↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
2/7

エピソード1.5歪んだ世界

これは作者の実体験をもとにした半分フィクションのお話...

深夜の惨状から二日が過ぎたが、

俺の胸のざわつきは収まらなかった。

スマホを気にしては溜息をつき、画面を開くたびにあの動画の残像が脳裏をよぎる。

警察に駆け込むべきか、誰かに相談すべきか。

しかし、当事者である頼人自身が何も訴えていない以上、

自分が出張っていって事態が悪化するのも恐ろしかった。


そんな折、山中の元に頼人から「少し話せるか」と連絡が入った。


仕事終わり、二人で立ち寄った静かな居酒屋の店内。頼人はどこか落ち着かない様子でメニューの端を弄っていた。

頬にはうっすらと青あざのようなものが残っている。山中はそれを視線で指し示しながら、慎重に声をかけた。


「頼人……それ、玲明にやられたのか? 本当に大丈夫なのかよ」


頼人はビクッと肩を揺らすと、照れ隠しのようにへらりと笑ってみせた。


「あ、これ? ううん、僕がドジで転んだだけだよ。玲明は何も悪くないんだ」


分かりやすすぎる嘘だった。だが、頼人の目には恐怖ではなく、どこか奇妙なうっとりとした色が浮かんでいた。


「山中、心配してくれてありがとう。でもね、僕にはわかるんだ。玲明があんな風に激しくなるのって、僕のことを本気で考えてくれてるからなんだよ。僕が頼りないから、叱ってくれてるんだ」

「……叱るって、あれはただの暴力だろ。頼人、お前麻痺してるぞ」


「違うよ」


頼人は首を振った。その声には恐ろしいほどの確信が籠もっていた。


「僕が他の誰かと話してたり、彼女の求める答えを出せなかったりすると、玲明はすごく怒る。でもそれって、僕のことしか見えてないってことでしょ? 僕が彼女のすべてになれてるってことなんだ。痛いのは辛いけど、玲明の視線を独占できるなら、僕は何をされたって構わないんだよ」


俺は絶句した。

助けを求めているとばかり思っていた頼人は、自ら進んでその歪んだ檻に入り込み、暴力を愛情だと信じ込もうとしていた。痛みに耐えることでしか、自分の価値を感じられないところまで追い詰められているのだ。


「お願いだから、玲明を悪く言わないで。彼女は不器用なだけなんだ。僕がもっとちゃんとした男になれば、彼女も笑ってくれるはずだから」


頼人の瞳には、救いようのない狂信が宿っていた。

俺はそれ以上、何も言い返せなくなってしまった。

この男を救い出すことなど不可能なのかもしれないという諦めと、

どこか異質なものを見るような恐怖が、俺の背筋を冷たく撫で上げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。