12 置いてけぼりのグラタン
リビングへ向かうにつれ、香ばしい匂いが強くなってきた。
「お母さん、今日のご飯なに?」
「ハンバーグとあなたの好きなグラタンよ。」
「・・そう。」
私はイスへ腰掛けた。
あの男がソファーで横になりテレビの左上がわ一点だけをボーっと見つめていた。
しかし、何だろうこの重々しい空気は、
この男がいるだけで、この場の雰囲気が暗く感じられた。
「出来たわよ。」
母は、出来たその肉汁がジュワッとはじけ飛んでいるハンバーグを皿に乗せ、テーブルへと置いた。
そして、あの男は熱々のハンバーグを躊躇なく口の中へ運びあまりにも熱かったのだろう、吐き出していた。
ただのバカじゃないのか?普通は考えて食べるでしょう。
私は、そのハンバーグをフォークで半分と半分に切りフーフーと勢いよく息を吹きかけて冷まし時間をおいて食べた。
それでも舌の上に置くと熱さが舌全体に広がり、口の中の上の方に膜がはるほど熱かった・・そう考えるとあの男が初めに食べたハンバーグは、相当熱かっただろう余計バカだと思い笑えてきた。
ハンバーグを食べ終わると母が熱々のグラタンを持ってきたブクブクとマグマの様に泡をたてるクリームそして、その表面の膜がはじけ飛びこんがりと焼けたチーズの香りが更に食欲をそそる。
早く食べたいけど、そうはいかない、おいしい物は少ししんぼうしないと、食べられないような試練を与えられているような感じがした。とたん、
横を見ると、あの男が出来たてをさっそく食べて舌を焦がしていた。本当にこの人ってバカだ、まるで学習能力がない。もう少しで食べられる、そう思った矢先ケイタイの音が鳴った。メールの受信音だ。
こんな時に、一瞬は、そのメール無視しようとしたけど、この学生社会に生きる人間として、それを無視したら、その繋がりから糸が切れるんじゃないかと思うと、すごく心配になり、そのメールを開いた。
〔助けて。〕
はぁ・・・・何これ!?
マジか!?
早く行かなきゃ!!
「お母さん!!私ちょっと用事ができた。」
「えっ!?今から?用事って何よ。」
「後で話すから!!」
私は、ちょうどいいくらいの温度になったグラタンを置き去りにして、急いで家を出た。
はぁはぁ、一体何があったのよ、腹筋の横が痛くなるほど思いっきり走り、学校に着いた頃には、息が尋常じゃないほど、あがっていた。
私はメールを送った。
〔今、学校に着いたけど。どこにいるの?〕
・・・・。まだか、メール。
メールが来る数秒が少し長く感じられた。
・・・・・やっときた、
〔屋上。〕
屋上か、暗く薄気味悪いグラウンドとは、裏腹に室内は明るい場所が所々あった。屋上って。どこから行くんだっけ?
あっ!?あそこからだっけ、でも、あそこからだと職員室を通らないといけないしな、先生に見つかると、何って言い訳していいか分からないし、色々と厄介だ。
ここからドアと窓を見ると人影が何人か見えるな。
この先生たちがイスに座った時がチャンスだ。よし!!いまだ!!
私は、こっそりと忍び足をしながら、職員室の前を歩いた。
うわぁ!?
今見られた!?
すぐさましゃがんで、窓の下に隠れた。セーフか?
でも、今確かに見られたよな。まぁバレてないんならいいか・・私は、そのまま中腰のまま横にカニ歩きをしながら、職員室を通り過ぎようとした。
よし!!
もう少しだ。
「あっ!?」
思わず声が出た。私の横に坂倉先生が腰に手を添えてこっちをじっと見ていたのだ。
「やっぱり菊池か、さっき目合ったろ。」
やっぱりバレてたのか!!
「それで何の用ですか菊池ルナさん。」
先生はわざとらしく、改まった言葉で言った。
「えぇ~~と・・えぇ~~~とですね・・・」
私は何も言う言葉が見つからなくて、あたふたしてしまった。すると先生は、顔を近づけ目を針金みたいに細めて鋭い口調で言った。
「もしかして、犯人はお前か!?」
「えっ。」
「犯人だよ。犯人。」
「・・・・犯人って?何の事ですか?」
「しらばっくれるな、お前なんか隠しているだろう。」
「・・・・えっ。」
「あれだよ、あれ。」
「あれって?なんですか。」
「だから、あれだよ。そうまでして言わせるのか、答案用紙泥棒だよ!!」
「・・・・えっ答案用紙泥棒!?」
「そうだよ、最近、答案を盗まれてなぁ、こっちは、もう大変な事になっているんだよ。」
「はぁ。」
「それで、お前の仕業か?他に仲間がいるのか?」
「いえいえ、私じゃないですって、誤解ですよ!!」
「じゃあ今ここに何しに来たんだ!?」
もし友達に〔助けて。〕って言われて学校に来たって言えば、その子に悪いし、もしかしたら、友情関係も危うくなるし。かと言って何も言わずにいると答案泥棒に間違われるしな、私は、脳みそのありとあらゆる所から考えをこらして、思いついた言葉を何でもいいから喋った。
「え~~~っと、あの~~~・・・あっ!?ペンダントですよペンダント・・・亡くなったおばあちゃんの形見なんですよ!!あれがないと、おばあちゃんに悪いし。どうしよう!!私どうしよう!!」
「それって本当か?」
「はい!!そうです。」
「本当なんだな。」
「はい!!本当です。」
「そこまで言うんなら・・・・じゃあお前の親に電話して、確認するか。」
・・・・えっマジで・・・




