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誰トクだっ!?  作者: ちびっこ
『転機』
8/8

チートと特別枠。

またまたお待たせしました。

二次のプチイベント?が終わったので投稿します。

 この世界でチートという言葉を個人に使われることはまずない。人がどれだけ努力しても超えられない壁がある。それはこの世界だって変わらない。


 いくら身体を鍛えても、いくら才能があって魔力が多くても、精霊使いには叶わない。チートという言葉を使われるとき、必ず精霊の存在があるのだ。


 今回のチート装備も同じだ。上級精霊にだけ使える能力――加護の付加。


 手順は魔石を媒介に付加したい装備に加護を願うだけ。もちろん加護の大きさにより、必要な魔石の量も増えていく。しかし、それだけとも言える。


 上級精霊と契約しているなら、魔石を手に入れるのは簡単だ。魔物を倒せば、魔石は手に入ることが出来る。精霊使いだけでチートと呼ばれる存在なのだ。魔物を倒すのは彼らにとって苦労にもならない。


 また恐ろしいことに、上級精霊使いは魔物を倒した時に出る物――所謂ドロップアイテムを選べる。素材が要らないのならば、すべて魔石に変換することが出来るのだ。


 そもそもゲームのようなドロップアイテムというシステムは、はるか昔から精霊が行ってきたものだ。精霊にとって天敵の魔物は、死体でも害のある物だった。下手に人間が処理をすれば、被害は広がる。そのため人間が倒した魔物を清め、害のない物に変換していた。


 人間は魔物を倒せば、死体を精霊が素材や魔石に変える。その素材や魔石を使って装備を作り、人間はまた魔物を倒す。再び精霊が死体を素材や魔石に変え、まれに条件が整うと魔道具に変えることもあった。


 それが魔物使いが現れ、勇者が召喚されるまでのこの世界の流れだった。


 精霊と契約できる今、意思疎通がとれる上級精霊がいれば、ドロップアイテムを選べるのは当然なのだ。


 そうなると、上級精霊は重宝される。国が囲もうとするのも当然の流れと言ってもいい。この国は初代勇者の精霊が城に居たこともあり、大事に至らなかったが、他の国では恐ろしいことが起きた。


 上級精霊使いに無理矢理チート装備を量産させようとさせたのだ。そして、精霊使いと上級精霊使いを戦争の兵器として扱おうとした。


 すると、精霊が契約を切り、その国から精霊使いが居なくなった。その後、国がどうなったかは語るまでもないだろう。


 精霊使いの行動を強制してはいけないというのが、現在のこの世界の流れである。精霊使いが今まで悪事を働いたことがないのも関係しているだろう。王都にある学園の授業料が精霊使いなら無料というのも頷ける内容である。


 ちなみにだが、この国は現在城に2人の上級精霊使いが仕えている。確認されている上級精霊使いは5人だが、1人は特殊でもあるし、まだ子どもなので除外するとして、4人の内2人が城に居るのだ。これだけでこの国が優秀ということがわかるだろう。


 話がそれたが、私が何が言いたいかというと……私の手元にあるチート装備は、ソフィアだけでなくクロードも望んだから生まれたものだ。クロードが私のことを気に入ったと言ったのは、ウソではなかったようだ。


 それだけなら、光栄なことだろう。


 問題は、契約者以外にチート装備を与えることは滅多にないということだ。この国の王ですら、持ってるのか怪しい。


「……胃が痛い」


 チート装備は必ず譲渡不可だというのはこの世界の常識だ。他の人が着たとしても、ただのローブでしかない。戦争を回避するために契約を切った精霊達が、戦争の火種になるような過ちを犯すわけがない。そのためこのローブをめぐる争いに巻き込まれることはないだろう。


 しかし、何百万もする魔石を大量につぎこまれたこのローブは、価値にして一億はくだらない。私が平然のように着れるわけがなかった。


「はぁ」


 思わず溜息が出る。先程、ソフィアとクロードが「ごめんね、汚れるから白いローブは嫌って言っていたのに、汚れ防止機能を入れ忘れていたわ」と言って部屋にやってきた。


 もしかすると私が汚れ防止機能がなかったからショックを受けて倒れたのかと思ってるのかもしれない。再び取り出した魔石を見てツッコミする気力がなくて放置したが、誰かあの2人に常識を教えたほうがいいと思う。


 コンコン。


 ノックの音が聞こえたので、了承の返事をする。恐らく父だろう。母はノックをしないし、ソフィアとクロードは帰ったばかりだ。予想通り顔を覗かせたのは父だった。


「サクラ、調子はどう?」

「大丈夫。明日からはちゃんと仕事する」


 いつまでの寝込んでいるわけにはいかない。ソフィアとクロードはお金を払っているのだ。それに見合った動きをしなければならない。


 父が私の額の上に手を置いたので、ホッと息を吐く。父の手は大きいので、安心するのだ。


「サクラはもう少し甘えてもいいんだよ」


 仕事のことだろうか。父のことだから、私の体調を優先するように契約書を作ってるはずだ。それに副ギルドマスターという地位をつかって、ある程度手をまわすことも出来るのだろう。


「……大丈夫。それにあの装備は今の私に1番必要なものだから」


 ギルド職員はある程度の戦える力が必要で、最低でも自分を守れる力がいる。受付嬢のミレーヌですら、弓を使いこなせるらしい。ちなみに父は魔法の才能があるので即戦力だ。


 今の私はギルドの特別枠として採用されている。


 特別枠というのは、戦う力がないという理由で優秀な者を除外するというのはおかしな話という考えから作られたものだ。ギルドの規模によって枠数が決められ、さらにギルドマスターとギルド職員による推薦、また1年以内にギルドの利益を証明しなければならない。当然、1年以内に証明できれば二度と資格がなくなる。また余程のことがない限り、枠は増えることがないので選ぶのにも慎重になるというシステムだ。


 私が働いてるギルドは枠が2つしかなかったが、ギルドマスターが脳筋タイプなのもあり、この制度を使わず枠が空いていた。ギルドマスターの無茶振りから始まったので、父の推薦があれば問題ない。ギルドの利益は主に3つ。この年齢で指名依頼があるということは、優秀な人材の確保したと説明できるのが1つ目。冒険者から雇用要望があるのが2つ目。最後に魔物について記憶しているから。


 特に最後のは、珍しい。ギルド職員でも、日ごろから討伐対象の魔物でなければ覚えていない。しかし私は図鑑に載ってるものであれば、全て記憶している。


 理由は簡単で魔法を諦めた私が、次に興味を持ったのが魔物だったからだ。文字を覚えるのにもちょうど良かったのもある。また計算は日本と同じ算用数字だったので覚える必要がなく、時間が有り余っていたのもあった。父に頼み借りた本棚にあった図鑑が、ギルドで使われている物だったのもあった。


 こうして私は特別枠に入ることができたのだ。……経緯だけ見れば、まさしくラッキーガール。


 確かに運が良かったのもあるが、これだけは言いたい。覚えていても普段使わなければ忘れていくのだ。忘れないように毎日復習している。また新種の魔物が現れることもある。地道な努力でこの枠を守っているのだ。


 ギルド職員はそのことを理解しているが、世間は違う。ラッキーガールの異名が強すぎるのもあるのだろう。今は子どもなので許されているが、いつまでも私が特別枠にいれば、ギルドの信用までもが薄れてしまうだろう。


 そういった意味で、今回チート装備を手に入れることが出来たのは良かったことなのだ。


「焦らなくていい。ゆっくりで大丈夫だから」


 そのことを理解しているはずの父が、私に言い聞かせるように頭を撫でたので、不思議でしょうがなかった。

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