第15話 摂理
前回のあらすじ
サー:ご飯美味しかったねー
ミリ:そーだねー。でも料理出来る女の人って魅力的だよね。
サー:ミリエルもできるじゃん、料理。美味しかったよお味噌汁。
ミリ:うーん、でもちょっとレパートリーが少ないかな。ほらサーシャも、好きな人にいろんな料理、作ってあげたいでしょ?
サー:好きな人に料理?うーん、毎日いっぱい食べたいからねー。自分で作るのもいいかもねー。
ミリ:よーし。じゃあサーシャ!一緒に料理お勉強しよう!ところで、今は何作れるの?
サー:卵かけご飯。おいしいよねー!もし好きな人ができたら、毎食作ってあげるんだー!
ミリ:あ…頑張れ、リューリ。
サー:そんなので第15話、いってらっしゃい!
「これで大丈夫ね。100%治る薬飲ませたね、後一時間もすれば完治するね」
「ありがとうございます、先生」
先日、一晩中外に放置されていた私天理柳犁は、案の定風邪をひいた。
なんで、一旦山から降りて。街の診療所で治療を受ける今日この頃…
さっきまで全身の穴という穴から体液が垂れ流しの状態だったというのに、簡単な薬物投与でここまで回復するとは流石に思わなんだ…医学ってすげぇよ
「わっはっは、その子が元気になってくれてなによりね。ただ大分珍しいね。その年でカリムランひくとはね」
そうこの私。本来ならば体内の抵抗力が強すぎて、病気になるって方が寧ろ難しい。
それにこの病気、聞くところによれば…
「おかげで急遽幼児用の薬を大人用に調合し直すことになったね。いや~、うまくいくもんだね」
この病気、幼児レベルの子共しかかからないという。
10歳も過ぎるころには、誰もかかりゃしないっていう…
俺20!その倍は生きてるっての
「まま、お大事にね。心配はいらないでしょうけど。今日はなるべく安静にしとくね」
「だそうだ。昨晩みたいにまた暴れるんじゃないよ」
「はいさね…もう懲りましたわい」
「いっ、あ。先生、次の患者さんが」
ここで看護婦さん登場…っと、長居は無礼か
他のお客さんにも迷惑だし
「じゃあ今日はここでね。もう二度と来ないよう気をつけるね」
「はい。ありがとうございました」
一応礼を、と
まあ一礼だけして、後は診察室から出るだけなんだが…
しっかし見れば見るほど胡散臭い格好してるな、この医者
メガネで目見れないし、顔になんか継ぎ接ぎあるし…
つーかあれただのシールじゃね?なんかとれかかってるんだけど、さっきからプラプラしるんだけど
「あ、書き間違えた。ミシェルちゃん、修正テープもってなーい?」
「もってません。てかカルテ書き間違えたなら、別のに書き直した方が」
「やだよ。せっかくここまで書いたんだから…あ」
<ピリ>
剥がしたぁぁぁぁ!!顔に付いてたの剥がしやがったよあいつ!!
完全にシールだったよ、あれ…
「これでバッチと。よーし、OK!」
「先生。全然OKちゃいますってそれ」
「…駄目?」
「駄目です」
…きつく言われて、なくなくゴミ箱に捨てたよ先生
心なしか、顔がシュンとしちゃってるよ
「ほらリューリ、いくよ。ミリエル達がまってんだから」
しまった
なんかどうでもいいの視てたら置いてがれる所だった
もーうドア前セッティングングしちまってるしよぉ、アマンダさぁん。
「ほーい。今行きますよー」
「出てったかね?」
「とっくに出て行きましたよー」
「そうかね、出てったのね、やったね」
「語尾のねってそれ、必要ですか?」
「雰囲気作り。いいじゃないのー、そんくらい」
リューリが病室を出た数分後のこと、話を続ける医者と看護士
そして目的を果たしたこの男は乱雑に白衣を脱ぎ捨て、その身を解き放つ
「い~い感じにヤブだったでしょ?僕」
「胡散臭さMAXでしたよ、ホント」
「でも並みの医者よりかは腕いいんのよ。今のもパパっと、片付けられましたし」
「いやさっきの人医者関係なかったですよね」
「、まぁそりゃね」
最初っから俺の目的はあの天理柳犁君ですからね
言ってもなかったのに感づいてこの子。やっぱり素質あるわー
「で、なんでこんなことやってるんですか。仲間探しに来たとか言ってましたよね」
「ん?その一環かな」
「暇つぶし、ってことですか」
「御名答!」
時期が来なきゃあアイツにゃ会えない
かと言って、それまでただ待ちほーけるのも暇!
俺は例え病院の控え室でも黙って待てない男。お祭り騒ぎの一つや二つねーとな
みゃあ、柳犁君に関しては完全に無関係とも言えませんがね
「それに付き合わされる私はなんなんですか」
怒ってる…顔は笑ってるけど、完璧に怒ってる声音だよこれ
まぁ朝五時から無理矢理起こして、こんなとこまで連れて来たの僕なんですけど
それでこんなクソ面白くもないことに付き合わされちゃあ怒るよな、いじけちゃうよなー
「仕方ない。じゃあいいこいいこしてあげよ…」
「いらないです」
「あれ、やっぱり?」
まったく恥ずかしがっちゃってー
そうね、じゃそしたら
「お洋服でも買いに行きましょうか」
「行きましょう」
さっきの医者に変な薬飲まされてから数時間
一瞬で体調が良くなったから、とんでもねぇ副作用でもあんじゃねぇかと心配してたが…いらん心配だったな、なんの支障もねぇ
「リューリ。早く食べないとなくなるよー!」
「ほーい」
支障がねぇどころか、食欲が回復しちまって仕方ねぇ
昼飯にしちゃ遅ぇくらいだが、まぁ昼飯ってことで食い散らかそうよ
「うーわ、良く食うわねー。リューリはまだしもサーシャあんた、さっき私等と一緒にラーメン食ってきたわよね」
「んー、やっぱりお肉が食べたかったかな」
「食い過ぎよ」
辞めとけ。カービィ然り、サーシャの胃も異次元だ
許容量なんて概念はない
「つーかアマンダさんどうした。この店見つけた時にゃいた筈だが」
「アマンダさんは、昨日捕ったひぽギュらを卸しに行きましたよー」
ひぽギュら...そーいや結構な市場価値だったっけか
見た目あれだが、売れんのか?
相当数狩っちまった俺も俺なんだが…あり?なんかとんでもねぇ数狩って無かったっけ、山の用な量ありゃしなかったっけ!?
「ってあの人。まさかあのひぽギュら全部、一人で持ってったのかよ…」
「ん〜。そうなるかしらね」
重機無しで運べる量じゃなかったぞありゃ…そいつを素手で
俺にも不可能やぞ。すげえなあの人…いやホント
「言うてあんた等、昨晩で半分以上食い潰してたじゃない。そりゃ量も軽くなるわな」
「そうかぁ?俺あんま食ってねぇねど。あ、俺等ね」
「みゅ?」
と言って視線をやるが。今正に幸せそーな面して食事してやがりますね、このサーシャちゃんは…
いや割とマジでそーだ。すっかり忘れてたがコイツ、どうする
「…ハァリナ、そーいえばだが。この後の算段は付いてんのか?」
「今更それ心配しだしますか。そーね、どーする?」
「考えは、なしか」
「まぁ成り行きでどーにかなるでしょう。どの道、アンタが守るって決めたんでしょ。行動には責任を持ちなさいな」
「そーだな。それしか無さそうだ」
サーシャ…コイツが一方的に女神共に殺されそうってんで(俺も狙われてるんだが)一緒に逃げて来たのはいいが、いかんせん相手が相手でやべぇからな…
えっと?女神共の軍勢と、グレイブさん達の…えすりーと?だっけか。
俺単身じゃ良いとこまでいくだろうが、サーシャもとなると危うい…
さて、どーやって勝ちましょうか。この戦
「でもシンプルに、もうちょい戦力は欲しいわよね。アンタ一人じゃ、どう考えても無謀でしょ」
「その無謀なことをやっちまったんだよなぁ…あ~あ。生きてるかなー、ヴァル達」
「ほぼ無理じゃない、あの時点で異常な程戦力差があったわ。あのグレイブ一人は倒せてたとしても、その先が絶望的ね」
「…ごめんなさい。墓参りには行くんで、勘弁してつかーさい」
「まぁ、敵戦力を多少は葬ってくれたでしょうし…花くらい持っていきなさい」
「あーと。アークの野郎も冥皇って野郎も、音沙汰なしやしなー。一緒に女神共ぶっ潰そうって約束したのにー」
「は?なんであんたの口から冥皇なんて言葉が出てるくのよ」
ん?エラい食らいつき用だな。言葉一つで…
今までの余裕かましてた態度とは大違いなんじゃあねぇか
「どーした」
「どーしたもこーしたも、アンタ!あの冥皇と結託してるってのは本当なの!?」
「んまぁ、口約束だけだけど。なんか、皆さん勝手に天帝とか冥王とか話してたけど。なにそれ、どれだけ偉いのそいつ等?」
「その人達は…今何処に」
「知らん。王国に居た時にゃ既に別れてた。つーかなんなのかって、俺の質問に答えなさいよ」
「それって、もしかして…ええ、良いわよ。知らないならいくらでも教えてやるわよ」
冷静な常識人キャラでいくんじゃなかったのかよコイツ!
なんだ…好きなことだけ早口になっちまうオタクみてーになってんぞ、エラいテンションの差だぞ!?
「天帝、冥王。この御二方は、歴史的な改革…キャザの改革の立役者となった人達…私達の最大の理解者よ」
改革って…まさかアイツ等。前にも、俺と同じように女神共を敵に一回喧嘩起こしてるのか!?
「神共の圧政…それに耐えかねた各組織のトップが手を組み、打倒を掲げたこの改革…最終的に圧政は和らいだ、けど。かの御二方は、自ら役職降りた…その後の処理を円滑に進める為にね」
…なんだよ。んなことやってたのかよアイツ等
「まぁそれが飛び火して、人間界には多大な迷惑になったらしいけど。そこんとこは関係ないんで私」
ん?それって…
「…十年前の大戦の原因、そいつ等なんじゃねーの?」
「んま、そんなとこね」
「女神が神に喧嘩仕掛けたのが始まりだったんじゃないのか」
「よーするにアレよ。女神共は上手い汁啜りたかっただけ」
「ふざけんなぁぁぁぁ!!!!全責任そいつ等にあんじゃねぇかぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
柳犁はキレた
前、その二人からその話を聞いた時…何一つ都合の悪いことは聞かされず、只々おだてられ、いい気になったので『手を貸してやろうかな』なーんて考えていたのも塚の間
実際のところ。その元凶足り得る連中に踊らされ、結果エラい状況に追い込まれてる。
という現実を叩きつけられた今
「ちょなによ。アンタこそ急にどーしたの!?」
「だまらっしゃい!!ツーとアレだな。女神どもの尻拭いさせられる為にこの世界へ飛ばされた挙句、それにムカついて反抗しようものならアークに利用される…」
嘆く、嘆く柳犁…手に持つ肉を貪りながら、自分の現状と共に獣のように噛み締め
「ああ…なんというか。アンタを転生させたのが私なだけあって、心に響かないと言えば嘘になるわね、その言葉」
「俺は自由に生きたいんだよ…なんの苦痛もない、植物のような生活でいい!野生に戻ったって構わねぇ!だが」
<バキィィィ>
そして骨すら、噛み砕き
「邪魔が居るのが許せねぇ!!もういい、もう全部捨てて山に籠るわ俺」
「はぁ!?何ぬかしてんのアンタ!!」
「頭悩ませるくらいだったら、戦いなんて投げ捨てるっつってんだよ。おっと、負け犬だなんて言ってくれて構わねぇぞ。そんくらい認めなくっちゃなぁ」
ああ…生きるぜ
「………」
それを思い出した時、柳犁は
「へ!?え!?何何々、何!?そのテンションの激変は!?なんでその流れで黙りこんじゃう訳、アンタ!!」
「…いや、いい」
2度と負けない、最強の俺になる
「そうだった…よな」
「なんで急に目が死ぬわけ!?アンタの脳内構造どうなってんのよ…」
柳犁は思い出した
文字通り噛み締めた、相棒の死を
「悪ぃ、んなことどうでもいいんだ。俺は…もう、誰にも負けねぇから」
「あっ、はい」
相棒…まさか見てくれちゃいねぇよな、こんな無様な俺の姿…
墓場まで持ってってやっから、そんときゃ
語り合おうや。今度こそ、俺とお前の言葉で
『そんなことないよ。僕、ずっと見てたから」
!?、この声…
「キャッ!?」
柳犁が声に気を取られたのと同時
柳犁の反応がコンマ1秒遅れたその瞬間に、その男は現れた!!
「て…めぇ」
「久しぶり。でもゆっくりは出来ないんだ、じゃあね」
フードに隠れて顔は視認できない、だが。柳犁には分かった、この男が誰なのかを!!
そしてその動揺がまた、その男が逃げる為の隙を作り出してしまった!!
「サーシャ!ミリエッ…」
「リューリ…」
その男はサーシャ、ミリエルを連れ去った!!互いに言葉が交わることの無い、本当の一瞬で
そして柳犁は動けずにいた。未だその動揺を抱えて…
「リューーーリィィィィィィィィィィィィ!!!!!!!!!!!!」
「うるせぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええええええええ!!!!!!!!!!!!」
ハァリナの激でようやく理解した!
アレは…殺さなければならない相手なのだと
<<<ヴィシュン!!!>>>
飛ぶ!その男の元へ
「…ここらへんでいいか。そろそろ彼が」
男は、先程柳犁達の居た酒場から数キロ離れた家屋の上に立った…一回の跳躍で
<<<ヴィシュン!!!>>>
その場所を感じ取った!!男の気配を元に瞬間移動してきた柳犁
そして間髪入れずに初撃を放つ
<<<ズガン!!!>>>
直撃する!横一線、男の顔面に!!!
<<<ドオオオオオオン!!!>>>
吹っ飛んだ!吹っ飛んだのだ!!
本来なら真っ二つに千切れていよう、顔面を残して。
「おかしいねぇ…ぶった切られて生きてるよ、僕」
「おかしいねぇ。なんで生きてるんだよ、オメェ」
しかし、男のフードを飛ばすことには成功した
そしてその顔は…柳犁を確信させる、あの男を
「なぁ、相棒」
「久しぶり、リューリ」
自らの相棒だと
「なんだよその体…一体全体なんだってんだよ」
「もしかして、病み上がりだから『勘違い』だなんて思って無いよね?」
「風邪でやられちまった、か。んなら、どれだけマシだったか」
「これは現実と?じゃあ君はとんだクズじゃ無いか。よくもまぁ、また僕を殺そうだなんて」
「どうでもいいよ…テメェ」
「いや、そうでも無いか。だってほら」
この時点で、柳犁は闘志を失っていた。いわば、隙だらけになっていたのだ
「ありがとう。そこまで僕のことを思ってくれてるんだね…もう既に」
…猛烈な殺意
ほんの一瞬、僅かな時間ではあるが。闘志が枯渇した今の柳犁を取るには、十分過ぎる時間だった
「首がとられているってのに」
その一瞬を逃すことなく、柳犁への攻撃が放たれた…しかし
「だぁれの首がとられてたってのよ」
「…ハァリナ!?」
寸前。ハァリナの防御が間に合った!!
「あら。抜けない」
男の攻撃は深く、空中に固定された液体のようなものに囚われていた!これで片腕は動かない
「お前…なんでここに」
「じゃかぁしい!女神パワー舐めんなっての。アンタにその力与えたの、誰だったかしら?」
「そうじゃねぇ!お前、戦闘能力からっきしじゃなかったのか」
「ケースバイケース。あの時は相手が女神だったからこその戦闘能力の低さだったけど。ことコイツ等に限っては別…まったく、悉くとんでもねぇ奴等とやりたがるわねーアンタ!」
それは太古より生き永らえし超生物
かつて、この地球が存在したその瞬間よりこの地球上を闊歩し
地球と共に有った生命体!
「魔神!!しかも猿型の高位種ときちゃあ…いくら女神と魔神の相性がいいっつったって、かなりハードよ…こいつぁ!」
魔神…それが、コイツが蘇った種族!
ヴァルと同じ…
「そうさ!神生改めて自己紹介しようか!我が名は魔神『ウル・キース』!!現世へ最悪の魔神を滅する為蘇った!!」
「最悪の魔神…アンタ、それって一体なんのことよ。つーか、サーシャとミリエルはどうしたのかしら!」
「その娘こそが我々の探す片割れ!此処に居ないのは既に受け渡しが済んだだけのこと…無論、ここから先はこのウル・キースが通さぬ!」
「決まりね。コイツを殺して二人を取り戻す。アンタとアレに何があったか知らないけど、私知らないから。容赦なく殺すわよ」
「いや、待ってくれ」
「なに、手は出すなって。サーシャを連れ去った奴相手に?生温いことね。サーシャはアンタが守るんじゃ無かったの?ここで諦める気?そのくだらないプライドを」
「そうじゃねえ」
<<<バギィ!!>>>
ウル・キースを縛る拘束が外された!いや、腕力のみで打ち砕いて見せた!!
「甘いのは君さ!そのまま顔面を抉りッ…」
<<<グワキィィィ!!!!!!!!!!>>>
「とれ…無い!?」
<<<バキィィィィィ!!!!!!!!!!!>>>
届いていたはずだった。明らかに、ウル・キースの攻撃が先に
だが事実、吹き飛ばされたのは…
「そうじゃねんだよ。…コイツは、俺の獲物だ」
「リューリ…」
柳犁の斬撃をモロに食らった、ウル・キース!!
「アピャっぷ…いったぁ。初めて、まともにダメージ食らったねぇ」
「つーわけだハァリナ。オメェは連れてがれた二人を追ってくれ」
「あれ?無視」
「アンタ…よーやくやる気出てきたみたいね。でもいーの?二人を救うヒーローの役、私に譲っちゃって」
「一度見捨てて、勝手に死のうとした奴だ。んな奴にヒーローの資格なんざねぇよ」
「そ。じゃあ、死ぬんじゃないわよ」
「だーから。無視すんじゃねぇって!!!」
「行け!!ハァリナ!!!」
<<<バギィ!!!>>>
ウル・キースの掌底、それを受けるは柳犁の斬撃。
その余波だけでも尋常では無い、だが。両雄、立ち尽くすまま微動打にせず
「ねぇ、なんで僕を無視しちゃうかなー?感動の再会だよ…もっと語るべきことがあるでしょーに」
「死人に口無しだ、覚えとけ。おっと、オメェの場合死猿か」
「ふーん、薄情」
掌底の威力もさながら、恐るべきはその硬度
白刃と斬り合いを演じ、傷一つすら付きもしない素手…
「でもね…君が今、何と戦ってるかぐらい確認してもいいんじゃ無い?」
「知ってるよ魔神だろ。それがどうした」
「知る人が聞けば結構な驚きだと思うんだけどねぇ、このブランド。もしかして知り合いに居るとか?(特に僕)」
「俺のダチがそーだな」
「…もしかしてそれって」
「オメェじゃねぇ」
「………」
しかし冷たいこの男
かつての相棒と再会出来たというのに。常人で図るならば一瞬、動揺したのみ
それどころか今や、明確な殺意を示しているでは無いか天理柳犁。
「薄情どころか、こんなにも尻軽だったとは…僕の純情を奪っておいてよく言えるよ」
「純情どころか命奪ってんだがなぁ!つーか、今現在命の取り合い中だろうがよい」
平然と話してはいるがこの二人、現在進行形で斬り合いを続けていた
しかし一向に互いの攻撃が通ることはなく均衡、硬直中
「しっかし解せねぇな。さっきからオメェ、俺の剣素手で受けてるだろ?なんで切れねぇ」
「だから魔神を舐めないで下さいよ。人間基準の外皮強度じゃあないんですよこっちは、その悉くが人間を上回っている!」
「さっきからナチュラルに、俺の瞬間移動の速度について来てんだぁ…脚力も並じゃねぇな」
「それに…」
ここでウル・キース、動く!
「身体の仕組みだって違うんだよ!!」
鷲掴み!両腕は空いている、しかしその状態で柳犁の剣先を握り締めた!
「にゃにぃ!?脚で剣撃を止めただと!!」
「僕達お猿さんは四肢両用でね!腕にも脚にもなるんだ。つまりこの剣は、僕の脚から逃れることが出来ない!身動きも出来ないだろう…そして君は、一方的に僕の拳打を喰らうがいい!!」
間髪入れず繰り出されるは剛拳の連打!刀を持っているせいで両手の塞がった柳犁には回避不能!
そう、刀を持ったままならば!!
<<<バッ!!!>>>
「あっ」
拳打の打ち込まれた瞬間!即座に柳犁は刀を離し、身を交わした!
逆にウル・キースは、想定外の行動にバランスを崩した!!
「く!?武器というアドバンテージを自ら投げ出すだと!!」
「間抜けが!今のテメェを見てから言いやがれ!!」
一度バランスを崩したウル・キースも、すぐさま体制を立て直そうとするが…
刀が邪魔で思うように動けない!
「素手喧嘩だろうと…玉ぐらいは潰せんだろ」
<<<ゴスッ!!>>>
強烈!柳犁の蹴りが股間へクリーンヒット!!
これで男としての威厳は失われた!
「ヒィィィィ!!!!!」
「痛ぇなんてもんじゃねぇだろ…んのままもう1発、食らっちまいな」
<<<ヒュン!!!>>>
次いで柳犁の打撃、今度は顔を狙う!だが
<<<バシィ!!!>>>
「何!?防いだ…だと」
防がれた。的確に眼球へ向かって放たれた柳犁の拳がすっぽりと、ウル・キースの手の平へ収まっていた!!
「そんな…立ち上がってもいられねぇ痛みの筈、だろうがよ」
「リューリ…甘いんだなぁそれが。戦いにおいて急所を狙うなんて基本中の基本でしょ。そして、それに対策を立てるのもまた基本…僕の玉は片方たりと潰されちゃあいない」
『コツカケ』
古くより琉球空手に伝わる空手の技法のひとつ。
腹筋を巧みに操作し睾丸を恥骨の奥に引っ掛けるものであり、これにより金的は通じなくなる。
古の空手家は決闘の際、必ずといってよいほど、この『コツカケ』を使用していたという。
(Wikipedia調べ)
ちくしょう!なんか聞いたことあるぞ…つーか刃○読んできただけじゃねぇのかおい、テメェ!!
「それどころか今度こそ、身動き止められちゃったねぇリューリ」
がっしりと掴まれた柳犁の腕、微動だにせず!
「ホントだ。なんちゅう握力してんだよオメェ…まるで腕が、セメントにでもコーティングされてるみてぇだ」
「残念だけど、セメントなんてもんじゃあない。僕の握力はこのまま、君の腕を握り潰すことだって出来るんだよ」
「マジモンの握撃か…本当なら恐ろしいねぇ」
「じゃあ、やってみる?」
二人の右腕は繋ぎ合ったまま、その繋りを基準にしたまま
その高度は下がってゆく
「ルール…なんてなぁ決めなくていいか」
「勿論、敗北がそのまま死だよ」
「まず、テメェの腕をへし折る。そしてもう一度、お前を殺す」
「意気込みは良いね…でも勝つのは僕だ。だから次は、君が死んでくれ」
高度は0、柳犁達の立つ建造物の屋上一平面
始まりは均等に…そして合図は
二人の意志に
「「ドラァ!!」」
始まる、生死を賭けた腕相撲!!
「かぁ!!」
「ふん!やっぱり立ち上がりから不調だね、リューリ!!」
本来、手の平と平を合わせて力を比べる腕相撲に対し
ウル・キースが手の平、柳犁に至っては拳骨で勝負しようと言うのだ…当然、柳犁はベストコンディションではない!
「でも流石だ…スタートを反則とは言えない一瞬、早くしたことでまともにやり合うだなんて」
「たく、がっつり反則しようとしたのによぉ…反応早過ぎだぜ」
「それでも時間の問題だ。君に抵抗しうる余力が無くなり次第、この腕を捻り潰す」
ウル・キースの言うとおり、徐々に柳犁の腕は下がり始める
単純な力ではここからの巻き返しは期待出来ない、だが
この天里柳犁、端から真っ当に力比べをするつもりなど皆無!
「ほうらリューリ!もう君の負けだぁ!どんどんこの握った手の反発力がなくなってきたぞぉ!このままもう、潰されろぉぉぉ!!」
「やれやれ。分かったよ、マジだよ…たとえ俺が絶調だったとしても、単純なパワーで俺に勝ち目はない」
「今更負け惜しみかぁ!?無意味!最早、君の右腕は再起不能よ!」
「だからパワーなんて、入らねぇようにしてやらいいんだ」
「へぇ?」
既にこの時、ウル・キースの脚からも柳犁の灼羅桜邏は離れていた…
よってこの時点で、灼羅桜邏は柳犁の思うがまま!
「ブッタ切れ、灼羅桜邏」
<<<ヴィシュン!!!>>>
瞬間移動…灼羅桜邏の刃を、ウル・キースの手首の中へ!
「「かっ!?ガガガがガガガががガガガがギギギガガガがギガががぎごごごがけくくけくぐぐがががが!!!!!!!」」
「これだけ至近距離ならよぉ!俺の腕近く、たった数センチだが…それだけ近けりゃできる芸当だ」
「ガッあがががああああああああアアアアアアあああぎゃああああああああ!!!!!!!」
こいつがこの状況で、腕相撲だなんて馬鹿げた事に乗ってくれたおかげだ…
そうでもしなきゃ、こんなに近づけなかった。
つーか警戒されて近づけなかった。なんせ刀身よりも短い距離だ、いざ出来ても躱されるのがオチだ。
「情があったのはテメェだけだったって訳だ。この真剣勝負の真っ最中に、よもやおふざけに興じてくれるとは」
「ギギギッ!!カッ、あ…」
「ありがとよ、あいぼ」
<<<ジャキッ!!!>>>
「アギャアアあああああああアアアアアアアアあああああアアアアアア!!!!!!!!!!!!!」
刀を取り出す…
ただ引っこ抜くなどと生温い事は言わない、ぶった切った!右手首をそのまま!!
「リュウウウううううううウウウウウウウリリリリリリリリリリリリリリrrrrrrrrrrrrrrryyyyyyyyyyyyyyyy!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「と言っても、今ので俺の右手もオシャカだがな。薬指しか動かねぇ…まぁそれでも、香典にはちと足りねぇかな」
そして、左手で抜いた刀を天にかざす。
ウル・キースの外皮を切れはしない、だが、叩き潰すことは出来る!!
「じゃあな、脳みそぶちまけな」
「AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAARRRRRRRRRRRRRRRRRGAYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYBAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「うるせ」
<<<ダグオォン!!!>>>
叩き込まれる、脳天に、その一撃が!!
<<<ピキッ、キキキ!!!>>>
同時に崩れ出す。
とうに限界だったであろう、足場となった建物が…粉々と
トドメにウル・キースごと柳犁の斬撃を食らってしまえば当然、だろうか
だがウル・キースは止まらない。建物は壊れようとも、強靭な岩盤へ突き刺さるまで、真に頭が叩き潰されるまで!!
「………終わったな。頭は、硬すぎて割れなかったが」
「………」
「意識は、無ぇでくれよ」
ああ、どっと疲れた…
よーく考えたが、結局こいつがなんで生きてんのか分からず仕舞いよな(もう殺したけど)
どうにも『魔神』ってやつに何かあるらしいな、ヴァル然り
チキショウ…王国に女神、そして魔神。敵に回してぇ連中が多過ぎるだろ、俺。
「さて、と。こっち片付いたし、ハァリナの応援にでもいきましょうかね」
「待ってよ…リューリ」
が!?生きてやがったぜコイツ!!
いや…息を吹き替えしたのか。いやそんなことはどうだっていい!!
「テメェ…あんだけやられて。まだ死に足りねぇのかゴラァ!」
いい加減にしろよ!
もうニ度!俺はコイツを、この手で殺した…
「ああ、だったらもっかい殺してやるよ!今度こそ本当に甦れねぇように、塵一つ残しゃしねぇ!!」
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!」
「その辺にしておけ、ウル・キース」
「!?、テメェ…」
その男は突然と、ウル・キースの傍に現れた。
見知らぬ男。只者でないことなど、常人であれば有に感じ取れるだろう。
だがそれ以上に、柳犁はこの男のことを知っていた!
否、顔に見覚えなど無いが、面影は充分!!
「あんときの羊野郎…テメェが!」
かつて、柳犁と相棒を切り裂いた凶爪…ウル・キースを殺した張本人!!
咄嗟に柳犁の殺意はこの男を捉える。しかし男は、悠然と…
「貴様は…まったく、難儀なものだ。まさか、かつての相棒同士がここに、再び敵同士になるとは。同時に、互いに相容れぬ対象と…」
「うだうだ喋ってんじゃねぇ。来いよ、次はテメェの相手してやる」
「よさんか。先程の戦いで、既に利き腕の使えなくなった貴様では話にならん。それならばまだ、あの女神の方が危機になりうるものよ」
そうだ…ハァリナは、無事か!?
「…やはり気になるようだな、あの女神のことが」
目の前の敵から気をそらした柳犁
瞬時にその考えを見透かしたように語る、この男
「ならば退こう。このウル・キースに手当をしなければ、流石にマズイのでな」
「テメェ、待て!」
「名は残す。我が名は『アリエス・メーヴィル』…ここは黙って退かせてもらおう」
「待てって言ってんだろ!!」
呼び止めはするるが、内心柳犁は理解していた。
この腕で勝ち目はないと
だからこそ生まれた一瞬の躊躇…故に、その男を捉えることはできず
<<<グォン!!>>>
逃した。柳犁の瞬間移動にも匹敵する速度で、感知圏内を飛び出す
「クソが!逃げやがった…」
柳犁が瞬間移動で飛ぶ場所は具体的に指定しなければならない
デタラメに飛んでしまえば、どうなるかは柳犁本人にも想定出来ない…故に、相手の居場所を感知出来なければ実質、この能力最大の長所を潰されたことになる。
「…ウル・キース。まだ、生きてんだよな」
殺しきれなかった、殺せなかった。
言い訳する気もねぇが、俺も随分甘かったねぇ…
「だったら次こそ、本当に殺してやんなきゃな」
また、だが…勝手に約束させてもらう。
「お前は、俺だ…この血肉は紛れもなく、お前だ」
必ずお前を、全て喰らう…それだけを
柳犁が戦闘した場所から約数キロの噴水広場
人目の多いその地点でようやく、サーシャとミリエルを連れた男にハァリナが追いついた。
その長身の男はハァリナを認識するやいなや、気を失った二人を丁寧に広場のベンチに寝かせ、ハァリナの目の前へと立った。
「追いついた…けど。これはどーゆー事かしら?ねぇ」
「理解に困るのはこちらなのだが」
「ふーん、私のことはまだ伝わってないみたいね。それともアンタ単独でそれやってるとか?」
「愚問だ。我等が『八大天使長』たるもの、女神様の支持以外聞き入れる必要性がない。それは貴様もではなかったのか、ハァリナ」
この二人は知っていた、互いが何者なのかを。
そしてハァリナは知っていた、この男との相性は最悪だと。
「つーこた、私が抜ける前からこんなこと画策してたのね、あんのババァ」
「アルティレル様を疑うことは、天命に背くと同じ。それが何を意味するか、知らぬ訳ではなかろう…貴様なら」
「ええええ、わーってるわよ。御託はいいからアンタをぶっ飛ばす!結局は腕力が物を言うのよ」
「問答無用と来たか。まあいい、元よりこちらも問答を交わすつもりはない。最優の女神の力、とくと味合わせていただこう」
「さぁ!覚悟決めるわよ、私!!」
次回予告
ハァ:ようやく来ちゃった、私が頑張らなきゃならない展開…
リュ:…なんか冴えねぇ面してるな。
ハァ:そらそうよ!最初から私は戦闘向きキャラじゃないってのに、なんでこんなことしなきゃいけないわけ!
リュ:ま、どーせ途中で俺が乱入して全部持ってく流れだろうし。そこまで心配せんでもええんじゃない?
ハァ:その全てにNO!と言ってやるわ…それ私の活躍ないし、確定で私ボコボコにされるじゃない。
リュ:そーゆー乱入すると、俺にもヘイト向くしな。いっそ放置するって手も。
ハァ:それこそ主人公失格よアンタ!まぁいいわ…ともかく、なんとか頑張って見るから。
リュ:おう、頑張れ。
ハァ:つーことで貴方達!次回はこの私ハァリナを、誇って讃えて拝みなさい!!
次回 女神と天使
リュ:誰に言ってんだ…




