第14話 母のぬくもり
前回までのあらすじ
異世界から転生して来た私、最高最善最強生物天理柳犁さんは…最愛のヒロインを守るため、国を丸々敵に回した!
熾烈極まる愛の逃避行
だが俺はけして諦めない!確かな希望がある限…
ハァ:いや何言ってんのあんた
リュ:ハァリナてめぇ、あらすじ中勝手に台本以外のことしゃべってんじゃねぇよ
ハァ:いやあんたこそ台本に書いてないでしょうが。何が国相手の逃避行よ、ただ尻尾撒いて逃げただけじゃない。
リュ:あぐ…
ミリ:ついでにヒロインって誰のことですか?誰ともそんなフラグ立ってませんけど。
リュ:あれミリエルちゃん。そんな酷いこと言う子だっけ君!?
ハァ:ともかく、格好良く始めようとか思ってるんでしょうけど無理だから。あんたそーゆーの向いてないから。
リュ:にゃにおぉ!?俺だって主人公らしくしていいじゃねぇか!
ハァ:とゆー訳で、シーズン2も相も変わらずやってきまーす。それでは、どうぞ。
リュ:収集つけねぇのは相変わらずだよまったく
どわぁああああああっっっふ!!
なんだこの移動ゲート!?とんでもねぇ揺れるぞ気持ち悪!!
「ああああああああああああっふぁい!!」
<<<グキィッ!>>>
首の折れる音
どうやら勢い良く地面と正面衝突したようで、無事では済まないだろう
「痛!頭ぶつけたじゃねぇか…」
…しぶといようで、何一つ外傷もなく立ち上がる柳犁
だが
「やべえ昼飯が上がってき…」
<<<ドガシャ!!>>>
「ふぼぁあ!」
後続の娘三人に押しつぶされる
「はぁ~♪楽しかったね!もっかいやろう!」
「そうだねそうだね、なかなかスリリングでヒヤッとするのがいいわよね!」
「まったく…この程度で満足するなんて、まだまだお子ちゃまねぇ。もっかいやりましょ」
「とゆうことでリューリよろしく」
「やらねえよ」
柳犁をも酔わす程の揺れを感じながら、微動だにしない娘共
「わー、広いね!この草原」
「一面真緑で空気が美味しい~」
「これは…ハリアー草原、つまりここは『カリート』ね」
この3人の中では、1番まともに状況を分析してくれた女神さん
「ここがどこか分かるのか?」
「一応元女神様ですから、多少の地理くらいわね。ここは『カリート』あんたらのいた王国のある『バイルランド』とは大陸自体が違う『ウェバーランド』の田舎町、相当離れた場所に飛ばされたわね」
へえ、仮にも女神様か
この世界のことならなんでもお見通しってかい
「王国からそーとー離れてるってこた、しばらくは追われる心配もなしか…良かった、ゆっくり出来そうで」
「確かにさっきまで居た王国からは離れてるけど。逆に言っちゃうとここ、魔王領に近いのよ」
「…別に敵対してねーしいいんじゃない。それどころか、同じく人間の王国を滅ぼそうってんだ。むしろ協力してくれたり」
「無理ね。仮にもアンタは魔王を倒しに来た異世界転生者。そんな奴の提案、こっちの事情関係なしに即お断りでしょうに」
なるほど、いらん脅威になりえる訳か…
てか魔王とかいたな
元はそれ倒すのが目的でここ来たんだよな、俺
「ねえ、リューリリューリ!」
「なんだ、なんだ」
サーシャ…あのいざこざの直後だってのに、コイツが元気なのは変わらねえな
つーかほぼほぼ今回の元凶、コイツではあるんだが
「お腹減った」
「おまんそればっかやな」
だが俺も腹は減った、昼飯からなにも食ってねえからな
しかし、もう日も暮れそうだし、近場に飯店があるとも考えにくい…つーか人工物らしきものが何1つ見当たらない
「ここから街に向かっても半日はかかる距離よ。どうしましょ、私もお腹減った」
「それどころか寝床もねえぞ」
まあ、俺は野宿慣れてるが…ミリエルもか
それでも女を野晒しってのはあかんやろ。大方の奴は嫌がると思うが…思うんだが…
「寝床はいいんじゃない?野宿すれば」
「私は、野宿でも大丈夫ですよ。お兄ちゃんとよく2人でやってました」
「わーい、キャンプだー!」
この子達たくましっ!!まあ、それでいいならそれでいいでしょうけど…
「分かった、野宿決定だな。だけど飯の方はどうにもできんぞ…頃合いの獲物でもいねー限り
「だったら、あれなんていいんじゃないですか」
そういって丘の下の草原を指差すミリエル、あれは…
<ガッギュポアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!>
<バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!>
なんだあの生き物、動きキモッ!しかも群れか!?滅茶苦茶な数いやがる…
一面緑の草原に、これまたびっしり敷き詰められた紫色の怪物…
どろっどろの体表に、嘴らしきものも生えてる
しかもこの距離でこのデカさ…一匹、2〜3メートルはあるぞ
「あれは…『ひぽギュら』ね、ああやって集団行動を主にする鳥類寄りの両生類…頭はさほどよくないから、捕獲は容易。さらに味も悪くないから、安価で取り引きされる地域住民御用達の食材…1度食べてみたいと思ってたのよね〜」
コイツ、これからこーゆー解説のポジションで立場を安定させていく気か…
つーか食材って。はなっから生物として見てへんがな
「ええ!?美味しいのあれ!!」
「ですね!ゲテモノほど味は良いです!」
何故男の俺が見た目のキショさにちょっぴり引いてるてのに、この子等は味がいいってだけであれ食おうとしてんの!?
「…まあ、あれだ。食えば都ってな!」
「住めば都でしょ」
<ガキュガキュアアアアアアアアアア!!!!!!!!!>
<ガッキャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!>
草原を爆走するひぽギュらの群れ…その幾百もいる群れの前へ恐れることなく立ち尽くす女が、ここに一人
「ほう、これだけの大群で…ご苦労様ってこったい!!」
<<<ギュン!!!ドバアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!!!!!!>>>
瞬間!爆発的な光の柱が、柳犁達の目の前に突如として出現した!
「!?、なんだあの光…ひぽギュらの群れがいた方から」
「超高密度の魔力…先を越された!?」
先を越されたって…俺達以外にもひぽギュら狩りしてる奴がいるってのかよ…
「ええ、ひぽギュらやられちゃった?美味しいの無し…」
「待ってください…少ないですが、群れがこっちに向かってきますよ!!」
!?マジだ、突っ込んでくる!
<ギャアアアアアアアス!!!!!!!>
先程の半分にも満たないが、確かに柳犁達の所へ向かって狩り残しのひぽギュらが突撃してくる。
ここで柳犁は、これを逃しはしない!
「『灼羅桜邏』!!久々に暴れるぜ、とうっ!!」
まず空中にジャンプした柳犁
そこで突っ込んでくる群れ全体を捉え…
美味しくほぐそうってね
「『残影』」
<<<シュン!!>>>
斬撃のパワーをそのまま飛ばした
黒くて影っぽいから『残影』ってな…どうだ、かっこいいだろ?
<ヒギャアアアアアアア!!!!!!!>
見事命中!群れの大半を凪払った!
でもまだ生き残りがいるなぁ!?
<ギャスギャスギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアス!!!!!!!!!>
せっかく二度も生き永らえて、どうにか自分だけは生きてやろうと必死になってるとこわりいが…
「獲物を仕留め損ねるつもりは無いんでね、残影・裂破衝っ!!!!」
<<<グギャアアアアアイイイイイン!!!!!>>>
俺の刀から離れた残影の更に残存パワーを噴出させたっ!!
ひとたまりもねえだろうよ!
<ガララララララララアアアアアアススススス!!!!!!>
ばっちし、仕留め終わったようだな!
どうだい女子連中!中々に輝いた活躍っぷりでしょう、僕ちん
「わーい、ご飯が大量だー!」
「これだけあれば、丸焼き、煮込みに干し物…なんだって出来るよ!料理のレパートリーが増えるね!」
「ひぽギュらの背びれから作った『ひぽギュら酒』も美味な逸品と聞くけど、でもまず醸造の仕方を知らないからどうしようも…」
あの皆さん!誰1人も僕の活躍を見てくれてないんですねっ!!分かりました、拗ねます!
「その中でも煮込みがオススメだよ、元々皮が固めのひぽギュらだ、煮込むのがシンプルに食べやすくなるのさ」
この声は…女性の声?
柳犁達へと話しかけて来たこの女性
彼女こそが先程、ひぽギュらの群れを半壊させた光の根元である
「どうもあんたら、ひぽギュら狩りは初めてのようだが、結構やるじゃない。1匹も逃さず仕留めるなんて」
おっほうっ、ナイスバディ!…じゃなかった!
「あんた、1人でひぽギュら狩りを?女性1人じゃ大変そうな仕事だが…」
「ガキに心配されることじゃないよ…それより、その量のひぽギュらを1人締めする気かい?」
…確かに量が多過ぎだ、調子に乗りすぎたな
自分で食える分だけ狩れと、散々オルテンシアさんに言われたろうに…
「そーさな…なんとか今夜中に食い切れると良いが」
「言っとくが、ひぽギュらは特定の方法で保存しないと直ぐに腐る。今すぐにでも取り掛からないと、ね…素人には知れたことじゃないがね」
マジかよ…今すぐ食わな!
「ただし、そのひぽギュらをちょこっと分けてくれんなら、保存方法とついでに美味い食い方を教えてやるが…」
取り引き、か
なるほど美味しい条件だが、ここは出来るだけ値引いてから条件を飲んでやらな…
「ええ!?美味しい食べ方!ねえリューリ、ちょっとぐらい分けてあげようよー!」
「そうですよ!どうせ腐らせるくらいだったらそっちの方がいいですよ!」
「地元住民…『ひぽギュら酒』が飲める可能性あり…乗った!!」
君達!?もっと交渉の余地があるだろう!!…まあ、それでいいか。元より交渉うまくねーしな
「いいぜ、このひぽギュら分けてやる。ただし、ついでに寝床になりそうな場所も教えてくれ。自然に生きる狩人ってんなら、ここら辺の地形を理解してるはずだ。こちとら本日泊まる所がないもんでね」
「なんだい、寝床もないのかい…どれだけ無計画な旅路かねだったらうちに来な、今夜は泊めてってやるよ!そんで美味いひぽギュらを、たんまり食わせてやる!これも何かの縁だしね」
っな!?ラッキー!宿までゲットできたぜ!
…てか親切過ぎる気が。いや、人の親切は有り難く受け取れってな!!
「サンキューな、おばちゃん!」
「おばちゃん言うなし」
草原から多少離れた山中。
そこにあるおばさんの住居、木組みだが立派なお家に俺達は居る
「そうかいそうかい…王都からこんな田舎町へわざわざ旅行に来たってのかい」
「そうなんですよー。そしたら道を間違えるだなんだで、こんなところへ…でもおばさまのおかげで助かりましたわ、本当に感謝感激です」
道に迷った程にして、ハァリナに話をつけてもらってる
コイツの外交的な能力は相当だ、こんなに役に立つとは…(戦闘以外)
…その他と違って
「ガフガフ!フフガガフ、ハハハ!(※美味しい!美味しいよこの料理!)」
「グハ!フフフガフガ、ググフヒハグハグ!グガガハ!(※うん!特にこの角煮、とろっとろだよ!最高だね!)」
「飲み込んでから喋れい!ったく、せっかくこんな美味い料理を振舞ってもらってるんだ…少しはお行儀良くしてろ」
「フガー!(※はーい!)」
いーや明らか飲み込んでへんでしょうに…
んま、かっこみたくなるくらい美味ぇのは分かるけど
「ねえリューリ。おばさまに会うまで本当に大変だったんだからね!」
「おう、フガガハフフヒホフグヒヒゴグ…(※本当に一時はどうなることかと…)」
あっ、俺も人のこと言えねえや
「かー!しっかし久々に美味いひぽギュら酒が飲めた、上機嫌!んで、どれだけ滞在するつもりだい?こんな田舎に」
「そうですね…しばらく、はっきりとは決まっていません」
「その間、泊まる宿なんかは?今日すらなかったんだろ、なんなら国に帰るまでうちにいなよ…山奥でなんにもないけどさ」
「本当ですか!ありがとうございます、おばさま!」
「まぁね。1人で居ても、いい加減寂しいと思ってたしね。本当、あんたたちと会えて良かったわ」
しかもしばらく泊まってもいいと、このおばちゃん太っ腹!
「ごくん!スッゴいおいしかったです、このひぽギュら!アマンダさん、料理お上手なんですね」
そうだ、この人『アマンダ』さん
孤高のハンターアマンダと自分で豪語するお方
特徴的なのは、花京院顔負けの前髪の多さ…纏まってはいるが自分のお胸にまで垂れ下がっている、緑色の美しい髪の毛…しかも半分丸刈りというなんとも言えないヘアスタイル(お前が言うな)
「当たり前よ、何年この地域に住んでひぽギュら食らってきたと思ってるんだい。言っとくが、街に出ても私以上のひぽギュら料理人はいないよ」
つまりこれがこの世で1番美味いひぽギュらと言うわけか
確かにうんまい
「ごちそうさま!おーいしかったー!!」
早っ!!気づいたら俺の持ってる肉しか残ってねえ!?
相変わらずの食欲だな、サーシャちゃんよぉ…
「あら、食べ終わるのが早いねぇ若い子は…元気に育ってる証拠だ。じゃあ食うもんも食ったし、ちょっくら近くに沸いてる露天風呂にでも入りにいこうか」
!?っちょえふまえ!ふふふふふふふふ、風呂だと!?
この瞬間、柳犁は爆発的にある結論を導き出した!
「ええ!?お風呂、やった!これで体中サッパリできるじゃああーりませんか!」
「わーい!お風呂、行く行くー!」
「かっかっか!そうさね、女の子はお風呂入れにゃ、やってられんわよね!!」
これってあれですよな、覗きイベントだよな!いいのか…見ちゃっていいのか!?いや覗けって神のお告げですよな!!あ、神サーシャだった…
だがよし!どうでもよし!その"ふつくしい"裸体が拝めるなら…装飾のない、生まれたままの姿をさらけ出すと言うのなら!!
男柳犁!しかとその眼ん玉に刻み付けましょうぞ…
必ずやその裸体をと
女共が風呂へと向かう間、既に完璧と言えるまで気配を経つ柳犁…が、ここで予想外の事態へと
「さてと…物置からタオル取ってこなくちゃだね、出て直ぐの場所にあるから先に入っといで」
「ですって、行きましょう!」
「何だかんだ風呂には入りたかったからね、おばさまに感謝ってことで」
「よーし、行こう!…あれ?リューリどうしたのー、置いてくよ」
「へっ?あっ…ブーー!!!!!おまえ今なんて言った!?」
「なんてって?お風呂入らないのー?気持ちいよ」
「そうじゃない、そうだけど、それって!?」
「一緒に入るってことよね、それがどうしたの?恥ずかしいのかしら、男の癖に」
いや恥ずかしがるべきはあなた達のほうでは!?
なんでっ!?へっ!?これは…こいつ等に羞恥心ってものはないのか!?
「何を男がぐだぐだ言ってるんだい、うちの旦那かいあんた。つくづくあんた等男ってのは、女に恥をかかせる気かい」
「滅相もございません、何一つ文句もございません、喜んで混浴させていただき頂戴いたしやす」
なななな何を同様してるんだ俺は…
行けっつってんだぞ本人たちが!もうなんでもしてくれるって言ってんだぞ!(なんでもするとは言っていない)
良く考えろ、こんな出来レース滅多に無いぞ、見せてくれるって言ってるんだ、存分に見て、揉んで、吸ってやればいいじゃないか…やってしまえばいいじゃないか!!
そうだ、この体の震えはただの武者震いだ!期待で体が待ちきれねえんだよ…
「はい!今、直ぐにも行きます!」
やっべぇ、これやっべ、まじやっべ…たあまりませんなデュフフフフフ
いや、でも恥ずかしがってる女の子を覗いてその背徳感を味わうのが楽しいのであって、逆に見せつけてくるような恥も外分も無いアマを見くさった所で興奮が半減と言いますか
だからこそ覗くだけじゃ飽き足らないのだろうか、俺の人生はこれから…
「気ーーんもちいーーー!!やっぱり露天風呂は最高だね!」
「もーうそりゃ、天然の温泉だからねー!身体が芯から温まるぅ!」
「はぁー、これは…今までにないポカポカ加減、いい温泉よこれはー」
「わぁ!空見て空!お星様が綺麗だよー!」
「きゃっ!もうサーシャ!急に立ち上がってお湯を浴びせるとはよくもやったわね、えい!」
「やっ!んもう、そっちもやったなぁ…そりゃそりゃ!」
「ニャッハハハハハ!あんたたち、はしゃがないの、外から見たら大事なとこ全部丸見えよ」
「ブクブクブクブクブクブクブクブクブクブクブクブク」
直視できねー
目の前で天女逹がきゃっきゃうふふしてんのに、美し過ぎて見ることすら出来ねぇぞ俺ぇ!
つーかなに、さっきからあの湯気
あの見事にデリケートゾーンだけをカバーするかのような密着…明らか俺に敵対する何かの作用が働いてるでしょうが、俺の邪魔してるでしょうが
アカン…マジアカン…ドゲニカセント☆マリモ☆デキヘンタイ
「ちょっと」
「あん?なんだ酔っ払い」
ハァリナ…どーしたいきなり
別にコイツの裸体は興味無いってのに何の用だ
「あんたもう限界とは言わないわよね。たったの数分しか浸かってないのに…こんだけでのぼせたの?顔真っ赤よ」
「うるせぇよ。テメェこそ酒に酔ってデロデロじゃねぇか」
「ニャハハハハ!そうとも言う!しっかしあんた、こんなベストでグッドなシチュエーションで手ぇ出さないと来た…どこまで奥手なの」
「バッ!バッキャロォ!おまえ…手なんざつけう、付けられるわけなかろうが!!」
「正解!ハハッッハ!あんな上玉をキープすらしないと!あ、童貞には無理か!ダッハハハハ!」
ちくしょうこのアマぁ、人のことおちょくりやがって…
女神っつーから年齢不詳とは言え、こんなちんちくりんが年上なのも腹が立つ!ちっぱいには興味ねえんだよ!!
「なんなら~。お姉さん相手してあげよっか?」
「黙ってろアバズレ」
「じゃ、エスコートは任せてもらいましょうか。2人共!この酔っ払いに絡まれた、哀れな童貞を救いたければ、こっちへいらっしゃい!」
「テメェ!?何ほざいてんだこのヤロー!!!!!」
「へぇ?どうしたのハァリナー!」
「サーシャ!くるな!来ないでく…」
ともかく逃げろ…こんなテキトーなシチュで俺の初めてを失っていい訳がねぇ!
<バッシャアン!!>
「大人しくしときなさいよ。まぁ、もう少しで大人になれるからさぁ!」
お湯に沈められた!ちくしょうなんでだ!力が出ねえ!
はっ!この事態を感情は拒絶している、なぜなら俺は童貞だから、耐性が無さ過ぎて過剰反応を起こしているんだ!
しかし本能が気づいた!これは生物として最も大切な『種族の繁栄』に基づくものだと!
だからこそ受け入れろと、生物としての生産性を、この俺に見出せと!
「ハァリナ、リューリ!今行くよ!」
来た、覚悟を決めろ天理柳犁!受け入れろ、己の運命を!今、ここで!真の雄となるのだ!!
<<<バシャン!!!>>>
「「「ガアアアアアルウウウウウウウアアアアアアアア!!!!!!!!!!!」」」
俺の本能よ全て!今この時の為にあり…飛びつけ!!
「湯に浸かったまま、これだけの跳躍力を!」
「わー」
今だ!食らいつけええええええええええええええ!!!!!!!!!!
「「「ルッシャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」」」
「「「とうっ!!」」」
<<<ドズン!>>>
「グベッ!」
あれ…何かにぶっ飛ばされて、え?
<ガンッ!>
あ岩に当たって…だめ
<パタン>
柳犁…撃沈。夢半ばにて
「あ、リューリ気絶した」
「まったく…こんな夜中に猛獣が出るたぁね、怪我はないかいあんたら!」
「あ、おばさま」
猛獣の如く飛びついた柳犁を、正しく猛獣と捉え殴り飛ばしたのは…おばさま
「おばちゃん、あれリューリだよ」
「おばちゃん言うなって、え?さっきのはあのボウズだったのかい…まさしく野獣の気を放っていたが」
「急にどうしたんでしょうね?なんか叫び出してましたけど」
ピクリとも動かない柳犁
しかしそれを心配するものは皆無、皆気にせず柳犁を放置した
「ま、なんでもいいさね。気絶しちまったみたいだが、そのうち目覚めてくるだろう…それよりあんたら、どうだいここの湯は、気持ちいいでしょうに」
「うん!もう心も体もぽっかぽかだよ!サイッコーに気持ちいいよね!」
「はいはい!身体の芯からあったまりました…やっぱりお風呂はええですね」
「でしょうね〜。温泉ってな、そうじゃなくっちゃね。よいしょっと」
そしておばさま波たてず、ゆっくりと湯船へ浸かる
「ホント…こーんな温泉まで入らせてもらっちゃって、おばさま様様ですわ〜」
「いやー、ちょうど家のすぐ側に温泉が湧いてて良かったわよ。これのおかげで山籠り生活も苦じゃなくなったしね」
「ここって相当、町から離れてるんですよね。どうしてアマンダさんは1人でこんなところへ?」
そう聞くとアマンダさんは
悲しそうな、どこか懐かしそうな顔で月夜を見上げた…そして
「ほんっと昔ね、無性に1人で過ごしたい時期があったのよ。そんで思い切ってここへ越してきたら、案外住み心地が良くってね…そっから10年以上住み着いちゃった」
「…何か、不味いこと聞いちゃいました」
「どうしてだい?」
「だってアマンダさん…悲しそうな顔、してますから」
「辛気臭いって?ごめんなさいね…そんな顔してたのね、私」
「そんな!こっちこそです、謝るのは」
「まあ気にしないで。割り切ったつもりでいたけども…やっぱりこれだけは、ね」
そう、笑いかけるアマンダだが…やはりその笑顔にも曇りがある
ミリエルはうつむく、その気まずさから
「なーに黙っちゃってんのさ。ただの年寄りの思い出話、そして勝手に思い出に浸ってるだけ…なんなら、つまらないけど話たげようか」
「え?そんな…あまり思い出したくない話なんじゃ」
「いいっての、そんなかしこまらなくったって。丁度慰めも欲しいしね」
「…分かりました」
アマンダさんの…思い出話
あんな悲しそうな顔してたんだもの、決していい話じゃない…思い出したくないはずの話なのに
「ミリエル~ばぁ」
と、ミリエルが一人思い悩んでいる中
サーシャが水中から飛び出して来た
「サーシャ、素潜りやってたの!?」
「う~ん、ハァリナと一緒にね」
ハァリナと…そういえばさっきから姿が見えなかったけど
「先に出ちゃった方が負けなんだって~負けちゃったけど。ハァリナ強いんだよ~、ずっとそこでね」
サーシャが指差す、その先にはハァリナの背中のみが水面に浮上していた
「すごいよすごいよ!あんなに真っ赤になっても上がってこないんだよ!」
「サーシャ…いつから素潜りやってたの」
「ずっと。なんかハァリナが一人で素潜りしてたから一緒に」
「サーシャ、それはね、てかあれはね。土左衛門って言うのよ」
いい感じに茹でられてるなー、なんて考えていたミリエルだったが
流石に助けなければなと思い、ハァリナへと近づいた
「あれ、ミリエルそれ」
ここでアマンダさんも、現在起きている事象に気づく
「ハァリナ~大丈夫~?」
「よしサーシャ。これ持って、一旦湯から出そう」
「合点」
「ハァリナじゃないの。まさか、酔いつぶれちまった訳じゃないだろうね」
「誰が酔ってるってのよ!」
湯から引き上げたら突然、ハァリナが目を覚ました
「良かった~、まだ意識はあったのね」
「応よ…誰がこの程度で酔いつぶれるってんですか旦那。まだまだ一升瓶足りねぇっての」
目は覚ました、が
その精神テンションは酔っ払いのそれである
「完璧出来上がってるじゃないの」
「やかましゃあ!も~うここには酒がないんだってね?だったら私上がるわ」
「いってらっしゃ~い」
湯から上がったハァリナ
そこから千鳥足で、アマンダの家を目指すのだが…
「フラフラじゃないの。付き添いなくて大丈夫かしら」
「じゃ私いくね。もう上がろうと思ってたし」
「あらサーシャ。なら頼んだわよ、あの酔っ払い」
「りょーかい!」
「おぼえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
「あ、吐いた」
「…結局、サーシャ一人に任せて良かったのかしら」
「問題ねーですよ。あの子しっかりしてますから」
あの後酔っ払いの面倒をサーシャに託し、風呂に残ったこの二人
「しっかし悪いね。長話に付き添わせちゃって」
「いえいえ。こちらも聞けてすっきりしました」
そして、先程アマンダの顔が曇った理由
旦那が家から出て行った、という話を聞いたミリエル
「まったく。あんたも嫌な男にだけは引っかかるんじゃないよ」
「はい。そこの目利きだけはしっかりしてますから」
「…そうね。家族ってのはちゃんと、揃っていたいもんだからね」
「ですね」
「あんたも居るだろ。故郷に残してきた親御さんが」
「いえ、私に親は…」
「居るさ、きっと居る。あんた等をほっぽっちまうような酷い親がね」
「………」
心は分かっていた、その意味を
ただそれを言い出せずに、心の奥底に押し込もうとしていた
この温もりを
「なーんか。結局私から辛気臭い話ふっちゃったね」
「そうですね…もう出ましょうか」
「あいよ。ありがとうね、ミリエル…」
「ふぇ?なんか言いました?」
「なんでもない。さあ早く体拭かないと風引くわよ」
分かってます、分かってはいます
でも言える訳ねーです。今私達が何をやっているのかを考えれば
「はーい…あれ?何か忘れてはいけないものを忘れているような…まあいいや」
「ぶええっくしゅん!!ああーーー!!風邪引いちまったなあ、こりゃあ!ちきしょう、家はどこだよー暗くてなんも見れねーよー…ああ!この野生のクマ公!俺のことぶん殴りやがって、覚悟はできてんだろうな!!って」
「「「…さみいいいよおおおおお!!!」」」
夜も更けるころ
盗人たぁ言わせねぇが、随分不健全な時間帯だーねこりゃ
「やっと付いたなー、ておい…ここが一番近い街じゃなかったのかよー。歩いて十分もかかったぜぇ。もう丑三つ時だよ?」
「いや…いつまでたっても支度してこなかったのあなたじゃないですか」
「そんな厳しいこと言わんといてーな」
もっとも、無理矢理コイツを外に引っ張り出したの私なんですけどねぇ?所見さん
「まー観光気分で周りましょ?どーせ一日一夜の夢物語、楽しんだもの勝ちよぉ」
「…約束、忘れてませんよね」
「分あってるって。そのための仲間探しにここ来たんだから」
「昔のお仲間さん。手をかしてくれるといいですけど」
「たりめぇよ!あいつ等と俺との絆は無限大」
我等DEAD END5,s、再集結の時よぉ!!
次回予告
そんな…
「久しぶり、リューリ」
そんな訳がねえ!
「風邪でやられちまった、か。んなら、どれだけマシだったか」
生きたかった
「ここで諦める気?」
死なせたくなかった
「だから次は、君が死んでくれ」
俺は、今あるものを守りたい!
「亡霊が…消えろ」
次回 『摂理』
「お前は、俺だ」




