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05 う、ぬ

「ねかはくは 花のしたにて 春しなん そのきさらきの もちつきのころ」


 春。

 西行はそう吟じながら旅をするようになった。

 意味はいろいろあるが、何よりも、おのれ死体を始末するには、これが一番だと思ったからだ。


「春ならば――山川草木に獣に虫、みな、われを食ろうてくれよう」


 春は生命の季節。

 どの生命も生きている、という感じがする。

 それは――他の生命を、あるいは生命の躯を食らいて、生きていこうとするからではないか。


「春ならば――そういう春ならば、死んでもすぐ、食らわれる。食らわれれば、骨も残らん」


 それなら、なるべく目立つ、桜の花の下がいい。

 死した時、すぐ誰かに見つけてもらえる。


 ……かくして西行は、その時詠んでいた歌のとおりに死んだ。

 その死は、伝えられているとおり「歌のとおりに死んだ」。

 ただ、それは雅なることを目指しているのではなく、もしかしたら……。


「う、ぬ」


【了】

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