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黒い夢と白い夢Ⅵ ――漆黒の楽園――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第5章 黒の艇 ――ジェネラル・シップ――
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第15話 じゃぁ、あなたの服を頂戴よ

 【ジェネラル・シップ内部 F区画】


 私は剣を鞘に戻す。目の前でヒーラーズ強襲兵が倒れる。私はルビーとサファイアと共に、ジェネラル・シップを進んでいた。すでにエントランス・エリアから、内部エリアに入っていた。

 クラスタが捕えられているハズの監房ブロックはB区画にある。最高司令室のある前頭甲板からだいぶ近いエリアだ。


「いたぞ!」

「パトラーを捕まえろ!」

「また来たぜ?」


 ルビーが槍を手に、新手のヒーラーズ強襲兵に向かっていく。私とサファイアも彼女に続く。私はサブマシンガンで、サファイアは弓矢で応戦する。


「喰らえっ!」

「あぐっ!」


 ソフィア曰く、このヒーラーズ強襲部隊(第3a兵団)とヒーラーズ精鋭部隊(第3b兵団)を倒せば、もうヒーラーズ軍は壊滅するらしい。


「あうっ!」


 残るのはヒーラーズ防衛部隊(第4a兵団)とヒーラーズ親衛部隊(第4b兵団)だけ。しかも、この2兵団は、兵力も少ない。合わせても1000人近くらしい。


「うわっ!」

「強すぎる……!」


 だから、この戦いが終われば、ヒーラーズ軍による侵略戦争は完全に失敗となる。“ヒーラーズ軍”と戦うのは実質、最後なのかも知れない。


「クッ……! せめてパトラーだけでも!」

「簡単にやられるか!」


 残るはダーク・サンクチュアリのセネイシアと親衛士エデン。それと、エコノミアシティの戦いでも剣を交えた剣闘士レーリアだ。この3人を捕まえれば、ヒーラーズは崩壊する。

 ヒーラーズ強襲兵たちを倒した私たちは、ジェネラル・シップの広い廊下を走る。白い雲とその隙間から青い空が見える窓から、太陽の光が差し込み、金属の床に光を反射させている。


「パトラーだ!」

「逃がすな!」


 またヒーラーズ強襲兵が現れる。彼女たちの1人が私たちに手をかざす。斬撃が飛んでくる。私はルビーとサファイアの前に飛び出し、自分の剣でその斬撃を弾く。高い金属音が鳴り響く。


「弾かれた……!?」

「パトラーは国際政府の将軍だ! 油断するな!」


 私は剣を抜いたヒーラーズ強襲兵に斬りかかる。お互いの剣がぶつかり合い、金属音が激しくなり、火花が散る。


 エコノミアシティで戦った、ヒーラーズ制圧兵とヒーラーズ鎮圧兵。彼女たちは人間の軍人と、そんなに変わりはない。

 ウォルタミアシティで戦った、ヒーラーズ駆逐兵とヒーラーズ掃討兵。彼女たちは魔法を使うという点で、人間とは異なる力を持つ。

 そして、このジェネラル・シップにもいるヒーラーズ強襲兵とヒーラーズ精鋭兵。彼女たちは魔法に加え、超能力も使える。斬撃や衝撃を飛ばすことができた。まさに、クローン強兵というに相応しいだろう。


 でも、私は彼女たちに殺されるワケにはいかない。私は国際政府の将軍にして、臨時政府の暫定総帥だ。それに、私にはラグナロク大戦を終わらせ、自由と平和を再生する、という夢があった。ここで死ぬワケにはいかない。





 【ジェネラル・シップ C区画】


「……あなたがパトラー=オイジュスね」

「…………?」


 たくさんのヒーラーズ強襲兵を倒しながら、ジェネラル・シップを走っているときだった。黒いローブを纏ったクローンが現れる。年齢が少し若い(クリアよりかは上そうだ。15歳ぐらいだろうか?)。


「ゾイサイト中将!」

「中将!? この子が!?」


 ソフィアから聞いていた。魔導士フェールが率いるヒーラーズ精鋭部隊。そこに所属する唯一の一般幹部――ゾイサイト中将。


「前頭甲板には行かせないよ!」


 フワリとゾイサイトの体が宙に浮かぶ。ソフィア曰く、“ヒーラーズ軍ナンバー2の魔法使い”らしい(ナンバー1はフェールらしい)。気を付けないと……

 私は素早く剣を抜く。だが、その途端、私の身体は紫色の煙に包まれる。煙は無味無臭。身体の様子も変化しない。毒ではなさそうだ。


「なんだとッ!?」

「えっ、なに? どうした!?」


 ルビーの声に私は後ろを振り返る。彼女は宙に浮いたゾイサイトを指さす。私もゾイサイトに視線を戻す。


「…………!?」


 ゾイサイトも紫色の煙に包まれていた。煙に包まれながら、黒いローブを脱ぎ捨てる。ローブの下には何も身に着けていなかった。煙の間から肌が見えていたけど、やがてそれも煙に消える。

 気が付けば、私を覆い尽くそうとしていた煙がなくなっている。煙は、すべてゾイサイトの元に戻っていったようだ。


「……クラスタ、すぐに助ける」

「は?」


 ゾイサイトを覆っていた煙が消えていく。


「はっ……!?」

「アレがゾイサイトのみが有する力ってヤツか。ウワサには聞いてたけどな」

「パトラーさん!?」


 煙の中にいたのは、ゾイサイトじゃなかった。――“私自身”だった。


「私は相手をコピーすることができる魔法を使えるのよ。姿だけじゃない。能力・記憶もコピーできる」

「……せめて服は着てくれないか?」


 声さえもコピーしたゾイサイトに向かって、私は言う。衣服までは作れないらしく、彼女は裸だ。どっちがどっちか、分からなくなることはなさそうだ。


「そうね。……じゃぁ、あなたの服を頂戴よ」

「なに?」

「あなたの服を私が着る。そうすれば、――私が臨時政府総帥よ」

「…………!」


 コイツ、私に成り変わろうとしているのか!


「……へぇ、あなたの記憶はすごいね。臨時政府軍・国際政府軍の配備、首都の構造、元老院議事堂の構造、政府要人の情報、……あなたのお父さん、国際政府元老院副議長だったんだ」

「人の記憶を……!」

「身体を見られることを気にする前に、記憶の方を心配した方がよさそうね。……最後に自分の身体を慰めたのは――ふぅん、そうなんだ」


 …………!


「悪趣味なクローンですね……」

「プライバシーもクソもあったもんじゃねーな」


 ルビーが槍を、サファイアが弓をゾイサイトに向ける。私も剣を震える手で握る。……ナンバー2の魔法使い。腹黒さではナンバー1だろう。

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