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黒い夢と白い夢Ⅵ ――漆黒の楽園――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第5章 黒の艇 ――ジェネラル・シップ――
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第16話 死なないで、ルベライト中将!

 【ジェネラル・シップ B区画 監房ブロック】


 私は手を拘束するロープを、壁に立てかけた剣で斬る。近くには、気を失ったヒーラーズ精鋭兵が倒れている。


「もう少し警戒するべきだったな」


 私はそう言い、手首のロープを床に捨てる。

 少し前、このヒーラーズ精鋭兵が独房にやってきた。私を無理やり立たせ、最高司令室のある前頭甲板に連れて行こうとした。そのとき、私は勢いよく頭突きを喰らわせ、彼女を気絶させた。

 私は剣を手に、独房から出る。この剣はさっきのヒーラーズ精鋭兵の剣だ。彼女の剣を使い、ロープを斬った。


「……さて、ここはどこだ?」


 監房ブロックらしく、独房が並んでいる。ただ、どの独房にも誰もいない。ここに収監されていたのは、私だけのようだ。

 しばらく歩いていると、鋼の扉が見えてきた。独房ではなさそうだ。その扉に近づくと、それは左右にスライドして開く。中は荷物置きのようだ。


「これは……!」


 私は自分の剣を見つける。捕まったときに奪われた武器や道具は、ここに保管されていた。私はヒーラーズ精鋭兵から奪った剣を捨て、自分の剣を腰に装備する。

 それが終わると、私は荷物置き場から出る。再び誰もいない独房区画を走る。やがて、また扉に出くわす。そこから廊下に出て、また扉を開けると、今度は大きな廊下に出る。


「…………!?」

「なっ!?」


 そこにいたのはヒーラーズ強襲兵と、ヒーラーズ強襲部隊で1人しかいない一般幹部――ルベライト中将がいた。


「ク、クラスタっ!?」

「ルベライトか」


 私は2本の剣を手に取る。彼女はヒーラーズ強襲部隊一般幹部にして、戦闘士アーカイズの弟子だ。優しそうな顔してるが、油断ならない。

 ルベライトは私を捕えようと、背中に背負ったジェット機を起動させ、宙に飛び上がる。ヒーラーズ強襲兵たちも身構える。だが、――


「みんなは下がってて。ここは私がやる!」

「ルベライトさん!」


 ルベライトが飛んでくる。その手には細長い剣――レイピアが握られていた。斬るというよりも、刺すタイプの剣だ。私は剣を持ち上げ、構える。ルベライトは私の右肩を刺そうと飛び込んでくる。


「…………」


 私はルベライトの攻撃を素早く避け、その身体を蹴り上げる。バランスを崩したルベライトは、壁に叩きつけられる。血を吐いて、床に倒れる。


「ルベライト中将!」


 ……ルベライトは私の命を奪おうという気は全くないらしい。それどころか、刺そうとすらしてなかった。右肩をレイピアで狙っているのかと思ったが、そうじゃない。ジェット機で飛び込んで、私を押し倒そうとしていた。傷つけずに、捕まえようとしたらしい。


「あんなに優しいルベライトさんをよくも!」

「クラスタを捕まえるんだ!」


 100人近いヒーラーズ強襲兵が、私に向かってこようとする。こちらは私も本気でかかった方がよさそうだな。


「みんな、やめなさい!」

「…………!?」

「ルベライトさん!?」


 フラフラになりながら、ルベライトは立ち上がる。あれだけ強く鋼とコンクリートの壁に突っ込んでおきながら、まだ立てるというのはさすがだな。普通だったら死んでいる。


「アーカイズさんの期待と、人の命…… どちらも、大切だけど、私は命を守る!」


 そう言うと、ルベライトは私に向かって走ってくる。私は剣で応戦する。さすが、ルベライトはヒーラーズ強襲部隊の一般幹部になれるだけはある。かなりの使い手だ。だが……

 激しい攻防。私は勢いよくルベライトの剣を弾き飛ばす。レイピアは、宙でくるくると舞いながら、持ち主の遥か後ろの床に刺さる。

 私はルベライトの首に剣を突きつける。


「……お願いです。部下たちには手を出さないでください。私を殺しても構いませんから」

「…………」

「ルベライトさんっ……!」

「そんな、死なないでくださいよ!」

「死なないで、ルベライト中将!」


 ……ルベライトとアーカイズ。戦い方は似ているが、性格は真逆なのかも知れない。ルベライトは戦闘士の弟子には不向きのような気さえもする。


「……なぜ本気で戦わなかった? お前、私を殺す気どころか、傷つける気さえもなかったんじゃないか?」

「私はいつだって本気です。アーカイズさんの期待にも応えたかった。ただ、それでも、私にも信条があります。“自分以外、誰の血も流させない”という……」

「…………」


 部下の血。そして、敵の血も流させない。それがルベライトの信条なのだろう。それがなければ、彼女はかなりの猛者だ。……猛者であることが、いいかどうかは別だが。

 私は剣を鞘に戻し、歩き出す。ルベライトも、彼女の部下たちも手を出しては来なかった。私は広く大きな廊下を歩いていく。

 だが、そのとき、どこからか大きな爆音が鳴り響き、一帯が揺れる。


「今の音は……?」

「……C区画にはゾイサイトがいます。彼女が暴れてるのかも……」

「そうか」


 ……ということは、パトラーがまた単独でこのジェネラル・シップに乗り込んできたのかも知れない。彼女とは長い付き合いだ。よく知っている。確かめに行った方がよさそうだな。

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