第15話 じゃぁ、あなたの服を頂戴よ
【ジェネラル・シップ内部 F区画】
私は剣を鞘に戻す。目の前でヒーラーズ強襲兵が倒れる。私はルビーとサファイアと共に、ジェネラル・シップを進んでいた。すでにエントランス・エリアから、内部エリアに入っていた。
クラスタが捕えられているハズの監房ブロックはB区画にある。最高司令室のある前頭甲板からだいぶ近いエリアだ。
「いたぞ!」
「パトラーを捕まえろ!」
「また来たぜ?」
ルビーが槍を手に、新手のヒーラーズ強襲兵に向かっていく。私とサファイアも彼女に続く。私はサブマシンガンで、サファイアは弓矢で応戦する。
「喰らえっ!」
「あぐっ!」
ソフィア曰く、このヒーラーズ強襲部隊(第3a兵団)とヒーラーズ精鋭部隊(第3b兵団)を倒せば、もうヒーラーズ軍は壊滅するらしい。
「あうっ!」
残るのはヒーラーズ防衛部隊(第4a兵団)とヒーラーズ親衛部隊(第4b兵団)だけ。しかも、この2兵団は、兵力も少ない。合わせても1000人近くらしい。
「うわっ!」
「強すぎる……!」
だから、この戦いが終われば、ヒーラーズ軍による侵略戦争は完全に失敗となる。“ヒーラーズ軍”と戦うのは実質、最後なのかも知れない。
「クッ……! せめてパトラーだけでも!」
「簡単にやられるか!」
残るはダーク・サンクチュアリのセネイシアと親衛士エデン。それと、エコノミアシティの戦いでも剣を交えた剣闘士レーリアだ。この3人を捕まえれば、ヒーラーズは崩壊する。
ヒーラーズ強襲兵たちを倒した私たちは、ジェネラル・シップの広い廊下を走る。白い雲とその隙間から青い空が見える窓から、太陽の光が差し込み、金属の床に光を反射させている。
「パトラーだ!」
「逃がすな!」
またヒーラーズ強襲兵が現れる。彼女たちの1人が私たちに手をかざす。斬撃が飛んでくる。私はルビーとサファイアの前に飛び出し、自分の剣でその斬撃を弾く。高い金属音が鳴り響く。
「弾かれた……!?」
「パトラーは国際政府の将軍だ! 油断するな!」
私は剣を抜いたヒーラーズ強襲兵に斬りかかる。お互いの剣がぶつかり合い、金属音が激しくなり、火花が散る。
エコノミアシティで戦った、ヒーラーズ制圧兵とヒーラーズ鎮圧兵。彼女たちは人間の軍人と、そんなに変わりはない。
ウォルタミアシティで戦った、ヒーラーズ駆逐兵とヒーラーズ掃討兵。彼女たちは魔法を使うという点で、人間とは異なる力を持つ。
そして、このジェネラル・シップにもいるヒーラーズ強襲兵とヒーラーズ精鋭兵。彼女たちは魔法に加え、超能力も使える。斬撃や衝撃を飛ばすことができた。まさに、クローン強兵というに相応しいだろう。
でも、私は彼女たちに殺されるワケにはいかない。私は国際政府の将軍にして、臨時政府の暫定総帥だ。それに、私にはラグナロク大戦を終わらせ、自由と平和を再生する、という夢があった。ここで死ぬワケにはいかない。
*
【ジェネラル・シップ C区画】
「……あなたがパトラー=オイジュスね」
「…………?」
たくさんのヒーラーズ強襲兵を倒しながら、ジェネラル・シップを走っているときだった。黒いローブを纏ったクローンが現れる。年齢が少し若い(クリアよりかは上そうだ。15歳ぐらいだろうか?)。
「ゾイサイト中将!」
「中将!? この子が!?」
ソフィアから聞いていた。魔導士フェールが率いるヒーラーズ精鋭部隊。そこに所属する唯一の一般幹部――ゾイサイト中将。
「前頭甲板には行かせないよ!」
フワリとゾイサイトの体が宙に浮かぶ。ソフィア曰く、“ヒーラーズ軍ナンバー2の魔法使い”らしい(ナンバー1はフェールらしい)。気を付けないと……
私は素早く剣を抜く。だが、その途端、私の身体は紫色の煙に包まれる。煙は無味無臭。身体の様子も変化しない。毒ではなさそうだ。
「なんだとッ!?」
「えっ、なに? どうした!?」
ルビーの声に私は後ろを振り返る。彼女は宙に浮いたゾイサイトを指さす。私もゾイサイトに視線を戻す。
「…………!?」
ゾイサイトも紫色の煙に包まれていた。煙に包まれながら、黒いローブを脱ぎ捨てる。ローブの下には何も身に着けていなかった。煙の間から肌が見えていたけど、やがてそれも煙に消える。
気が付けば、私を覆い尽くそうとしていた煙がなくなっている。煙は、すべてゾイサイトの元に戻っていったようだ。
「……クラスタ、すぐに助ける」
「は?」
ゾイサイトを覆っていた煙が消えていく。
「はっ……!?」
「アレがゾイサイトのみが有する力ってヤツか。ウワサには聞いてたけどな」
「パトラーさん!?」
煙の中にいたのは、ゾイサイトじゃなかった。――“私自身”だった。
「私は相手をコピーすることができる魔法を使えるのよ。姿だけじゃない。能力・記憶もコピーできる」
「……せめて服は着てくれないか?」
声さえもコピーしたゾイサイトに向かって、私は言う。衣服までは作れないらしく、彼女は裸だ。どっちがどっちか、分からなくなることはなさそうだ。
「そうね。……じゃぁ、あなたの服を頂戴よ」
「なに?」
「あなたの服を私が着る。そうすれば、――私が臨時政府総帥よ」
「…………!」
コイツ、私に成り変わろうとしているのか!
「……へぇ、あなたの記憶はすごいね。臨時政府軍・国際政府軍の配備、首都の構造、元老院議事堂の構造、政府要人の情報、……あなたのお父さん、国際政府元老院副議長だったんだ」
「人の記憶を……!」
「身体を見られることを気にする前に、記憶の方を心配した方がよさそうね。……最後に自分の身体を慰めたのは――ふぅん、そうなんだ」
…………!
「悪趣味なクローンですね……」
「プライバシーもクソもあったもんじゃねーな」
ルビーが槍を、サファイアが弓をゾイサイトに向ける。私も剣を震える手で握る。……ナンバー2の魔法使い。腹黒さではナンバー1だろう。




