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神殺しの龍拳  作者: 桐ケ谷緋乃進
花札編
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36/61

36話

リオルとヨサンは里を抜け出してお迎えの軍用船に乗り、南朝連邦まで向かっている最中の船内。

来る日に向けての作戦会議も迫る中、ヨサンの中には迷いがあった。


エンジン音と船が波を乗り越える音が激しく聞こえる。


ヨサンが深く俯いている。

それを見たリオルは少し申し訳なさを感じた。わざと間違わせたのは事実。

だが、あの白い少年の体内には既に魔力汚染が始まっていた。


生物リミッターを一度解除した人間はもう既に死んでいると同義だ。


リオルが言う

「んあ....ヨサン....ごめん...傷つけちったか?さっきの....」


ヨサンがうつむいたままつぶやく

「私は....戦争のために生まれてきたんだもん。」


リオルは眉を顰める

「んん....そうだな....」


ヨサンが言う

「戦争のために生まれた僕は、戦争が終わったら、何のために生きればいいんだもん?」


リオルも少し俯く、その後すぐに顔を上げて言う

「んなん。おもっきし楽しむために決まってんだろ!!」


++++++++++++++++++++


雨冬くん。雨冬くん。どうして私を置いていくの?

私はあなたと一緒が良かった。


ずーっとそれが良かった。


彫帝里内にはまだ人が残っている。

聖遺物を奪われた雨冬と雨冬を守れなかった椿。


雨冬の肩を激しく揺らしながら椿は必死に雨冬に語り掛ける。

「雨冬くん!雨冬くん!死んじゃダメ!!」


雨冬が倒れている状態のまま言う

「椿さん....ありがとうございました。攻撃を避けてくれて。」


雨冬の服に雫がこぼれる

「どうして....どうして...君が死ななければいけないんだろう?」




幼いころの椿は施設の屋上でボーっと空を眺めているような子供だった。

青いに浮かぶ雲。その雲の形を眺めて一日一日をつぶしていた。


その時、屋上に誰かの気配がする。

どうしたものか。この屋上は立ち入り禁止の場所。掃除の職員ですら立ち入れない。


屋上に出るための扉がゆっくりゆっくりと開かれる。その開かれていく扉をフェンスの前で座り、風に髪を揺らしながら眺めていた。


その時、扉の向こうからは青い髪の少年が現れた。

椿が言う

「あなた....ここに来ちゃだめですよ。」


雨冬が丁寧に手を前に組んで椿の元へと歩き出す

「そうですね。ですがそれはあなたも同じでは?」


椿は雨冬から目を逸らして再び空を眺めだす。

「そうですね....」


雨冬は椿の横に座り、一緒に青空を眺める。

その時椿が質問を投げかける

「どうして君はここに来たの?」


雨冬は椿と同じように青空を眺めながら言う

「毎日聖書を何ページも読まなければいけないですよね。ですが、時々僕はそれがめんどくさくなっちゃって。いつもこうやって青空を眺めているんです。」


椿はふーんとでも言いたげな表情をする。

「奇遇ですね。私もまったく同じ理由です。」


雨冬が言う

「それは良かった。」


椿が一息を吐く。まだ春の序盤。暖かくなり始め、寒さの余韻が消えている。

「はぁ。あなた。名前ありますか?」


雨冬がうんうんとうなずきながら言う

「はい。ありますよ。雨冬杏樹と言います。」


椿が言う

「私はね。毎日お昼休みに花瓶の水を変えていたんです。その時にね。施設の職員さんが『椿ちゃんが毎日花瓶のお水を変えてくれているから、みんなは綺麗なお花を見れるんだよ。』って言われたんです。その時ですね。初めて私が9番じゃなくて大友椿になれた気がしたのです。」


雨冬が言う

「こうやって空を眺めているほうが、自分を感じますね。」


椿は目を軽く伏せて深く瞬きをする。

「まだ....ここで会えますか。」


雨冬が言う

「会えますとも。聖書を読む時間がある限り。」

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