第43話 援軍
「………………タイミングが最悪だねぇ
今ぁこっちが、楽しんでる間に来られちゃあ
楽しむ余裕も無くなっちまうじゃないの」
「援軍?そんな、まさか……」
戦場が王都である限り、戦艦のような
大規模破壊兵器の運用は無いと考えていた
もし使えば、連中が自分達の手で
本拠地である、王国を潰しかねないから
それでも連中は、それを使った
正直、万事休すかと思ったんだけど……
艦隊からの集中砲火を浴びて、私達は生きている
否、砲撃を浴びる前に……砲弾が全部
別の艦隊によって撃ち落とされた……
いったいどこに、そんな協力的な援軍居たのよ
「ゲルダ、アレ」
「間違いない、わね
あの艦隊は、魔王軍のものよ……」
魔王軍!?
へ……そんな、ありえない
なんでそんな連中が、この局面で手助けなんて……
もしくは、魔王軍の王都進行の時期が
私達と被っただけ……そんな都合のいい話
あるわけ、ないわよね……
「それでも、有り難い!
外の奴らは、連中に任せていいんだな!
ならば俺達は、目の前の相手一人に集中できる!」
金髪……ええ、その通りよ!
理由はどうであれ、この戦場で
あの艦隊を足止めできるのは、奴等しかいない
だったらそれに甘んじて、私達は
ラグナロク一人を、ここで相手すればいい!
「チョーシ付くなよぉ……テメェ等を襲う脅威はまだ
このラグナロクさん一人で事足りる」
再生……し終わってるわね
クソ早いな
さぁて、この怪物
どうやって相手しましょうかね
観察しろ、勝機を見逃すな
相手は不死身の怪物……
さっきの攻撃で頭が吹っ飛んでるのに、もう再生してる
おそらく火力でのゴリ押しは、不可能
だからって拘束しようにも
あのウネウネが邪魔すぎる……
至極真っ当な攻略法が浮かばない、としたら
次に考えるべきは、邪道
当初の想定からは、大きく的が外れた解決策
即ち……
「彩飾牽美・不屈」
<キン>
発光……圧倒的熱量を放射する、この不屈で
一手、目眩し
「……今更なぁに?眩し」
意図組めよな、テメェ等!
「彩飾牽美・不憫」
<ドシュ>
これが、観察した結果!答え!
良く見たところ、野郎の再生は……顔が吹っ飛ばされたからか
上半身から再構築されている
だからこそ、下半身の修繕は後回し
よって!野郎の足はまだ、再生しきっていない!
だから狙った、足を
まだまだ再生に、時間がかかるようにねぇ!
<ドパシャア!>
吹っ飛んだわね、両足共!
私の輝きを直視したせいで、視力がイカれたのか
元からその再生能力で治るから、避ける気がなかったのか
はなはな知らん!もう知らん!
結果オーライよ!この攻撃で、動けなくさせたら
<バッ!>
「一時退散よ!こんな奴、勝ち目なんてないから!
柳犁辺り呼んできて、全部押し付けましょう!」
「はぁ、ああ!?
おい女神!いきなりなんだ、
その妙案は!
最高ではないか、よし
全てあの男に擦り付けるとしよう、なぁ!」
よーし金髪はOK
真っ先に逃げ出してる、そして
残るは後二人!
「アッぎゃああああああああ!!!!
目がぁ!目がぁ!」
おぃぃぃぃ!全身タイツやられとるー!!
逃げる以前にあの全身タイツ
私の光で目がやられてんじゃねぇか!
視力イカれてんじゃないの、ええ!
両手で目ぇ抑えて、ジタバタして……
まぁ、悪いの全部私なんですけどね!
てかもう一人は!?
もう一人いたわよね、確か!
そいつはどうなって……
「ピカーン、グラサン装備
いや〜、グラサン持ってて良かった〜」
この女ゲルダ
第2話において、柳犁とアークの戦闘が行われた際
サングラスを常備していなかった為に
目を焼ききっていた
なのでそれ以降、グラサンを常備して
いつでも常夏仕様にしていたのだが
それが今回、思わぬ形で活躍したのだった
いや、グラサン常備ってなに?
なにやったの、柳犁の奴
うん、そんなのどうでもいいから
ともかく一人は無事!このまま逃げられるわよね
あの全身タイツは……まぁ、不死とか言ってたし
置いてきても大丈夫、かな?
つーことで逃げます、逃げ回ります!
あの怪物から離れて、安全な場所まで!
「クンカクンカ、うん
この匂い、逃げ出したわねアイツ等
私の足を集中的に攻撃して、回復を遅らせれば
時間を稼げるとでも思ったんでしょうけど、残念
私の手足はここに、幾らでもあるのよ」
<ヴィオシャア!>
ラグナロクを包む黒い塊、滅却自在
それ等は全て、ラグナロクの思うがまま
手足同様の精度で動かせるのだ
更に、その威力は軽く人体をひねり潰す
よって、この逃走成功率は……無に等しい!
!?、やっぱり来たわね……黒いのが
なんかずっと伸縮しながらさぁ、硬そうなのが
いったいどーゆう物質なのかしらねぇ?
とても、地球産じゃないみたいだけど!
コイツを避けきれなきゃ、私は
死ぬ!
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
しゃがみ回避!!」
<スチャ>
<グルン>
よっしゃ!避けられた
しゃがんだら、この黒いのが私の上
通り過ぎてったぞ、こんちきしょう!
でもなんかグルンって来てるぅ
一周回ってこっち、もっかい攻撃しようとしてるぅ!
ぎゃあああああああああああ!!!
この速度じゃ次、回避が間に合わねぇ!
<ギュルン>
はい、死にました!
これ案外あっさりと死ねますわ、はい!
もう反応もへったくれもワピャー
<ドグォオン!!>
断末魔の一瞬
最後の最後だし、できるだけ大きい声で叫ぼうとしたら
そんな暇もなく、被弾
私ハァリナさんは、宙を舞った
ああ、首でも飛んだかな?
この景色は、私の首だけが最後に見る
今生の……別れ
「………………あれ、生きとる」
「良く生きてやがったなぁ、阿呆共」
<ヴァグォン>
「ああん?」
離れてない、私の首と胴体
さっきのは全身、宙に浮かんだだけで
私へのダメージは、一切ない!
「後は俺等に、お任せよ」
<ゴグァン!!>
それだけじゃない、さっきのは
私が吹っ飛ばされたのと同時に
野郎の黒いやつを、根こそぎ取っ払ってるじゃない
何者よ、コイツは!
自然災害などではない、意図して
その男は、終焉を蹴散らしたのだ
幾度世界を滅ぼすとも知れない、ラグナロクの能力
それを抑え込むということは即ち、同様に
その能力もまた、世界を滅ぼす能力を持つということ!
「誰……なの?」
分かってはいた、内心
この人は味方なのだと
それでもこの状況で、真っ先に出た言葉が
誰か……だったのだから
「誰か?俺が誰かだってぇ……」
知りたきゃ教えてやるよ、だが
今回は短く、一言でなぁ!
「俺、参上!」
決まった、ポーズも完璧!
前回は口上がくどくて、ダサいと言われたが
今回ばかりは流石にかっこいいダルォ?
そーゆー反応、されてんだろ?
などと思い、ちらりと背後のハァリナを覗くと
「……えぇ」
ドン引きされていた
ちっくしょうやるせねぇ!
いや、それもこれもラグナロク
にゃろうをぶっ飛ばしゃ、尊敬もされる
ここはそういう状況だ!
「は?なんだアイツ」
「痛たたた……」
その他、アークとゲルダも無事
先ほどの攻撃を、屈んで避けていたようだ
「……怪我人、流石に居るか
よーし嬢ちゃん」
割とダメージが深刻そうなアークを見て
ハァリナへ、避難誘導の指示を出した
もうここは、この俺に任せろと
「出来るだけ遠くに、野郎を連れて行く
なぁに心配すんな、俺は強ぇ
ハナっからラグナロク相手出来んのは、俺だけだ
嬢ちゃんは気にせず、生きようとだけ考えろ」
最も、こんな戦いに足を突っ込んでる時点で
相当命知らずなんだがな、コイツ等
良くもまぁこの少人数でコイツに喧嘩売れたよ、いや
柳犁も居るのか……
そうさな、アレを倒せるのは
俺か柳犁か、どちらかしか有り得ねぇものな
「はぁぁぁう、最悪
アンタに出張られちゃあ、このラグナロちゃん
本気出さざるおえないじゃないの」
ようやく、足も完全に治癒されたラグナロクは
未だ次の攻撃を出さず、立ち尽くしていた
いや、攻撃出来ないのだ
これから起こる、一瞬の為
互いに、動きが止まる
「俺もだ、めんどくせぇ
この戦いだけは、勝たなくっちゃなんねぇんってのが
神経使っちまうのが
ホンっと、腹立たしくて仕方がねぇ」
「どれだけ賭けたかこの歳月、ええ!
アンタなんぞに邪魔させないわよ
イルティラァァァァァァァァァァァァ!!!!」
次回へ続く
次回 桁違いの戦況




