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黒い夢と白い夢Ⅵ ――漆黒の楽園――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第5章 黒の艇 ――ジェネラル・シップ――
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第17話 まぁ、仕方ないよね

 【ジェネラル・シップ A区画】


 爆音のする方に向かって走っていくと、やがて大きなエリアに出た。橋や階段が複雑に入り組んだエリアだ。


「ここはA・B・C区画に通じる基幹地点のような場所です」


 付いてきたルベライトが言う。なるほど、ここから3つの区画に行けるのか。……ということは、A区画――前頭甲板の最高司令室にも行けるのか。

 そう考えていると、下の方から再び爆音が鳴り響く。見れば、橋と橋や階段と階段、橋と階段を繋ぐ接続用広場の1つから、白い煙が上がっている。私はそこを目指して階段を下りていく。


「はぁはぁっ……! なんて強さ……!」

「パトラー?」

「…………?」


 私は煙の中にいる女性に声をかける。……間違いなくパトラーだ。ただ、なぜか彼女は裸だった。その身体には、いくつもの傷がついている。


「…………! ……あ、ああ、クラスタ。すまない、助けに来たのに」

「大丈夫か? 相手は―― …………!?」


 煙の向こうにいるのは、なんとパトラーだった(あっちのは服を着ているな)。その後ろにエコノミアシティで降伏したルビー中将とサファイア中将までいる。


「ク、クラスタ!?」

「パトラー、なのか?」

「クラスタ、あれは偽物だ! 実はルビーとサファイアに裏切られて、一度ヒーラーズ軍に私も捕まったんだ。そして、服を脱がされて…… アイツはゾイサイト中将だ。他人の姿をコピーする技を使ってくる」


 裸のパトラーが、服を着たパトラーを指さして話す。……どちらも本当によく似ている。2人が裸だったら、見分けがつかない。

 私はルベライトの方をチラリと見る。彼女は裸のパトラーと、服を着たパトラーに視線をやる。


「確かにゾイサイトは他の人をコピーし、完全に化けることができます。どちらかが本物で、どちらかが偽物です」

「それはまいったな……」

「クラスタ、そのクローン兵は……?」

「ああ、ルベライトだ」


 ……今の質問は、本物がルベライトのことを知らないでしたのか、偽物が信じさせるためにわざとしたのか……


「うわっ、本当に瓜二つだ」

「ゾイサイトさんの能力、初めて見た……」

「ルベライトさーんっ! 気を付けてくださーいっ!」


 上の方では、ルベライトの部下がワイワイと騒いでいる。目の前には傷ついた裸のパトラー。遠くには、服を着たパトラーとルビー、サファイアの3人。さて、どうしたものか。


「……パトラー。お前は一応、臨時政府総帥なんだ。あまり危険なことはしないで欲しい」

「ごめん、クラスタ……」

「すまない……」

「…………」


 どっちも本物のように見えるな。


「まぁいい。私の実力は知ってるハズだ。臨時政府筆頭将軍の私に、あとは任せろ」


 そう言うと、私は剣を抜き取り、後ろを振り返る。私の視線の先には、ルベライトがいた。


「ルベライト、お前の考えは見抜いている。……隙見て私を捕えるつもりだろう。アーカイズ同様、ずる賢いな。上の部下もそのための、だろう?」

「なにぃ!」

「ルベライトさんがずる賢いだと!?」

「ふざけるな!」

「私たちの中将を侮辱してっ、許さない!」


 上の階層にいるルベライトの部下たちが怒り出す。だが、ルベライトは至って冷静だった。


「まずはお前から片づけておこうか」

「クラスタ!?」


 服を着たパトラーが叫ぶ。私はその声を無視して、ルベライトに飛びかかる。彼女もレイピアを再び手にし、私と激しく斬り合う。何度も金属同士が触れ合い、火花が飛ぶ。

 だが、勝負はあっという間についた。レイピアが叩き落される。また、私は彼女の首に剣を付き付ける。


「…………。……さっきも行った通り、部下には――」

「いや、それは無理だ」

「なッ……!?」


 俯き気味だったルベライトが私に顔を向ける。上では、彼女の部下が今にも飛び出してきそうな勢いだ。


「クラスタ、殺すのか?」


 裸のパトラーが近寄ってきて言う。


「ああ、ここで私たちが倒れるワケにはいかない。万が一ということもある。それに、これまでもたくさんのクローン兵を私たちは殺めてきた。これが初めてでもない」

「お願いです、部下だけは……」

「ルベライト、すまない。私たちも死ぬワケにはいかないんだ。私たちが死ねば、臨時政府は、世界はどうなる。本当にすまない。世界のためだ――」

「……まぁ、仕方ないよね。私たちにも、自由と平和を取り戻すって夢があるから……」


 裸のパトラーは軽くそう言うと、一歩下がろうとする。だが、その前に、私は素早く振り返る。


「えっ――?」


 私は裸のパトラーを斬り付ける。更に魔法発生装置で左拳に衝撃波を纏い、それで彼女の腹部を殴りつける。裸のパトラー――いや、ゾイサイトは吹き飛ばされ、遠くの接続用広場に激突する。広場が崩れていく。


「クラスタ!」


 服を着たパトラー――本物のパトラーが走り寄ってくる。その後ろからルビーとサファイアもやってくる。


「あんた、これが本物ってなんで分かったんだ?」


 ルビーが感心したような表情で聞いてくる。私は剣を鞘に戻し、ルベライトを立たせながら答える。


「……最後のセリフで分かった」

「“仕方ないよね”のヤツか?」

「本物ならあんなこと言わない。私を押し倒してでも止めに入るハズだ」

「クラスタ……」

「所詮、アレは表面だけのコピー……劣化模造品でしかない」


 私はルベライトにレイピアを渡しながら、一言謝る。だが、彼女も、私が本気で殺す気はなかったことを分かっていたようだった。一言、“知ってた”と言い、レイピアを腰に戻す。すると、上の方にいる彼女の部下たちが、拍手と歓声を上げる。


「す、すごい!」

「クラスタって天才か!?」

「いいもの見させて貰ったよ!」

「クラスタの演技を見破るルベライト中将もすごいです!」


 歓声を耳に入れながら、私たちは前頭甲板を目指して歩いて行こうとする。だが、――


「ルベライト、ずいぶん楽しい状況になっているようだな――」

「…………! アーカイズさんっ……!」


 広いこのエリアの空中を、小型ジェット機で飛ぶクローン軍人――戦闘士アーカイズが、私たちを見下ろしていた。

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