第16話 女神と天使のetc…
前回のあらすじ
サー:んねぇ、リューリ。
リュ:を?どしたサーシャ。
サー:今夜焼き肉しようっ、てなったんだけど。リューリはどのお肉が好きかな?
リュ:元々、生きてれば。なんだっていいぞ。
サー:お猿さんでも?
リュ:ああ、大好物だ。
サー:そんなかんだで!
リュ:エテ公も消えた第16話、始まるよ。
「とならば、やるしかないか」
目前に敵、両方が目的を据える中
先に動いたのは…
「勿論」
ハァリナ!
圧倒的に戦闘能力が劣るこの私に勝つ確率があるとしたら、先手必勝!!
叩き込む…私の中で最大の攻撃技を!!
「『彩飾牽美・不浄』!!!」
<<<ヴァンッ!!>>>
およそ確実に相手を仕留め切れるだろう、全空域を覆う鋭牙…
まごうことなき、一撃必中の奥義!
もっとも、そいつが被弾しようものなら大爆発…間違いなく私まで巻き込まれる。
できれば使いたくなかった、なんて言っちゃいられないわよ!
「当たってくれろよ!!」
「愚かな…」
!?、駄目…反応なんてできやしないと思っていたけどコイツ!
既に、含んでいやがった!!
「『アズレイ』」
<<<シュッ!!>>>
吹き出した!口に含んでいた水分を!
それは唾を吐いたレベルとはかけ離れた、まさに濁流の如く男の全身を包み込んだ!!
<コポコポポポコポ>」
それだけではない
男の周りに纏われた濁流に、ハァリナの攻撃が全て取り込まれた!!
やられた!等に補給は済ませてたって訳ね…水の補給を!
「忘れたとは言わせんぞ。我が称号は『アクエリアス』、水のエレメントを操る能力者…どうだ、水のない場所でこれ程の水流を作り出すこの力…」
「いや、おもクソ水あるんですけど。隣に噴水あるんですけど。つーか野外に放置されてる噴水の水、飲む奴がある?あーバッチ」
舌を突き出してとことん煽るハァリナ。
あまつさえ超至近距離で、尚且つ充分に臨戦態勢の整った相手を目の前に余裕は忘れない。
「………あ、うん。分かってるよ、分かってる…ずーと隣にあったもんね」
「あっら〜、気づいてなかったの?まっさか、あんなデカい面して言ってたことを…」
「うん…そうだよね」
「はぁあ!?」
その時ハァリナははっきりと視認した、その男の顔を…
涙を、鼻水を垂れ流しにした男の顔を!!
「びええええええええええん!!!そおおおおおんなことおおおおおお!!!!!!!!!分かってるってええええええええええええ!!!!!!!!!!!」
本格的に泣き出した…え!?今の煽りで?どんだけ煽り耐性ないのよコイツ!ちょっとからかっただけで!!
「BBBBBBBBYYYYYYYYYYYYYYYYYYYAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!!!!!僕だって!!僕だってかっこつけたかったんだーもーんーなああああああああああああああ!!!!!!!!」
ヤバい…さっきからコイツ、滝みたいに体液撒き散らしてやがる…どんだけ出てくんのよ!!いや、それ以前にこの状況!まずい
一面水浸し。危機を感じたハァリナは一旦の退避をする、距離をとった!
なぜならこの男の能力、その効力はこの男の体液にのみある!!
「AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!!!!!!!スッキリ出切ったーーーー!!!!」
「やっぱり!」
さっきの意味不明な泣き方!アレは一気に感情を高ぶらせて、その分体液を爆発的にばら撒く手段!!
焦って状況を見失っていたのは私の方か!!
「気分も快晴!まったくもって、さっき以上に清々しく…素晴らしい気分だ。余計に戦闘に集中できそうだよ」
「チッ!謀ったわね…」
「謀った…ふん、君はそんな風に考えていたんだね。そうじゃない…謀らずとも、こうなることは分かっていた。だが」
何言ってんのよ、ここまで綺麗に嵌められたのも大概だわ…
これを謀らずに!
「貴様!!よくもこの僕を散々に詰ってくれたな!!」
「そこは本当かよ!!何!?アレはガチで泣いてた訳ぇ!!」
そのようだ、そこだけは本当に悔し涙を流していた。
しかしそれが予期せず、男にとって最適なフィールドを作り出すこととなった…
「兎にも角にも…これで場は整った!これからが僕の本領なのに対し、君の不意打ちは失敗…唯一の勝機を失ったと言っても過言ではない!」
クソが!まるでその通りよ…
コイツの能力を纏った水滴が一面!ばらまかれた…
それだけ射程距離が広がったってことよ!
「『水分』とは。限りなく、どこにだってある物質だ。生物の生命維持にとっては欠かせない物だからだ…しかし、それが必ずしも無害であるとは言い切れない!そこを引き出すのが僕の能力!」
「知っとるわ!でもアンタ…誰があんなキモい方法で準備を整えるだなんて思うのよ!!」
「水滴一滴でさえ、僕の前では大海となる!距離を取ることで、一旦は僕の能力を逃れたと思っているのだろうが…無意味!」
「話聞きなさいよぉ!!」
「『アーゲストナーブ』!!!」
男が水に手をかざす、瞬間!
地面の水たまりが全て、逆巻く渦に変わる!
何これ!範囲は広いって言っても…この地面のタイルの上、表面のちょっとした凹凸にしか水は無かったはず!
それが、まるで…水深1000mはあるような乱流に!
同時に、その範囲すらも増大していく!!
男の言うとおり…ハァリナが取った距離は無駄に!
既にすぐそこ足元直下にまで、乱流は迫っていた!!
「だぁ!当たる!!」
「グァはハハハ!!その威力、舐めないでもらいたい!足先でもこの渦に浸かろうものなら一瞬で削り取る!そして一気に全身を吸い込んでグシャグシャにしてやる!!」
「アイツの体から出てきた汚らしい体液に触れちゃう!!汚される!」
「嫌がってるのそこ!?」
ともかく気持ち悪い!これに当たらないようにするには…これしか無いわね!
<ダッ!!>
渦の当たるギリギリ。足場のある最後の状態でハァリナは、地面を連続で蹴り飛ばした!
その数、瞬間にして30!よって20数mの跳躍に成功した!!
「なにぃ!?僕の攻撃を避けただと!!」
「見え見えの突破口よ!それ、地面にしか判定無いんだからその逆!空に飛べばいい!」
「そうはさせん、『アッシーラ』!!対空攻撃がないと思ったかヴァカめ!!」
再び地面の水が変動し、今度は竜巻!
上空で身動きの取れないハァリナへ、容赦なく襲いかかる!
空が完璧な安地じゃないってことくらい分かるわよ!
でもこの構図!この互いの位置関係こそが…私に、新たな勝機を見いださせた!!
今の一瞬!ハァリナはただ跳躍しただけじゃない!
しっかりと、次の攻撃の布石を敷いていた!それは…
ステルス爆弾…視認以外の方法では、決して認識することの出来ないコーティングを施された爆弾を4個!アイツの足元に放っておいた!
丁度アイツの立つ当たりにだけは水が設置されていなかった…自分すら巻き込む可能性があるからかしら?でもそれは同時に、ガードの薄い弱点!
更に今は、はっきりと私のことだけ見てるのよ!防がれる筈はない!
「そこでもう一押し!目潰しエーンド、蒸発!『彩飾牽美・不屈』!!」
発光!ハァリナ自身が、太陽の如く光り輝いた!!
それと共に熱線を放射!瞬く間に水流を蒸発させた!!
「あっぢいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!!!!!!、たく!なんで私の使う技はこう、殆ど全部!私にも害があんのよこんちきしょう!!」
発光!発汗!発狂!
ハァリナの言う通り、彼女の技の悉くはその威力と比例するように、獰猛に、彼女自身へ牙を剥く!
つまり彼女は今!一瞬にしてサウナに1時間入っているのと同じ疲労を受けている!
いやまぁね。害はあるって言っても、使いこなせば実は大したことないものばっかりなんだけど…
流石に、命かけた戦いの最中にこれは腹たつ
「眩しい!なんだこの光は!!」
「ビンゴ!腕で顔を覆ったわね。これでより確実になった!!」
消し飛びな…
「「『THE・BOM』!!!」」
<<<DOGOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOON!!!!!!!!!!!!!!!!!!>>>
命中!避け出た感じは無し。防ごうにも、頼りの水は全て蒸発済み!確実に仕留め切れたわ!!
でももし生きていたとしても…水溜り諸共、ここいらの水分は野良犬のマーキング一つ残らず蒸発させた!!
次に逆転の一手は見出させない!!
「着地!ふーう、いい汗掻いたわね。つーか喉乾いた」
喉乾いたけど、うん。
ここら一帯に水ないんだった
「しっかし妙ね…こんなにドンパチやってるのに、野次馬どころか、人っ子一人出て来やしない」
てか、まだお昼よ?そもそもこの時間帯に、外歩いてる人間が居ない時点で可笑しい…
さっきの酒場には間違いなく客が居た…なのになんで
「そんなに気になるか。この静けさが」
「…やっぱり生きてたわね」
爆発の余韻で立ち上がる煙、その煙の中で佇む人影…一つ
まぁあんなに頑張っても、上手く行かない世の中だってのは分かってたけど…
こうも余裕そうに立ち上がられるとまた、腹たつ
けどもまぁ、ダメージはあるみたいね。
煙が晴れ、男の負った外傷も露わになる
それは余りにも大きく
「……よく立ってられるわね、アンタ。半身それ、使い物にならないんじゃない?」
「案ずるな、まだ…貴様との決着をつけるまでは生きていられる」
右腕、右脚はおろか。胴体をも三分の二以上、損傷している。
まごう事無き致命傷。本来、即死していてもおかしくはない
「アクエリアス…それが僕の与えられた称号、それが僕の名!この名に恥じぬ戦いをする事こそが、唯一の使命!!」
「堅苦しいわね。アンタ、そんな下らない使命を与えられる事に、なんの違和感も持たなかった?」
「違和感など皆無!全ては女神アルティレル様の為従うのが、我々天使の本望!それを破る事こそ貴様、あの時から!!」
「そうね、最初っから。私はそんなのに、生き方を決められるのが腹立たしくて仕方なかった。第一つまんなかったしね」
『長い物には巻かれろ』、ね。
自分で生き方を決めず、他人に指図されたことのみをする…
そりゃ、下手に頭悩まされることはないだろうけど…その分つまらない
アンタは本当に、そこだけは狂信的だったわよね。
女神が治めるは天界
その天界で生まれるものは、大きく分けて『女神』と『天使』…支配するものとされるものだ。
『女神』として生まれたものは、『天使』及び地上一切の生物を支配、管理し
『天使』として生まれたものは、その『女神』に付き従う
それが世の常とされていた
しかしそこに、一人の天才が生まれてしまった!
彼女の名は『ハァリナ・トゥ・レイファ』
これは五年前、ハァリナ18歳の夏の話である…
「おっちゃん。いつもの」
「はいよ!焼き餃子5人前、ニンニク増量ね!」
天界…の、市庁駅近くの中華料理屋。
ハァリナ御用達の店である
「しっかしハァリナちゃん。いいの?こんな時間にいっつも外出て来て。寮暮らして門限も厳しいんじゃ…」
「問題ないわよ。朝方帰ってってもバレやしない…この私の証拠隠滅技術舐めんじゃないわよ」
「そんなこと言ってもねぇ。もし学校首になったら、女神業も始められないんでしょう?」
「いいのいいの、私天才だから。学校辞めたとしても、その時点で企業から引っ張りだこよ。まさしく将来ウハウハだわ」
「そうかい?やっぱり羨ましいねぇ、才能ってやつは。はい焼き餃子お待ち」
「だから早いって。おっちゃん、いつもだけどちゃんと焼いてる?チンしてない?」
「そりゃあ食ってから物を言ってくださいよ、ねぇ」
酢を多めに醤油、ラー油を山のようにぶっかけたハァリナ
そのまま焼きたての餃子を一皿丸々、躊躇うことなく食らいつく。
「あっふ、あっつ。間違いないわ〜これ、しっかり焼かれてるわ〜これ。うっま」
「ダハハハハ、そうよ!安くて早くて美味い!古典ながらも、それがうちのポリシー!」
「ご馳走さま。あ、追加で茹で5皿」
ただの一瞬で全てを食らいつくしたハァリナ
それどころか、間髪入れずに追加の注文である。
「あいよ。そうくると思ってたぜ」
しかしいつものこと
同様もなく、店主は既に作り上げていた茹で餃子をハァリナの前へ。
「だーから早いって。今度こそ、ちゃんと茹でた」
「そりゃあアンタ」
「食ってから言ってみなさいって?」
「わかってる〜」
「「ダッハハハハハハハハハハハハハ!!!」」
二人だけの団欒
店内に他の人間は見られない。この時間帯にしてこの人数…
ハァリナの貸し切りであるからこそ、このノリがまかり通るのだろう。
だがこのノリこそが、今のハァリナを支える唯一の物。
ハァリナが最も、気を許せる瞬間なのだ。
「ふ〜、今度こそご馳走さま。アイも変わらず美味しかったわ」
「おうよ!またいつでも来な。うちはいつだって開けとくからよ」
「はいはい。んじゃ、これ駄賃」
「まいど」
一仕切り食いきったハァリナは、万札をレジに通し店を後にする。
これを週に一度、金曜の深夜。毎週の行事にしている
何故金曜かと言うと、翌日
「ムニャムニャん…はぁ!?今何時よ!!」
土曜日の午後十三時、起床
「なんだ、まだ一時ね。あと四時間は寝れるじゃない」
最悪の寝起きである。
このように、前日夜更かししてしまうと、非常に朝に弱いのがこのハァリナ。
ふーう、二度寝二度寝…こんな眠気じゃ何もやってらんないってのよ。
あーもうだめ。休日が週二日だけだなんて…
せめて週七日…いや、六日はありゃいいのにね。
そうすれば、二度とこのおふとぅんから出ずに済むのに…
そーもいかないのが世の無常たるか。あーあー、憂鬱。
「あー、どこぞの神様が仕事なんて概念取っ払っちゃくれないかな」
「神様じゃなくて女神様なら、私の目の前に居るけどね」
!?居る…私のベッドルームに、侵入者が!!
「何奴貴様!!」
「じゃないでしょハァリナ」
「ああ!カターナアンタ!何人の部屋に入って来てんのよ!てかなんでこの寮に来てんのよ!」
『カターナ・ルー』
ハァリナの顔なじみ。唯一、立場の近い同年代の女子
ハァリナ自身、この関係を悪くは思っていないのだが
「アンタ、集合時間とっくに過ぎてるわよ!今日はなんの日だったかしら!!ええ!!」
いきなり不法侵入しといて、今度は何!?今日が何の日かって!
土曜日よ土曜日!サタデー!!神の定めた、神聖なる休日だってのよ!!
「休みの日に何の用かしら?ええ!!たった二度の大事な週休…それを真っ当して何が可笑しいってのよ!!」
「今日は特別講習だっつってただろうが!!」
特別講…習?
「え、なにそれは」
「アホか!!現女神長たるアルティレル様自らが、わざわざ私達次期天使長候補及び女神長候補のアンタの指導為に休日出勤してくれるって話じゃないの!!」
ああー、そんなの言ってたっけ
「だったら勝手に休日出勤してなさいよ。こっちは休日出勤クソ喰らえなんで」
「布団に戻るなぁ!!」
結局連れ出された…
まったく無理矢理連れ出すんだもんなー、もう
「ハァ…リナ」
「どーしたのよ。ほれ、着替えたわよ。これで文句は無しっしょ」
どーしたの?着替えて疲れてんのはこっちだってのに、なんでコイツが疲弊してんの。
「アンタの服、ニンニク臭すぎ…」
「はっ倒すぞゴラァ!!」
昨夜、ハァリナが餃子を食べに行った時の服装をそのまま、今日のコスチュームとして着用。
無論洗浄はしていない!
「なにがニンニク臭いよ!年頃の乙女に失礼と思わないの…どう嗅いでも、フローラルの良い香りじゃない」
「正気なのアンタ!とてもこの世のものとは思えない、酷い香りよ!」
ふん。私の美しさに対しての嫉妬かしら
「と、着いたわよ。まったく、タクシー代出されてまでこんなとこ運ばれて…」
「取り敢えずファブリーズまいとこ、シュシュっと」
「おい、顔にはかけるな」
ハァリナ達がたどり着いた先、そこは…
「たく…司法の宮殿、『イニエスタ』。天界行政を司るなーんて場所に連れて来やがって…ん?つーかここ、あのババァ共の住処よね。休日出勤どころか、一歩たりとも住処から出ちゃいないわよね」
「ババァ言うな、アルティレル様だ。そこは向こうに都合合わせてもらってんだから、そんくらい」
「あほくさ。人に言いたいことあるんだったら、自分から言いに来なさいよ。立場関係なしに…相手に目線合わせて話しもできねーんじゃ、礼儀に欠けるわ」
無駄にバカデカい宮殿作りやがって
その面積に散りばめた装飾も無駄、管理費も無駄。
ただただその権力を見せびらかしたいってだけの無能な考え…とことん無駄なだけの連中に、なんで私の時間が割かれにゃああかんのですかい。
それだけの文句、不満を持ちながらも、黙って宮殿前に聳える階段を登っていくハァリナ。
大凡二分、登りきった先に入口が佇む
「長い。疲れたわよ…茶ぁくらい用意されてるでしょーね」
「私に言うなって…まぁ、入ればわかるんじゃない」
「お邪魔しまーす」
扉を開け、馬鹿でかい玄関ホールを抜けてすぐそこは。またもや巨大なホール…
接待用かしら?内装もまぁ凝っちゃって。
と、中にいんのはそれだけじゃないわね…
「お、ハァリナじゃねぇか。珍しい」
「人の面見て早々、なに?アガレック」
全員、揃っちゃいるみたいねぇ…
次期、八大天使長さぁん。
「いやはや珍シーですなぁ。いや、この時間に来るだなんて」
「おんやベンパド。相変わらず、うっとおシー語尾と喋り方だこと。ま私も相変わらず遅刻なんですけどね」
「何言ってやがる。時間ぴったり間に合ってるじゃねぇか」
「は?」
「ほんまにどーかしたんのとちゃうか?おまんが遅刻せんなどと、そんな天文学的可能性起こるもんなんやな。明日雪でも降らんとええけど」
は?私が遅刻してない、へ?
だって私、既に遅刻してたんじゃ
「ってカターナ…どーゆうことかしら?」
「そーでも言わないとアンタ、準備すらマトモにしなかったでしょうて」
よーするにあれかアンタ。私って、騙されて連れて来られた訳ね
「じゃ、私帰るわ」
「いや、待ちなさいって」
「止めんでくれぇ、おっかさん。私ゃもう眠いんだ」
ツーことで帰ります、もう帰ります。
帰って二度寝よバッキャロ…
と、一歩たりとも室内へは入らず。そそくさと帰路につくハァリナ
ああ、こりゃいつも通り駄目だなと。一度ワガママ言ったハァリナは、止めようがないと。
その場に居たハァリナを知るメンバーは誰一人止めはしない。だがこの女は違う
「あらあら、ハァリナさぁん。まだもう少し、ゆっくりしていってはいかがですか?」
…この声、聞き覚えしか無いわね。
広告という広告…目に付くもん、ほぼ全部にあの女。『天姫の女神』…アルティレル
「…なんともまぁ、私のようなものにさん付けとは。その敬い、感謝ですわ」
「それにしては…真顔過ぎはしませんかね?」
そらそうよ。一切感謝の気持ちないもの、真顔にもなるわ。
「ちょっとハァリナ。流石に改めなさいよ、本人の前では。裏でならまだしも」
「聞こえてますけど?」
「…あーはい。分かりましたよ、諦めますよ。仕方ない…本人が出て来ちまったんじゃあ、引き下がれないわ」
「とゆう訳ですんません。ほれ、この通りなんで」
「すんまっせんしたー」
本人が居る前で堂々と帰っては、後々面倒臭いことになるだろうと。今回ばかりは堪忍したハァリナ
適当感丸出しで、軽く頭を下げた後。
そこで初めて、ホール内へと足を踏み入れた。
「あなた達…その敬いという言葉、辞書で引き直して来なさい」
「それでぇ、講義には参加しますよ。で、会場は?まさか、こんな広いだけのホールに椅子なしで?立って講義を受けろとでも」
「太々しいわね貴女!話に聞いていたよりも数段…本当にこの子が、次期女神候補であってるのぉ!?」
あまりのハァリナの傍若無人ぶりに、なんだこいつ!?と心の底から驚くアルティレル…
その思いを、まだ真面目そうなその他大勢に向けるが
「んまぁ、一応」
帰って来たのは、それだけの答えだった。
「認められてるの…これで、その確かな答え方。いやまぁ、どことなく仕方ねぇって感じもあるけど…誰も否定はしないの?ハァリナのこと…」
「んまぁ、僕らも、こいつには振り回されてエライ目見てますけど…その点全部ひっくるめても帰って来る。それだけのもんが、コイツにはあるんですよ」
「…どんな信頼のされ方?そうですか、そういう事ですか…その才覚のみが取り柄ということですか」
「ええ。生まれながらの規定事項ということで」
「ホンット、そこらへんのシステム全くもっ…いや、そうですね。それも必要な資格…上に立つ者には、絶対的に要求される要素…認めましょう。貴女が私の後任となることを」
「いや資格とかなんとかどうでもいいんで、さっさと本題いってくださる?」
「忖度!」
こん時はどうでも良かった
そんな責任だなんて、何も考えず後釜に座りこもうとしてた。
今となっては全部分かる、分かってしまう…それがどーゆーことなのか
「ま、アンタ。アンタがんなクソつまんねー人生、いや天使生?選んできたこったどうでもいいんだけど。可愛そーなことに…それに意味があったと思う?持てると思う?」
「意味など無くとも…全て!僕の信じる女神様のために!」
クソ喰らえよ!誰かのいいなりなんざぁ…全部、その女神の思い通りに動かされちゃあ!
私の存在は、ただのハリボテ…後ろで、あの女神が好きなように物事を動かす。
ずっと頭ごなしに命令だけしてくる…
それを周りは良しとするんだからね…ふざけんな!
「私は好きに生きるだけ!立ちふさがる障害は、全て打ち払う!アンタもアンタで、持ってるものってのがあんでしょう…でも。アンタは私の前に立った、だからアンタは死ぬのよ!」
「解さぬわ!」
最後に…一発、トドメをくれてやるわ!
ま、私には害がない範囲で。
「『アジューハマンド』ッ!!」
「『彩飾牽美…不憫」
最早その能力は、身の回りの水一滴…動かすにも及ばず。
だがその執念は…目の前のハァリナを捉えるには充分!意識を、鮮明に、この世へ留まらせた。
よもや明日は望むまい。ただの一瞬を臨もう、今この女を打ち倒すだけの一瞬を。
イタチのすかしっ屁が!
アンタに…私を殺せるだけの力は残っていない、その筈だった!
でもそこまでして勝ちたいものなの?
アンタに残った、最後の一滴まで…その血を纏って!
己が肉体。それこそが、この男の選んだ最後の武器。
己の体を巡る血液を刃に変え、ハァリナへと突っ込んだ!
<<<キィィィィィィン!!!>>>
そして…すれ違うその一瞬。決着はついた。
「馬鹿ね…ババァの命令だかなんだか知らないけど、私に喧嘩売るだなんて」
「………」
「分かりきってたでしょうに…だってアンタ」
男は…静かにその場へと、倒れ込む
「私に喧嘩で勝てた試し、なかったもんね…アガレック」
<ドシャア>
「ぁ………」
顔は見ず
自らが選んだ道…たとえ、自分一人が自由になろうとも、かつての仲間達と敵対することは分かっていた。
それでも、後悔などせずに生きる。
だから殺した…その相手の顔をハァリナは
「たく…情けない。今更後悔するなんて…そんなの」
見れる訳…ないじゃないの…
あの時、顔ごと吹っ飛んでくれてたらどれだけ楽だったか…
フフ…その考え方。随分な悪党ね、私。
「でもアンタも悪いのよ。あの女神の言う事聞くなんて」
それがあのババァのたちの悪さ…
立場だけは正義、その執行者なんだから
フン。悪党上等!やってやろうじゃないの
改めて私も、あのババァ…なぶり殺したくなったわよ。
時を同じくして
魔神、ウル・キースを連れて行った連中が、新たな動きをしていた!
「ウル・キース…また随分なやられようだな」
「はい…今回ばかりは、私の失態ですね。紛れもなく」
この場にいる者は…四人!全てが魔神
「しかしレグルス様…今宵の戦闘、私も見物してはいましたが。かの転生者、天理柳犁は恐るるに足りないかと」
暗い室内…蝋燭の明かりが元に、対話は続く
「既に、こちらの戦力はケタ違いのものとなっておりましょう…魔神に女神、人間の勢力が手を合わせたとなれば…あの神でさえ」
「ああ、話にもならんだろうな。最上の神おらぬ今、その力を持つものは…なにも一つで無くて良い」
「その権利は勿論、我等魔神にもありましょうて」
アリエスがそう、言い放った瞬間
この場で最も、強者と言うに相応しい風格を持つレグルスは…笑った。
「…貴方の表情が変化するところ、初めて見ましたよ」
「ですね。口数が多いにも関わらず、真顔以外見ることなかったですから」
「…そんなに以外か」
「まぁ、ともかく。我々の長年の目標も、もうすぐきますし。盛大に笑っていいんじゃないですか?」
「え、だってそれ…キャラ壊れない?」
「そもそも貴方の元のキャラ、知らないでしょうし」
この魔神共の居る場所…それは上空数千メートル!飛空艇にて、ミリエル、サーシャの護送を待っていた。
「にしても。後全部天使の方に任せちゃいましたけど、大丈夫なんですかね?大分遅い気が…」
「ああん、大丈夫でしょ。アルティレル自らが推薦してきたんだ。そう、仕事の出来んやつじゃないだろ」
「それにしてもやっぱり…遅いですね」
「………」
一同、心配で胸がいっぱいになった。
「と、ところでピスカ?さっきからあんまり、喋らないじゃないか…どうかした?」
現状、一言も言葉を発した描写のない者。それがピスカ
「ん?レグルスの旦那ぁ…そう、大したことじゃあねぇんですけど。これ…来てますねぇ」
「はぁ…何が?何が、来てるんだ」
「ボス…いや、ピスカがですね。反応を示すするものといったら…」
「ピスカ。今、どこまで来てる?」
感づいた様子のウル・キース
ピスカが持つ、特出して、他人より優れた能力が一つだけある。
それは、感知能力…半径10キロ以内ならば、どれだけの速度で動いていても、その細かな動きさえも、的確に感知することができる。
今回、ピスカが感知したものとは
「後方数百メートルまで…いや」
「そこまで接近されていたのか!なんと…この飛空艇は肉眼にも捉えられず、魔力で感知することさえ不可能だというのに!よもや敵が来ようとは!」
「ピスカ!後どれくらいでそれは、衝突する!」
「3.2.1、はいドーン」
<<<ドグォオオオオンン!!!>>>
衝突!外壁を破られた音!
「中央監視室!今すぐ、応答を願う!」
「はい!こちら中央監視室…ただいまの爆発、後方物資倉庫から!既に、近くの班に消化を要請しました。早急に片付くかと…」
「なぁに!?引かせろ!あれはただの爆発ではない!」
「酷い有様だ…これは」
「民間の旅客機でも衝突したのか?にしちゃあ、おかしな形してるぞ…この船」
「ともかく、鎮火が第一!各々水系の魔力を!」
「炎系でこれ全部操れるやつ、いないの?」
見事にぐっさりと、小型飛空艇の頭がぶっ刺さっていた。
それどころか…辺りは一面火の手が上がる
早急に消化しなければこの船、墜落する!
「お前達用意はいいか!火じゃない、その元となっている所を狙うんだ!」
「全員構えよーし。放て!」
<<ガキン!!>>
お出迎え…ありがとよ!
皆が一斉に消化活動にあたろうとした、次の瞬間!
その男は飛び出して来た!
そして、周りの連中を全て凪払った!
「ぐぁぁぁ、何者だ、貴様!…!?」
出てきたのは、その男一人だけではない
三人!粉塵の中より居出る…
「ふぅ〜う。どうだ?やっぱり小型飛空艇で突っ込んできて正解だっただろ。見事に敵さん、警備が手薄だぁ」
「じゃねーでしょアンタ…普通に死にかけですよ、こっちは」
「生きてんじゃん。それだけで儲けもんよ」
「まったく…相変わらず無茶をするやつだ」
「人生無茶をしなきゃ、なーんも楽しくないよ?つーことでミシェルちゃん、リゲル…。もっと無茶開始だ」
「最初っから。超大型飛空艇一個潰そうだなんて、無茶な話ですよ…ホント」
「…この子にさえ、既に呆れられているとはな。本当に…何一つ変わりないようだな、イルティラ」
「傍若無人!厚顔無恥!傲慢無礼で結構よ。なんたって俺ゃ…」
「ふん…大魔王様か…」
次回予告
イル:大魔王様…降!臨!
ミシ:テンションあがってますねー
リゲ:当然だろ。3ヶ月以上引き伸ばされての登場だ。待ちきれんかったのだろう。
イル:いーや、気づいたら消費税も増税されちゃったし?ホンっとなにやってるんだろーねー、俺
ミシ:悲観?
リゲ:する玉か。
イル:さーて次回!ようやく俺の活躍!ようやく!みんな見てね!
ミシ:どーせすぐまた、出番無くなるんだから。
リゲ:言ってやるな。本人はそれで、満足なんだから。
次回 大魔王様降臨!
ミシ:だ、そうです。




