第28話 ずっと消えないお友達 その2
「フガルゥゥウ!!」
「がっ!……ドペ!?」
「……………いや、だから……何アレ」
「クマさん、がーがー」
……無謀にも、前回
私はかなり、物理戦闘に不向きであるにも関わらず
物理で……殴り合いをしていたのですが
当然押され、どうにか切り返しが出来ないかと
機会を伺っていたところ……突然
謎の生物が現れ、相手と応戦してくれているのです
「って、クマさんとは……
メルヴィルちゃん、アレが何だか知ってるんですか?」
「アレじゃない
私のお友達……クマさん
私の能力で作り出した、魔獣」
よもやこの子
生命を造り出す程の能力を、所持していたのですか……
これは中々に驚きです……しかし
これ程の能力、頼りになりますよ
現に今
クマさんは、相手をかなり押しているじゃないですか
その図太い腕から繰り出される、パンチで
相手の体中を、隅々を破壊して巡っている!
「ちょ、まちぃや……乱入は無しじゃろ!
一対一!それが喧嘩の基本やろがい!」
あいにくそのクマは、まさしく野獣!
野生に生きる、その彼に…
軟弱な天使の思考が、通用する訳ないでしょう
ほらほら、どうせならそのまま
何もできずに、一方的にやられるがいい!
「フヴァルぅ!」
「ギッ……あんまし調子に……」
一撃!
顔面へと、トドメの一撃を打ち込もうとした……その瞬間!
その相手は、黙ってやられなかった!
「乗るなぁ!!」
<ボギィ!>
「グガァ!?」
吹っ飛ばされた……クマの腕が
顔面へと放たれた、右の拳を
そのまま殴り返したのだ!
その衝撃は絶大!
よって、クマさんの右腕を内部から崩壊させた!
「!?アイツ……よくも私のクマさんを」
「……単身ではやられてしまいましたか
よろしい、では次こそ
私も前に出て、やり返しましょうか」
右腕を失ったとはいえ、まだクマさんは動ける
ならばその、クマさんを相手している間に
私も一手、打ちましょうか
「遍柱葬……解除
振り枝垂れ溶炎よ、暴雨の如く」
遍柱葬の、操作解除とは……
その形状の維持の解除
つまり、円柱上に形成された
その炎を、垂れ流す
「『炎災郷填塊』」
<<ヒュルルルルルルゴオオ>>
先に展開しておいた、岩盤のドームで
なんとか被害範囲を抑えられますが
それでも、この中に居る者は
相当な暑さに耐えなければならない
下手をすれば……熱さどころでなく
その身諸共、焼き尽くされかねない
なので正直、私はそこまでここでそれを使いたくなかった
この場に……メルヴィルちゃんが居る状況で
だからこれは、この炎塊は
ただの、目眩しとして使わせていただきます!
「ヴァグルぅ!」
「痛ッ!反撃してきおったな!
だったらもう一本腕もいで……って!?
なんじゃあ、ありゃあ!!!」
気づきましたか
例の彼が、クマさんとの応戦中に
上を向きましたか!
しかし残念
本命は、こちらです!
「『氷獄・固窮吐透』」
<<バーキバキバキバキバキバッキン!!!!>>
瞬間!
辺り一面を覆った爆炎が
瞬時に凍りついた!
それは、岩盤のドーム内
ほぼ全域を覆う、強大な氷の牢獄!
捉えた者を決して逃しはしない
極寒の監獄と変えた
「寒!
あの熱さの次に、この寒さですか……
体感温度おかしくなりそうですねぇ」
って、メルヴィルちゃん!?
そうだ、まずい……
攻撃範囲にはなんとか、巻き込まずに済みましたが
この温度までは……どうにもできなかった
加えて彼女は幼女!
この気温変化に耐えかねて、体調を壊して……
「寒い……」
ってことはありませんでしたが
寒がりはしている
身震いしているので……よっぽど寒いのでしょうが
それじゃあこれから、私のお手製真心シチューでも
作ってアーンと、食べさせてあげましょうか
体あったまりますよ〜
じゃなくて
相手の全身、氷漬けにしたってだけじゃ
ただ、相手の動きを封じただけに過ぎませんからねぇ
ここで止めの一撃……いきますか
「メルヴィルちゃん!
少々、荒っぽいことをやりますよ
僕に飛び付いてください!
できるだけ強く、ギュウッと体を……」
「これで良いですか?」
<ボギィ>
「うベェ」
掴まってくれた……
割と僕、メルヴィルに嫌われてると思って
半分冗談で、僕に掴まってなんて言ったけど
素直に抱きついてくれただなんて……
でもねメルヴィルちゃん、痛い
今貴方、飛び付いた時
ボキッて、背骨ボキッていきましたよ
絶対コレ折れた……
下半身が機能してませんよ、感覚なくなりましたよ
ああ、でもコレ
抱きついたのがメルヴィルちゃんなだけあって
相乗効果で、むしろプラス……
「さっさとやる!」
抱きついた状態での叱咤激励!?
何それ興奮す……じゃないの
もう、異常なまでにやる気出てきましたよ
なので、ここで気張ってくださいよ私!
このまま全神経を、下部に集中!
地面を蹴り上げる!
そしてそのまま、数十メートルの跳躍を
お見せ致しましょう
「それジャーンプ」
おっとメルヴィルちゃん、いい掛け声
私の跳躍と同時に、まさしく私を馬のように
ジャンプの為の道具としか思っていない、その発言
好こです
宣言通り、自らの跳躍力のみで
氷で覆われた空間を脱出!
そして、氷山と化した岩壁の
その頂へと、たどり着いた
「シュトッ!脱出成功ですよ〜
メルヴィルちゃん、怖くはありませんでしたか?」
「平気」
おおっと、たくましい
あれだけの速度で、この距離まで登って来たのですから
相当なスピードだったはず
あのジェットコースターの、お尻がフワッとなる
あの感覚を必要以上に感じるような……
それで私も少し、漏らしそうになりましたが
それをメルヴィルちゃん、平気と
なんて強い子なんでし……
「……なんか臭い」
……どうやら、小さい方はこらえましたが
大きいほうが、暴発しましたか
まあいい
これだけ仕上げて、とっととパンツ取り替えましょう
私たちは脱出しましたが
彼は、未だ私の作った岩盤のドーム内
さらに中身は、炎と氷でごった返す……カオスな状態
それだけでも到底、生きているとは思えませんが
用心深くやる事に、制限はない
よって
仕上げにこのドームを崩壊
中にいる彼毎、生き埋めにしてあげましょう
「完全解除、制御は効きません
その効力を保ったまま、崩れ落ちなさい」
<<ビキィキィ!!!>>
岩盤にヒビが入り、次々と崩れ去っていく
それはまぁ、全体からしてはカケラのような物ですが
容易に人一人、天使一羽を捻り潰す大きさ
氷で動きを制限された彼には、避けようがありませんね
「っと私達も、このまま岩盤の上に立っていては
巻き添いを食いますね……メルヴィルちゃん
次は下へ飛び降ります、お気をつけて」
「落とさないでね」
当然!落とすわけないでしょう
そこにだけは、最大限の注意を払いますよ
よし、それでは声を合わせて
「「それジャーンプ」」
決まった、息ぴったり
この一瞬!メルヴィルちゃんと私の精神は一致した!
ああなんと素晴らしい……この感覚
今私は、何よりも幸せです
<ヒュン>
…………これは
そう、楽しむ時間も与えてくれないのですか
滑空を初めて直ぐ、この音は……
私たちに向かって何か、飛び道具が放たれた音
それが空を切り、確実に私達へと向かって来ている!
やりますね天使共……
少したりとも、隙は逃さないつもりですか
メルヴィルちゃんを抱っこして、両手の塞がった私では
この狙撃をガードする手が無い
それに空中では、体の自由も効きませんからねぇ
狙うならば最適、最も仕留められる瞬間!
それだけの隙を狙う為……伏兵を伏せていたのか
「リチャード!」
「ええ、分かっていますよ
ですが安心してください……
貴女にだけは、決して
危害など加えさせません!」
ですが甘かったですね天使!
この私に、空中で飛び回る術がないとでも?
あるんですよ、それが!
やった事ありませんけど
その方法はぁー?
私の足から爆炎を噴出!
その推進力を持って宙を舞う!名付けて……
「爆憤慨」
<<オオゴゴゴゴオオオゴゴオゴゴゴゴゴゴオ>>
出来ましたよ、ジェット噴射
いや、思いつきでやってみるものですね
案外どうにかなりました
「うわわわわわわ、飛んでる」
「飛んでますねぇ、メルヴィルちゃん
コレは……さっきよりスリリングですけど、構いませんね!」
感激している場合じゃあない
コレをしたのは、アレを
飛来物から逃げる為に
<ヒィン!>
飛来物の姿も、捉えられました
あれは矢!弓矢が放たれている
それも少量じゃないですね
複数、四方から追って来ている
しかしいくら数を打とうと、避けてしまえば造作もない!
<ヴァン!>
!?、曲がった……
私が回避しようと弾道からズレた、あの矢が
回避先の私の方向を、追って来ただと!!
<フィン>
<ヴァル>
<ヴォン>
埒が開きませんね!
いくら避けようとも、こちらへ向かうことを辞めない
魔術的な効力でしょうか……
あの矢は、空気中で決してその力を失っていない
それはおそらく……人体に到達するまで続くでしょう
避けきることは不可能
撃ち落とすにも……今の私は、ジェット噴射で手一杯
これ以上に、他の能力の緻密なコントロールは出来ない
第一、こちらにはメルヴィルちゃんが居る
彼女を傷つけず、この攻撃を受けて立つには
……ああするしかない!
通常、素手の人間が光物を相手にした場合
先ず真っ向から立ち向かう事には、躊躇するはず
それは、人体の強度など
矢に貫かれれば、簡単に息絶えてしまうからだ
だがこの男は逆に、真っ向から突っ込んで見せた!
「絶えてくださいよ!メルヴィル!」
「ええ!」
<<ズシャ>>
ガァ!先ず一本、突き刺さりましたか……
しかしなんとか、私の体表だけで絶えられています
貫通して、メルヴィルちゃんへと到達することはあり得ない!
どうせ切り傷など、私の回復術で軽く治る
だがメルヴィルちゃんには、傷一つ付けやしない!
この程度の数、全て受け切ってみせましょう
<<ドガァ!>>
地面へと激突!
全ての矢を受け切りながら、フルスピードで
地面へと到達!その間ノンストップ
最大限、メルヴィルへのダメージを危惧しながら
この男は、攻撃を凌ぎ切った!
「フフフフフフフフフ……
おかしいくらいに効きましたね
ですがメルヴィルちゃん、無事ですね」
「うぅん……
すっごい揺れたけど、なんとか」
良かった……
メルヴィルちゃんに、一切の外傷はない
守り切りましたよ、私は!
「では、早くここを移動しましょう
この場所は割れてしまった……
次にいつ、あの矢が放たれるか分からない」
傷の回復もしたいところですが……
それより、安全の確保が第一
ともかく、メルヴィルちゃんを安全な場所へ……移して……から
異変は、リチャードが立ち上がろうとした
その瞬間に起きた
少々疲れましたかね……
視界が……ぼやけて来て
あれ?なにか、頭も働かなくなって
「リ……チャード」
おや……メルヴィルちゃんにも心配されてしまいました
そんなことより、早く
この場を立ち去らなければ
「やったー、うんまくいったわ」
!?この声は……先ほどの
「いんやぁ……焦ったわ
なんで頭角アンタ、ワシら裏切っとんの?
駄目ちゃんよ、たかが人間が
天の言うこと聞かんには」
「貴……様あああああああああ!!!!」
そこにはメルヴィルと、先程の天使
フォン・レッジェイが……
メルヴィルの胸を、足で突き刺していた
メルヴィル……ちゃん
「おうおうアンさん、まだ意識あんのかい
たぁーく、ガマ・ルマの野郎
確実に人殺せる、毒ぅ漏れ言うたろうに」
ど……く……
そうか、この目眩はそれか
そんなもので私は……メルヴィルちゃんを
「ま、いーな
これで二人ともお陀仏やさかい
一人は胸貫かれて瀕死
もう一人は、毒で死にかけ
こっから負けるって、方が無理な状況やなー!」
リチャード、敗北寸前!
次回へ続く
次回 ずっと消えないこの思い




