流してくる。
音楽が終わるのを惜しむように、私たちは精一杯、滑らかなステップを刻んだ。明日になれば、また日常の学校生活に戻る。けれど、この炎の光の中で繋いだ絆は、三年間積み重ねてきた思い出と共に、これからもずっと続いていくと確信していた。
「また来年も、こうして踊ろうね!
蒼也の呟きに、私は強く手を握り返した。星空の下、重なり合う二人の影は、誰の目にも自然な、一つの風景として溶け込んでいた。




