10話
大領帝国首都:栄天
建国パーティー当日 7月30日
赤いカーペットに白い壁、金色の装飾が施されている
壁には絵画、天井には大きなシャンデリアがつるされている
華やかな服を着た女性、タキシードを着た男性
いずれもよくわからないけど多分なんかすごい人なのだろう
沢山の人がいて、華やかながらその裏には華やかさとは程遠いものがある
そんなパーティー会場でメイド服姿の少女たちが零華に続いて歩いていると
タキシード姿の眼鏡が見えた。
こむぎがつぶやく
「あいつ相変わらず男装似合うな....」
りんなが言う
「かっこいいよねー♡」
まあ、男だと思われてた方が都合のいい時もあるからね。この世界では
よく見ると翔の手の形が不自然。
恐らくなんかのサインだろうか
よく見てみる。
「10分後 トイレ」
10分後トイレね。まあここは私の仕事じゃないかな。
そう思いこむぎはりんなをちらりと見る
そうするとりんなはコクコクとうなずく
こむぎとりんなの前を歩いていた優香と祈の反応はまだない
優香が翔のサインに気づいていれば、任務はもっとスムーズに進む
優香が周りを見渡している風に少しだけ後ろに振り向こうとした時
祈は優香の手を強く握った。
それに優香は驚いたのか、あるいはそうではなかったかもしれない
だが、目を見開き、祈に何かを伝えようとしていたようだ
その何かは祈自身もわかっていた。
彼女はその目を見たとき、次の息を吐くよりも前にあっさりとその手を離す
優香は小さく、あまりにも小さく言った
「ごめん。」
後方から声が聞こえる
「すみませーん葵さーん♡」
葵が言う
「どうした。」
りんなが言う
「少しおトイレに行かせてくださーい♡」
葵が言う
「突きあたりを右だ。」
優香が言う
「私も行かせてください」
葵が言う
「そう。好きにしな」
零華が言う
「ふん...あれほど言ったのに、迷子にならないでよ。」
そうすると列からりんなと優香が離れ、トイレへと向かっていく
++++++++++++++++++++
コッコッコッ、と革靴がカーペットを蹴る音が聞こえる
そうするとトイレの扉が開き、照明がチチチと音を立てて照らす
もし翔がロイヤル・ワトソンのトイレに行く時間を計算していたとしたら....キモ....いや、おかしいよ。
トイレに入ったワトソンはまず第一にトイレの鏡で自らの髪の状態を確認するように鏡を見合わせる
一歩、一歩、その踏み出した瞬間
ワトソンの体が宙に浮く
「んぐぐっっ!?!?」
声を上げる隙も見せない程....いや
それよりも早くりんなの手が伸びていた
ワトソンがトイレに入るよりも前、その時から既にりんなと優香は
優香の得意な重力魔法によって重力を反転し、天井に張り付いて待ち伏せしていたのだ
優香の重力魔法によって低重力にされたトイレ内は
非魔法使いであるものならばその場から逃げれる人はほぼいない。
ワトソン自身は、そうである人間ではなかった。
りんながワトソンを首からつるし上げている間に優香は窓枠を外して
着実に死へとカウントダウンを始めていた
その瞬間、勢いよくワトソンとりんな、優香は窓から吸いだされるようにして
外に放り出される。
その一瞬の出来事にしてワトソンが悟れることは
「死」のみだった。
++++++++++++++++++++
こむぎがボーっと人だかりを眺めていると
祈の肩がトントンと当たってくる
こむぎが言う
「どうしたの...」
祈が言う
「今...何が起こっているのでしょうか。」
こむぎが言う
「不安にならなくてもいいよ。私、あいつらが失敗してるとこ見たことないから。」
もし、失敗しても、私がなんとかするから。
そういていると会話をしている零華の姿が見える
青い綺麗な髪、髪飾りをしていて身に着けている水色のドレスと似合っている
そんな零華と会話しているメイド長ことミク先輩。
ミクが言う
「は~い、あーんしてくださ~い」
零華が大きく口を開ける
「あ~ん」
え?え?え?え?え?え?え?え?え?
は?え?は?え?え?は??は??
何があったの??何があったの??
赤ワイン煮込みのビーフシチューがトロリと零華の口へ運ばれていく
その小さな口と歯で嚙合わせる
口の中では肉の脂肪が溶け出し、肉に歯が触れるよりも先に
間違えて喉へと通してしまいそうなほどの柔らかさがこれでもかと言うほど味合わされる。
葵が言う
「社長。次のお仕事の予定が。」
零華が落ちかけるほっぺを戻すと言う
「わ...わかったわ。もう帰るの...」
葵が言う
「すみません。」
零華が言う
「メイドの子たちはまだ帰ってこないの?」
そう零華がつぶやいたせつな
りんなと優香が小走りで戻ってくる
りんなが言う
「すみませ~ん」
零華が言う
「はぁ、遅いよ。心配したんだから。置いていかれたいの?」
優香が言う
「え?もう出ていくんですか?」
零華が言う
「私は忙しいの。このパーティは何としても参加してければいけないから来るだけ来たの。わかる?」
まあ。私達にとっては都合が良い。このまま流れに身を任せよう。
はぁ...思ったよりあっさりだったな。今回の任務。




