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04 かたかた

 かたかた。


「もしかしたら、()は仲間を求めているのではないか」


 西行はその考えに取りつかれるようになっていた。

 こうしてどこまでも追いつめていながら。

 いつまでも殺したり害したりしない。

 生前の何かが突き動かしているのなら。

 その「何か」を目指すだろうが、そうでもない。

 さりとて、黄泉返らせた西行に恨みをいだいている風でもない。


「とにかく、見ているのだ」


 奴は。

 こうしている間にも、その視線を感じる。

 これはいったい、何なのだ。

 そうこうしているうちに、思いついたのが、これだ。


「仲間を欲している」


 であれば、西行を害さないのも納得がいく。

 何せ、西行は知っているのだ。

 骨から()を作る方法を。


「もしかしたら、それを手に入れるために」


 いつかまた、西行がそれをしたら、じっと観察しおのがものにするために。

 西行を殺さずにいるのだ。


「だが、それも無駄な努力ではないか」


 西行はあのあと、伏見前中納言師仲に会い、つまらなかったと感想を述べた。

 それすらも、見ていたのだろうに。


「なぜだ」


 この推論は合っているように思う。

 思うが、何の解決にもならなかった。

 骨の音がする。

 気配はあいかわらずついてくる。


「どうすればいいのだ」


 この時、ちょうど季節は冬だった。

 寒さが身に堪える。

 最近、体が思うように動かぬ。

 もはや、死期が迫っているのやも、知れぬ。


「このまま死んだら……」


 そこで、はっとした。

 死ぬのはいい。

 さすがにそれは覚悟して出家した。

 旅に出たのも、客死のことを念頭に置いていた。

 それは、誰に対しての者でもなく、おのれのことだからこそ、そして実際、武士だったからこそ、覚悟していた。


()のねらいは()()か」


 西行は、骨から命を作り出した。

 ()()()西()()()()()()()()()()()()()()()()()()


()は、それを期待して」


 西行は仏僧。

 不殺生戒があるため、人を殺せない。

 骨を得るとしたら、それこそ戦場や墓場だが、西行は()()を作り出して以来、そういうところには近づいていない。

 これは、これまで西行を追ってきたのなら、わかることだろう。

 それゆえ、骨を得るとしたら、それはおのれの死体。


「何だと」


 西行は、思わずふところをまさぐる。

 人と作るのに必要な砒霜はまだ持っている。

 それは毒であり、迂闊に捨てるわけにもいかず、、まだ持っている。

 もし西行が旅の途中、斃れたとしたら。

 それを使って、骨に塗ればいい。


「おのれ」

 

 悔しがったところで、今から捨てるわけにもいかない。

 川なら魚が死ぬ。

 山なら獣が死ぬ。

 だけではなく、毒で死んだ魚や獣が出たら、それらで生計を立てる者たちが死ぬ。

 それは――不殺生戒を破ることになる。


「何ということだ」


 西行は、今さらながらおのれの死のことを深く考えた。

 旅に生きた人生だ。

 かの盛唐の杜甫は、旅の末に死んだ。

 旅というのはいいが、常に移動し、食や寝床を変えて生きる。

 その蓄積が、死を招いているのやもしれぬ。

 だとすれば――


「追う。どこまでも。何もせず。ただ見ているだけだだが、それはいずれ――」


 いずれ死ぬ西行を、その死体を骨を手に入れ、同じような存在とするために。

 ()は追ってきているのではないか。

 西行は恐怖した。

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