第36話 最悪の三人 その3
「うん、だからこっちはそう
気にしないで頂戴、すーちゃん
貴方は貴女で思いっ切り、楽しんでらっしゃいね
今回のは中々よ、私の秘蔵っ子
貴女の演出有りきだったけどねー」
「ラグナロク殿、なにを?」
「あん?まー、気にしなーいで
そんなことより、アルティレルさぁん
アレ、片付けちゃってね」
「ええ、配下の者にやらせます
それともう一つ、単独で魔神達が動き出しましたが
これは……どうゆうことでしょうか」
「そっちも気にしないでー、大丈夫
下手すりゃ相手さんの主力
潰してきてくれちゃうから」
頼んだわよー、その身体でね
「で?どっちがどっちだ」
「あん?どっちもどっちだ」
「いやだから、どっちがどっち相手すんだって」
「どっちでも?
最終的に2匹とも殺れりゃあ、どうでもいい」
睨み合い、硬直状態
2匹の魔神と、柳犁とヴァルザード
この両者睨み合う、緊迫した状態で
どちらの獲物を狩るか、品定めするヴァルザード
だが柳犁は、品定めなど介さない
どちらとも、最初から自分の獲物だと
そう、眼光を向け止まない
「…………そうか、じゃあ好き勝手」
「すりゃあいい」
結論、2匹ともぶっ殺す!
<バッ!>
先手!前へ出たのは、柳犁
先導し、魔神2体の元へと突っ込んでいく!
「おっほぉ、来た来た」
「気は抜くなよ」
この際柳犁、瞬間移動は使わない!
あえて実態のまま、その距離を詰める
それは何より、攻撃を当てやすくするため!
その為にこの始撃!柳犁の選んだ技は
「飛べ、『回亡』」
<ヴァシュン!>
投げた!己の刀、灼羅桜邏を
その刀身は常に、時空を裂き続けている
それが円弧状、超速で回転させながら
魔神共の居場所へと、突き進んで行く!
「これは……キース、避けろ!
能力が込められている
空間ごと切り裂かれるぞ!
あの因子があるからといって、我々の物には制限がある
この手の攻撃は余り受けるな!」
「分かってますよ、すっとろい!
こんな攻撃、投擲の瞬間を見せてしまっては
回避することなど容易い!」
そう、どう考えても自力で刀投げるよか
瞬間移動の速度を乗せた斬撃の方が速い
だがそれじゃあちと、正確さに欠ける
俺の瞬間移動は、マジで一瞬の移動だが
一度指定した出る場所は、出てくるまで変えられねぇ
つまり、出て来る場所さえ掴まれちまったら
俺は何も出来ず、そこで殺られる
そもそもの射程が、剣先の長さしかない俺だ
相手との距離感は、なによりも重要
だからこそ投げたのさ、あの刀を
あの刀ごと、射程を本投げて伸ばした!
<ギュルルルルルルルルル!!!!>
もっとも、こんな目に見える攻撃じゃ
避けられるのは想定内だがね
だからこうする
<パチン>
「!?」
刀が、消えた
否、刀そのものが
柳犁の作り出す、異空間へと飛んだのだ
その異空間にて、未だ刀の勢いは止まず
そのまま、魔神共の後方へと
姿を表すのだ!
「解空!回亡改め、回亡曇天」
<ギュルルルルルルア!!!>
飛び回る刀!荒ぶる斬撃!
刀は、魔神共の周囲で異空を介し
何度も軌道を変え、襲いかかる!
その威力は衰えず、速度も落とさず
圧倒的な斬撃を、延々に繰り返す!
そう、この瞬間魔神共は
その射程内に、囚われたのだった
「クソ、まるで身動きが取れない!
四方八方から襲いかかる、この刀のせいで
避けることも、撃ち落とすことも許されない!」
「すっごいねこれ
まだ僕達、皮膚だけのかすり傷で済んでるけど
普通だったら、空間ごと体持ってがれるんだからなぁ!
流石柳犁!僕の、相棒」
足止め、完了だな……
もう連中が、あそこから出ることは叶わない
だったらヴァルちゃんよぉ、その魔力
あの一点にだけ、全力でぶっ放してくださいな
考え抜かれたもの、とも言えないが
この二人、柳犁とヴァルザードが咄嗟に繰り出した
突撃での連携
それは至極単純
柳犁が確実に足止めをして
ヴァルザードが確実に、獲物を仕留める
全てをヴァルザードの一撃にかけた、脳筋必殺!
「いけ!ヴァル!!」
「うっしゃあ、ほいきた
穿て、架屡魔!」
<<<シュキィィィィィン!!!>>>
遂に名を得た、ヴァルザードの攻撃!
そう、柳犁と分かれていたこの数日間で
ヴァルザードもまた、更なるパワーを得た
別に最初からそのつもりだったからね!
思いつきで付けた訳じゃ無いんだからね!
しかし、この一撃
身動きの取れない魔神共にとっては
最悪の光景、であっただろう
当たれば確実に、その体が滅びる
それを前にして、このウル・キース
笑みを止めない!
「庵架屡魔ァァァァァァァ!!!!!」
同時に、叫ぶ!
全てを跳ね除ける咆哮轟かせ
ウル・キースは、叫ぶ!
「チッ!うるせぇな……
だがそんな叫び声上げた所で
俺の架屡魔は止まりゃしねぇ!」
「!?、いやまて
あの叫び……なにかが、来る」
「あん?」
なにかが、来る
そんな手応えだ……
良くは分かんねぇが、これは
得体のしれないなにかを、俺の本能が
俺達の脅威になるって、言ってんだよ!
本能の警告
柳犁の本能が、柳犁の脳より先に
ウル・キースの危険性をキャッチしたのだ
そしてその、得体の知れない脅威に対して
柳犁は、いち早く対処すべきだと判断される
<がキッ!バチィ!>
判断通りだった
徐々にではあるが、柳犁の回亡曇天
その軌道がズレ始める
間隔を長く、無茶苦茶に飛び回り
最後には、射程範囲を崩壊させた
<バキン!>
ズレた!
灼羅桜邏の軌道が、修正出来ないまでに狂った
なるほど
あの叫びの共振で、ズレを発生させたのか
刀の軌道、そこにズレを
回亡曇天は、決められた起動上に
また別の場所へ移動させる、ワープゲートを出現させ
それを延々に繰り返す技
一度解き放ったら最後、目で追える速度なんてのは
有に超えちまうような技だ
飛び回ってる最中に改めて、別のゲートを出現されんのは
はっきり言って無理に近い、だから
ちょっとでもズレりゃあよぉ
どこに飛んでぐか、俺にも分かったもんじゃねぇぜ!
<バギルゥ!>
見えた!飛び出す瞬間だけだがな
「ヒヤッとはしたぜぇ、なぁに
飛び出す場所は予測出来なくとも
飛び出した場所は、把握出来るんだよ」
まぁ、それでも予測で動くよか
チョッぴし反応が遅れるがな
それでも良かった……
なんせ、飛んでくる場所は!
真っ直ぐ、俺の目の前なんだからよぉ
「ならば俺が受け止める!
ヴァル!テメェは気にせず打ち込めや!」
「ああ、そのつもりだがな!」
ヴァルの刀身から放たれ続ける魔力が
もう、少しで……魔神共へ届く
ナイスだぜ、この一瞬
全てが瞬きにも劣る時間で起きた、この刹那に
魔神共を閉じ込めきれてなぁ!
<<<ヴァグオグオン!!!>>>
当たっ、た
<ジャギィ!>
…………こっちもこっちで、受けきれたか
よかった、ぜ
柳犁、血しぶきを吹いて
次回へ続く!
次回 最悪の三人 その4




