第38話 皇
コイツ、人間じゃない!
私の……魔神の魔力を、生身で浴びて
傷一つ付かないなどと、ありえない!
「もう終わりか
攻撃の手、緩めたな
だったらこっちのターンだ」
「ぬかせ!たかが耐久力に自信があるからと言って
私に勝てる道理など、ないのだ!
貴様に殺せるか、この私を
魔神の王たる、この私をーー!!」
「うるせ」
<斬!>
柳犁とヴァルザードの戦いが決着する、少し前
別の場所にて、オルテンシアもまた
戦いに、決着をつけていた
「なんだ、あっさりしてんな
こうも簡単に、お前さん
首が取れたぜ」
オルテンシアは、左手で
切り取った魔神の首を、鷲掴みにした
その首は未だ、息があり
オルテンシアへの恐怖心で、表情が強ばるばかり
「馬鹿な!馬鹿な!馬鹿な!馬鹿な!馬鹿なー!
なぜだ、なぜ!?この男はこれほどまでに強い!
ただの人間が、なぜ摂理を超えた強さを持っているのだー!!」
「……死に際でも騒がしい野郎だな
楽しそうじゃねぇか、アンタの葬式」
「えええええええええい!!!
このままでは済まさんぞ!
呪ってやる、一族郎諸共呪ってやるー!
「………………」
<クシャ>
うるさかったのだ
最後の言葉くらい、ゆっくり聞いてやろう
などと思ったオルテンシアだったが
あまりにもうるさかったので、その首を
クシャクシャに潰して黙らせた
「さぁて、負けはしてねぇと思うが
とっとと愛しき息子達の元へと、戻りましょうかね」
相手にも、ならなかった?
魔神風情じゃ、全然面白くない
何年かけたと思ってんの?
千年よ、千年!
いや、割とそうでもないか……でも
人間の寿命からしたら、大分あれよ?
なのに人間程度に負けるとか
ホンットありえないんですけどー
この世界じゃあ、これが限界って所ね
あーもう辞め辞め!あったま来た
さっきのガキ諸共、全員
直々にぶっ飛ばしてあげちゃうんだから!
ん?でも柳犁だけは、あれよね
関係なし!ぶっ飛ばすだけぶっ飛ばしてやる!
<グリュン!>
「!?なんっだ、こりゃ!」
「負けた!完敗だよ柳犁!」
「うるせーな、とっとと逝け」
俺は、ウル・キースの首を切り落とした
そしてヴァルは、もう一匹の腹を貫いたんだ
この勝負、もうとっくに決着ついたってーのに
コイツ等魔神は……首だけになってもお喋りしやがる
うっとおしい、至極うっとおしいよコイツ等
「やだな……最後くらい優しくしてよ
君と僕の仲でしょーが」
「悪いが先急いでるんだ
看取ってやっから、もう息の根止めろ」
「スッキリしてるなー、柳犁
死人に口無し、だっけか
もう死んでんだから、余計な口出しするなって?
硬いこと言わないでよー
もう、俺の素直な気持ち表せるのは
言葉しかないんだから」
あーはいはい、遺言?
聞いてやっからさっさと、話しやがれ
「遺言なんてものじゃないけどね、柳犁
一つ、頼みを聞いてもらえないかなぁ」
………………頼みだと
「なんだそりゃ、一体全体おめーが
俺になにを頼めるってんだ」
「そーだね、僕は君を殺そうとした
命の恩人である君を、躊躇なくね
でもさ、これだけは聞いてよ
僕の仇、のことをさぁ」
仇か、そんなもの
とうに打ったさ
「そこの、メーヴィルじゃない
僕を殺したのは、そいつじゃ無い」
コイツじゃ、無い?
いいや確かだ
あの空の上で、生きていたコイツを殺したのは
姿形は人間のものの、このメーヴィル
匂い気配がまるで一緒なんだ
そのコイツが、仇じゃねぇっつーのか?
「なにが言いてぇ?」
「……ありがとう、柳犁
僕は、君に殺されて嬉しいよ
あとは、頼んだよ
さっきのお嬢さんを、助けて……ね」
「何が言いてぇっつってんだ!
中途半端になんだ?
はっきりモノを喋ってから死にやがれ!」
触れた、だけだった
転がってる顔を殴ろうとして、拳で
それだけで、野郎は
砂みてぇに消えて、無くなった
やけに、呆気ねぇじゃねぇか
あれだけ、勿体ぶってよぉ
無駄に生へ、しがみ付いて
こんなになってもよぉ
割り切りもできねぇ
「…………これで終いか
こっちの、死体の方も
粉々に消え去りやがった」
「ああ、そいじゃ残すは
親玉だけか」
まぁ、オルテンシアさんが負けるわきゃないが
一応は様子見に行ったほうが、いいか
「つーか柳犁よぉ
ミリエル、どこに飛ばした?
俺ぁそっちが気になって仕方ねぇんだが」
「安心しろ、保証すっから」
ミリエルを、助けろ?
ウル・キースの野郎は、最後に
なんでんんなことを言って消えた?
野郎は、何を危惧していた
分かんねぇとこばっかだ……
頭悩ませんのは、好きじゃねぇんによ
………………とりあえず、ミリエルのとこ行くか
「そんなに気になんなら、行くか?
ミリエル飛ばしたとこ」
「おう、あんがと」
回り道にもなるが
俺の能力なら、関係ないな
だって瞬間で移動出来るもん
……ん?あ
太郎君のこと、忘れてた
<<ドゴォォ!!>>
!?なんだそりゃ!
いきなり俺達の前を、何かが通り過ぎた
それもとんでもねぇスピードで!
向こう側の、瓦礫に突っ込んで行きやがった!
「あっちの方向……
あれが飛んできたのは
親父が戦っていた場所!」
ツーことはぶっ飛んで来たのは
オルテンシアが相手にしていた、魔神
だがそれにしちゃあ
魔神の気が感じ取れねぇ!
それどころか、この気は……
ぶっ飛んで来たのは、まさか
「いったぁ……なんだよ、いきなり」
「オルテンシアさん!」
「親父!」
やっぱりか!
ぶっ飛んで来たのは、オルテンシアさんだった!
そしてつまり
それだけのことを仕出かせる相手が、そこに居る!
「あれぇ?思ったより軽く吹き飛んだじゃない
スペックだけはいいじゃないの、スペックだけは
それを見事全員、無駄にしくさりましたとさ」
あいつが、オルテンシアさんを吹っ飛ばした相手!
…………誰!!
「さっきの魔神じゃねぇな
おい、テメェ誰だ」
ヴァル、そう冷静じゃねぇよな
自分の親父がぶっ飛ばされたんだ
質問に、殺意が篭りまくってやがる
でもなぁ……
この対面で、素直に名前とか
教えてくれるモノなのかねぇ?
「えー、私ィー?
皇の、すーちゃんでーす」<キラッ☆>
うわテンションたっかあの女
次回へ続く
次回 終焉の綻び




