第18話 虚無への誘い
前回のあらすじ
イル:やって来ました今日このごろ!ようやく僕の…活躍回!
ミシ:言うほど活躍しませんけどね(ネタバレ)
リゲ:言ったよこの子。包み隠さず言ったよ
イル:相変わらず…厳しいなぁミシェルちゃん ; (
リゲ:そいやアンタ等、いつから連んでるのん
イル:そういやいつからだったかな?10年前、お前等と別れてそれっから…
ミシ:今年で3年目じゃないですか
イル:ああ、そうそうそんくらい
ミシ:……馬鹿
イル:えっちょ!?ミシェルちゃん!なんでそっぽ向くの!!
リゲ:おいイルティラ…お前、本気で忘れてんのか?多分さっきの3年て嘘だぞ
イル:え!?ウソン…
ミシ:ホント馬鹿
リゲ:これでよくやってこれたな…このカップル
イル:ええええええええええええええええええええええ!?!?!!!!!?????
ミシ:ま、本当なんだけどね。
リゲ:はい…じゃあ第18話、始まりまーす
「どりゃあ!!ちょこまかと動き回るんじゃねぇ!!」
「うおい…目が回るだぁ…」
「だったら止まりやがれぇ!!」
ちくしょう!二人と別れて、俺一人でコイツの相手を引き受けたはいいが…話し方と相反して動きがすばしっこい!
俺の拳ちゃんがカスリもしねぇじゃねぇか!
「チッ!まいったな、この速度…目で追うだけでおっくうだ」
だったらこっちから追っかけるのは辞めだ!
待つ…野郎が攻撃してくるまで、とことん待つ!
「おおおお…動きが止まったなぁ…諦めたか」
「諦めちゃいねぇよ。どーせ、動き回ってるオメェを仕留めようとして俺が疲れんのを待ってんだろ?」
「うおお…正解だぁ」
「当たりだって言っちまうのかよ!」
コイツも、さっきの連中も…垂れ流してる魔力はまんま、魔神のものだ。
特に今相手しているコイツ。コイツの魔力量は間違いねぇ…
ふざけた奴だが、最上位魔神!架屡魔五英傑の一員だ!!
割と本気で、俺もふざけちゃいられねぇわな…ってレベルの相手よ!
「でも残念だぁ。このピスカ様が手を抜いてると分かっているならぁ…そのうちに仕留めるべきだったなぁ…もう加減はねぇぞ」
「ふん!自分で自分のことに様付けたぁ、大した自身だなぁ!そういうのは、見合う実力があるやつだけが使う言葉だぜ?」
「それだけの実力…みたいかぁ?」
…やっと殺意を感じ取れたな。
これでようやく、相手も殺る気みてぇだ!
「オメェの言ったこと…後悔すんなよぉ」
イルティラの周りをちょこまかと逃げ回っていた魔神『ピスカ』
その目にも止まらぬ速度を保ったまま、今度はイルティラへと…拳撃を放つ!
「『業拳・摩群櫓撃ゥ』!!!」
<<バババ!!!>>
「ぐあ!?」
瞬間、ピスカの摩群櫓撃が炸裂!
イルティラの全身に、強烈な連撃!
痛え!やられた…体中十三ヶ所!一瞬で拳撃を打ち込まれた…
しかも野郎の姿さえ捉えらえられなかった!なんちゅうスピードだよ…
「うおあお…どうだぁ…コレがオレの『業拳』だぁ…業強き者に与えられる苦痛の拳…オメェにゃあ決して逃れられんのだぁ…」
「…へっ!なんてこたぁねぇ、ちょっとばかし痛えだけじゃねぇか!そのゴキブリみてぇなすばしっこさだけは褒めてやるけどね!」
「うおお…そりゃそうだぁ…この技の本領は次なんだからなぁ…」
…次?まだ続きが有るってのか!
最もこの速度じゃあ、次なにが来ようと避けれねぇがな!!
やっべ、どうしよ
「本領…いっとくかぁ?」
「来いよ!確認なんざいらねぇ、いつでも打ち込んでこい!」
「そうかぁ…ならば。業拳…」
来る!
「滅苛至奇ぃ!!!」
完璧に死角だ…どこにいるのかさっぱりわからん。
初動も捉えらんねぇし、速度も異常!普通に考えや、避けられたもんじゃねぇだろ…
たがな、その気になれば俺の能力はなぁ!一切の攻撃を受け付けないんだぜぇ!!
「捉えただぁ…」
<シュン!!>
「!?…なんだぁ…?」
「ハッ!」
俺に攻撃したな…したよなぁ?だったら今!間違いなく驚いてる!なんせオメェにゃあ…
「なっ、なんだいまのはぁ!?…攻撃が…すり抜けたぞ…」
攻撃が当たらずに、俺の体をすり抜けたように感じた筈だぁ…
コレこそ、俺の能力!
「俺の能力は『無』。俺の体は、いわば全身これ無となる…如何なる概念をも無に返す、無人間!」
「無だと…だからかぁ…だからこうげきがすり抜けたのかぁ…そこに実体が無いから」
「それだけじゃねぇぜ!俺の体へダメージを与えることが無理になるのと同時に、俺はありとあらゆる物を無効にできる。例えば…」
「うおお!?…なんだか急に肌寒くなっただぁ…」
こっからが俺の反撃タイムだぜ!
マイ能力パワー…ちょっとだけ開放!
「『絶対無度』」
<<バキバキバキバキ!!!!>>
「なぁ!?…氷漬けにされちまっただぁ…」
温度を徹底的に、無いに等しく!するとどうなる…
空気中の水分は全て凝結し、俺の指示した範囲は完全に凍りつく!ってわけだ。
今回は俺の足元から、床を壁を伝わらせてこの通路一面!氷漬けよぉ
即ち、射程距離内にいればどんだけ素早くても関係ねぇ…確実に捕らえられんのよ!地に足がついてる限りなぁ!
「見つけた…すぐ真後ろにいたとはぁ、見逃してたぜ。どうよ?足元凍らされて、一切の身動きが取れねぇ感想は!!」
「今それ聞くかぁ?…こっちは絶望的な状況なんだぞ」
「あいにく、こっちはかーなーり余裕なんでね。それくらい出来る猶予があんのよ」
「こーいうのもあれだガァ…その顔…性根の良いやつのすることじゃあねぇな」
にヒヒヒヒ…笑顔にもなっちゃうわなぁ、ねぇ。
テメェは身動き取れず、こっちはなぶりたい放題…圧倒的優位!
さ〜て、どうやって痛ぶってやりましょうか?
「う〜ん、悩むなぁ。目の前に、腕をのばせば届く距離にいっくらでも好きにできるやつがいる…逆にこう、どうにでもできる状態って何してやろうかと…考えちまうよなぁ」
「ペッ!」<ピチッ>
あれ…何これ…この頰を伝う液体は…唾?それどころか痰じゃねぇか!!
「テメェ!足以外は自由だからって痰吐き掛けるやつがあるかッ!」
「うおおあ…舐めすぎだぁ、おめぇ…敵の前でそんな態度とろうもんなら…反撃されてしかるべきだぁ」
「舐めてんのはテメェだ!この状況分かってる?ドゥーユーアンダスタンづ!?どう見たって俺が有利なの!俺が偉そうにすべき場面なの!」
「んなくだらねぇこと気にしてんのかぁ…ちっちぇえ男だなぁ」
「ウルセェ!だったら物理的に教え込んでやるよ、どっちが強えのかをな!…歯ぁ食いしばりなぁ!!」
一方的に殴りつけてやる!数発顔面にクリーンヒットさせりゃあ、是が非にも身に沁みるだろ…
圧倒的強者は…この俺だってことをなぁ!!
「ドッラッア!!!」
「甘ぇなぁ…とことん」
フッ…だぁ!?空ぶった。直ぐ目の前の野郎をぶん殴った筈なのに!
「2度目は外さねぇぞぉ…滅苛至奇ぃ!」
くそ!背後に回られた!なんで!?…だがこれじゃ避けられねぇ!だったらもう一度…
「俺への攻撃を無力にしろおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
<ヴァフン!>
すり抜けた!残念だったな、テメェの攻撃は俺に当たらねぇ!
「追撃…拿功ッ!」
<ピッ!>
!?…一旦放った手突の、手を広げた!?
何をやっても無駄だというに!今更何を…キッ!
「ぐぁはっ!!ヘッ?なっ!」
食らった!野郎の攻撃を今…俺は食らったぞ!
何…だと!?俺へのダメージは無効に、それどころか!俺の存在を無にして、当たる対象すらなくした筈…
なのに俺は、ダメージを受けてやがる!しかも、直接内臓を揺らされちまってるような…
「やはり…か…。貴様の能力も…」
「たくぉらぁ!!!」
痛ぇじゃねぇか!
いやすっごい痛い!ものすっごい痛いけど!さっきのが比じゃねぇくらいにな!
どうやって俺に攻撃を当てたかは知らねぇ!普通に考えて無理に決まってらぁ!だが俺に攻撃を当てた…それだけで許せねぇ!!
狙いは背後…否!あのスピードじゃあ撒かれる!
もう一度全面…首まで氷漬けにしてやらぁ!!
「絶対無度ッ!」
<<バキッ、バキバキバキバキッ!!!>>
最早大気をも凍らせた…射程はメキメキと伸びて行くぞ!
また一瞬で目の前から消えちまったが…あの野郎
逃れられねぇ…この攻撃!逃れることはできねぇ!!…多分
「……もういいや。射程距離増大!この船内に生息するすべての生命体よ!喜べ、氷河期の到来だ…」
…今までさんざん余裕ぶっこいといて、ここまで追い込まれるたぁなぁ!勝利後の余韻に浸るためにも…あんまし本気は出したくねぇが。こんくらいならしていいか?
いや今更、なにを躊躇う必要がある!
いっそのこと、次の一発で…いやいやいや、それじゃあまりにも味気ねぇ!
苦戦して勝つ!それが王道勝利の鉄則…ま、よーするにナメプなんだけどね。
………にしても、んな余裕もねぇか。あの野郎…どういう要件か、この俺のガードを破りやがった…
概念すら無くす、最強のガードだったんによぉ…
アレを破る手段?考えつかねぇよ、んなもん
「どうにしろ、テメエ。このクソ寒ぃ空間でよぉ、いつまで息を潜めてられるかな?」
気配はする…四方八方、張り巡らせた氷のセンサーから感じる!
psついでに、触れれば即凝結の結界ともなっているからなぁ!
これで…捕らえられねぇなんてこと、ねぇよな?
「…そこだ!」
捉えた!ついに触れやがったな、馬鹿め!
「これでテメェの全身氷漬けだな〜!いっそのこと、首までとは言わねぇ…二度と痰も吐けんように、顔面も包み込んでやる!」
<<バキバキバキバキ>>
捕った!この感覚…右っ側の通路の先か!
「ビンゴ!でっかい氷塊になってやらぁ…手も足も出ないとは、まさしくこのことよ!」
この御にここまでやる気を出させるとは…大したやつだよ、まったく。
なんて褒めてやるべきなんだろうね〜、普通なら!
そんなこと俺はしねぇ!
一切の本気を出さず相手を圧倒!そして精魂尽くした野郎を横目に、絶対の勝利を満喫する!
それが俺の美学!
「とまぁ。最初っから飛ばし過ぎると、圧倒的過ぎて面白みが無いからねぇ。そこそこ均等の実力にみせかけといて、最終的に俺TUEEEってガン煽りよ…ん?今この時点で、なんでここでそんなこと語るかって?勝ちを確信したからに決まってんじゃん」
さぁて、魔神野郎のかき氷!でも作ってやりましょうか…
1歩、2歩…と近づいてって
「んばぁ。ハローね、息あるかしら?」
まぁ、氷漬けにしたの私なんですけどね。
にしても、氷塊の真ん前だってのに…光が変に屈折してるせいか、まるで中が見えねぇじゃねぇか。
これじゃあこいつが、一体どんな顔して氷漬けにされてるかわからねぇな。面白くねぇ…
「ん?ってかあれ、うん?…中が見えねぇってゆーか、これ…ただ単に中に、何もいねぇだけじゃねぇか!!」
まずった、油断しすぎた!!完璧に誘い出された…余裕かましてノーガードのまま、アイツの射程圏内へ!
「仕上げだぁ…業拳」
背後か!!
「『裁鋭』!!」
<<ドシュッ!!>>
撃ち込まれた!
背後から直接…心臓に届かせただと!!
無になる(実際のところ攻撃された部分が真っ黒い瘴気に変わる)ことで、相手の攻撃を無効化するのがイルティラの能力なのだが…まるで意味を成せていない!
攻撃が当たったイルティラの体は、一切変化することなくそのまま…そのまま生身で貫かれていた!!
背後からの刺突…心臓を一突きに、身体を貫通!!
「うばっ…ちくしょう、ガチでいてぇじゃねぇか…いつぶりだぁ…こんな、死ぬくれぇ痛い目に会うのはよ…」
「ふざけてたツケじゃあねぇかぁ…いちいちうるさいんだぁ…おめぇはぁ…」
やべぇ…まじで心臓、貫かれてるんじゃねぇか?
おいおい…身体構造上、心臓無しじゃあ人間生きられねぇぜ…
「ああ、マジで…俺、死ぬのかよ」
「だろうなぁ…心臓潰されて…生きちゃいられねぇぞ」
脱力感…身体中の力が、こう一気に全部外に出てっちまった…
もう、このまま体を床に倒しちゃ俺…2度と起き上がれねぇ気がするくらいの
「おたく…名前、なんだっけ?」
「ピスカだぁ…これから死ぬところだってやつに言っても仕方ねぇだろうがぁ」
「そうかい、ピスカかい…じゃあピスカ。冥土の土産に、なんで俺に攻撃が当てられたか…教えちゃくれねぇかい?」
「…アンタ等が俺達と敵対することぉ…教えてくれた奴が居たぁ…そんときぃ…ついでにアンタ等を倒す術を教えていってくれただぁ」
「…誰が?」
「知らないなぁ…そこまではぁ…ただ、髪の長い女だったなぁ…とっても綺麗な人でぇ…」
おん…な?
なっ!?そいつは…まさか!!
「その術ってのは、なんなんだよ」
「良くはワカらねぇが…黒い、粉かぁ?なんかを持たされた」
間違いねぇ…そいつは
「そうかい、ありがとよ。死人相手にいろいろ喋ってくれて…俺、もう逝くわ」
「結構長い間もったじゃねぇか…そんな喋れるもんなのかぁ?」
「驚いたもんだねぇ…俺も最初は…呆気なく逝ったもんだが」
「………」
<ズリュ…>
イルティラの胸から静かに、突き刺した腕を抜いたピスカ
既にその隙間から溢れ出た大量の血液を横目に、最後の一滴まで血が体外に出尽くす。
同時に…本体もまた、静かに倒れこむ
<ドシャア>
「…結局最後はみーんな…呆気ねぇんだなぁ」
一方その頃、ミシェル等はというと
<<ドゴォン!!!>>
「ふー、動力源破壊完了!これでこの船が沈むのも時間の問題ですね」
と言っても、動力室に侵入して早々に警報が鳴り出してるし…ここに追っ手が来るのも時間の問題なのよね
「問題ねぇ、俺は空飛べるから」
「いや私飛べないんですけどリゲルさん」
つか船沈むの前提?嫌ですよ。その前にどーにかして、脱出ポッドでも見つけ出さないと
「そーいやイルティラどうする?なんか強そうなのと戦ってくれてるが」
「なんの心配ですか?戦闘も脱出も、あの人ならなーんも心配いらないでしょうに」
「それもそうだがなぁ…あの人、直ぐ舐めプする癖があるからなー。変にダメージ受けちまって、動けないなんてこともあったしなぁ」
「…現時点で、私達にも追いついてないですしね」
「ま、大丈夫でしょう」
「おいじゃなんで言った」
このリゲルさんも…やっぱりあの人と同じ匂いがするんですよねー、テキトーと言うかなんと言うか
そりゃ、あの人ともやっていげるわぁ…って
「…あの、リゲルさん」
「言うな、分かってる。この感じ…」
「私達の想定以上…これはかなりまずい状況ですよ」
「至急脱出だ。もういい、こっから艦板突き破って飛び出るぞ!」
「ええ」
よりによって…まさか!
イルティラが、やる気を出す時が来るだなんて!!
そして今、ここへと戻る!!
「!?なんだぁ…これは!!」
「悪いな…ピスカ。俺、今回ばっかしは本気にならにゃあいかねぇようだ」
「だからってなぁ…死人が起き上がってくるもんかよぉ!」
「『DEAD OR ALIVE』…生死問わず、だ…俺は、死という概念すら無効とする!!」
蘇った!いや、この表現はおかしいか…何故ならば!
イルティラに死など存在しない!在るものはただ、己の魂のみ!!
「ピスカ!さっきまでの戦い、すまなかったな…まるでやる気も出さずにふざけまくってよぉ〜」
「ふざけてる!今この瞬間がなぁ…心臓を潰されて、ありねぇ!!」
「あり得ちまってんだから仕方ねぇべな。ついでに、んなことに狼狽えてるんだったら…次のことに怯えた方がいいぜ。なんたって次は…」
ああ…可哀想に
「ピスカ!テメェが死ぬ番だぜ!!」
「だから…ふざけるなッ!!」
一度自分が殺した筈の相手が、余裕綽々と起き上がりこう言う。お前を殺す、と
信じられものか!当然、ピスカは冷静ではいられない。
このイルティラに対し、今度こそ!!確実に仕留める為の、最大の一撃を放つ!!
「「『極致!大王威銃ッ!!』」」
<<<ヴィガオン!!!!!!!!>>>
空間をも歪ませる一撃!!両拳から放たれた、その拳圧は一つに纏まり
圧倒的破壊力を持って、イルティラを貫く!!
「無駄!無駄!無駄!無駄!無駄!無駄!、無駄ァ!!解放せよ汝!…この俺が姿を与えよう!!」
無と有、この二対は決して混ざることはなく…ただ混沌に列挙するのみ
だがイルティラはその二つを、無と有を…この一刃とした!!
「封刀…『無刃』」
<<<ギギギッギギギギギギギギギギギギ>>>
それは、イルティラの手の中に忽然と…耳に響くノイズを出しながら出現する
白い、布に包まれた…刀身のみが握られる。
だがそれも刹那!ピスカの大王威銃が迫る!!
しかしそれは、イルティラの手に握られた瞬間に…作用する
「!?…が」
「………」
微かな笑み…だが決してその眼に光は無く、『虚』
勝利を確信したからの、下卑た笑いでは無く
感情を淘汰した、必然の笑み…
その笑みが見下ろす先には、ただ一つ…『無』のみが漂うのみ
「俺の…攻撃がぁ…消えたぁ」
「いいや、それだけじゃない。消えたのは…」
「……あぁ」
恐れ、焦り、怒り、戸惑い…全ての感情が、この空間に絶無!
ああ無情…なんと非情なるかイルティラよ
この男の前で…全ては無となり、決して顕とならない
死への恐怖も、生への執着も。その存在意義を奪われては…
何も出来ず、その場へと立ち尽くすのみ!
「…ぁあ……なんだぁ…これはあ…」
「より気怠くなったか…まぁ、そうなるしかないか…」
ピスカもまた、その眼は虚…その虚を見続けるように、焦点が束ねられることはない
そして、目の前で振り上げられたその刃にまた…光が当たろうともしない
「すまん、ピスカ…こればっかりは本気になんねぇにはいかねぇのよ。あの女の目論見通り事が進んじゃあ、いけねぇのよ」
「…おおおおおおお…」
「だからこそここで、オメェ等は逃せねぇ。だから…」
安心しな。何も感じずに…逝かせてやるから
「虚無への誘い…」
「ふぃ〜、無事脱出成功」
「阿呆。どこが無事だ…私達二人共おもくそ、地面にぶっ刺さってるじゃねーですか」
結局、あの時来たイルティラの高ぶりにビビって脱出したのはいいが…なんの算段もなしに、上空から飛び降りるもんじゃねぇな。
「あー、落ちてる落ちてる。流石にあんだけ、動力源ボロボロにされちゃあ修繕不可能よねぇ」
「てかいい加減抜け出しません?下半身動かないの、違和感しかないんで」
「お、そうだな」
よいしょ…たく、抜けねぇな
全然体動かないんだけど…首から下、地面に埋まってて…ガチで未動き取れないんですけど
「しょっと」
「あ、ミシェルちゃん抜けた?じゃあちょっとこっち手伝ってちょうだい。なんか自力で抜けられそーにないから…」
「へぇ?もう、仕方ないですねぇ」
服に入った土を軽く払った後、リゲルの頭部を鷲掴みにするミシェル
「…あの、ミシェルちゃん?これって…」
「生首しか掴めるところないんで。このまま引っこ抜きますよ」
そのまま力いっぱい…首を撚る!
「痛い痛い痛い!もげる!力かけ過ぎ…首もってがれるから!」
「うるさいですねぇ…抜けたいんだったら黙っててください」
「いや死にたくはないからね!死にたくないから、ちょっと力緩めてぇ!」
「男が度胸張らんでどうするかい」
「あっ、いく!強過ぎだって、痛ぇ!首が地面と別れるから!別れちゃうから!」
「せーの!」
<<<ヴァグオォン!!!!>>>
「あっ、抜けた」
「!?、何この音!」
爆音と一緒に、さっきまで乗ってた船が…墜落している!
かろうじてさっきまで浮遊していたのに…遂に限界がきたわけ!?
いや…そうじゃないわね
「イルティラがやってくれたか…まったく。これじゃ最初の案とまるっきり同じ結果ではないか」
「やる気出さねーとか言ってたやつが、何やってるのかしらね?」
「仕方ねぇだろ。こっちもいろいろあったんだ」
………後ろに居た
「よ、お疲れ。なーに派手にやってんだよ」
「んな余裕もぶっこいてらんなくなったんだって。今回の件、予想以上にやべぇ案件だったみてぇだ」
おいおいマジかよ…コイツが言う『やべぇ』は、度を抜けて『やべぇ』時のこったぞ。
「え?それマジで言ってんのか」
「マジもマジ、マジマジマジなんじゃー。俺等の大仕事はこれ一件で終いの予定だったが、変更だ」
「え?まだやるんですかぁ、こんなこと」
「ミシェルちゃん、残念ながら。しばらくお家には帰れないよ」
露骨に嫌な顔してんな、この娘。
しっかしイルティラの無茶振りも相変わらずよなぁ
「とゆーことで、先ず優先すべきことはズバリ!残りのメンバーを集めることです!」
「残りのメンバーって…割と定期的に連絡取り合ってたの、俺とおまえくらいだろ?他の連中のいるとこに目星ついてんのか?」
「まったく分かってないなーリゲルちゃあん?腐っても僕の部下だよ。悪評がたたない訳がないじゃねぇかよ」
「なるほど…そっち方面で探してくのね」
まぁ、心当たりもありすぎるよな…このリゲル以外にまともな奴は、誰一人DEAD END5.sにいやしねぇもんなぁ…
てかこの名前、久々に口に出して言ったが…やっぱふざけとる
ともかく、そっちの噂なら俺もいくらか…
「でね、早速なんだけど一人目」
「ほいほい」
「アルちゃんにしよう」
「ふぁ!?」
やべぇ…生理的に一番会いたくねぇやつ、初っ端来た
次回予告
ハァ:あーチカレタ
リュ:ホント…どっさりと疲れがきたよな
ハァ:言うて。私らの戦闘、合計10分も経ってないけど
リュ:それでもなんかなぁ…精神的?に疲れるっつーか
ハァ:まぁ待ってなさい。すぐさま、えげつないほど疲れる時が来るから
リュ:なんじゃいそりゃ?
ハァ:さぁて、次回の話は!
リュ:言っても聞かないわな
次回 総戦力




