16話【間接的因縁】
「制裁!!!」
「制裁!!!!!」
「せいさあああああ゙あ゙あ゙っっっいッ!!!!」
何度も振りかざされる手足の暴力を躱しながらバルダーはどうするべきか悩んでいた。この正義狂いに絡まれてかれこれ数十分この調子だ。
「疲れないのかな?自分は精神的に疲れているけれど…あはは…ねぇ…聞いてる…?せいさいって言い過ぎて本妻アピールしているみたいだよ。羊にモテモテになるのは困るな…」
「というかそろそろダレてきたからぶっ殺してやろうかな」
バルダーは手に殺意を込めて拳を突きつけようとしたが躱された。しかし口笛を吹くとファティは動きを止めて周りに何かが見えるかのようにキョロキョロと見渡し始めた。
「…あ、」
ネストルはすぐに気が付いた。パーンの遺漏は口笛を吹いて対象を撹乱させたり羊や自然を操る事ができる。
混乱をきたしたファティが周りをぐるぐる走り回るがファティを地面に押し付け地面に食い込ませ気絶させる者がいた。
カジスだ。倒れたファティを見つけて駆け寄ってきたランバはその姿を呟く。
「三の耳…包帯まみれの獣人…」
『そいつは危険だ!!!』スマホから歩や梦、デレックから警告が飛んだ。
『そいつは【ペルケトラヴィマス】のリーダーだ!!』
「…瑕疵だ…」
想定していなかった。別のトラブルの可能性が頭からすっぽ抜けていた。
それにトラブルにトラブルが重なる。
三つ巴だった。
ネストルが密かにランバの側に近づいていた。ランバは不殺が前提だが相手はそうではない。目的の為なら殺しも厭わないかもしれない。
「リトアニアの…お前が?」
流石にバルダーも警戒した。今どちらを先に攻撃するべきか。いや両方口笛を吹けばいいのか?しかし混乱して2人が一斉に攻撃してくる可能性も…不必要な騒ぎを起こすと人が来る。
「チッ…面倒くせぇ」
(そもそも【ペルケトラヴィマス】は構成員全員死んだ筈では?何故生きている?)
ランバとやらと先にカジスを倒すか。
そこまで考えた時重苦しい静けさを壊すようにカジスが口を開いた。
「吾輩はアディーを探している」
それはランバにもバルダーにも自身の敵と判断させる言葉だった。ランバはスマホをポケットにしまった。
「敵ってことだな」
バルダーは飛び上がり後ろへ回り込みカジスを蹴り飛ばそうとする。しかし避けられ爪を伸ばし引き裂こうとする。そこへランバが素手で爪を掴み砕いた。だと言うのに傷一つついていない。
(コイツ身体硬い…?)
ランバは誰も死なせないことが目的。カジスのあの爪は致命傷になりうると判断した。
しかしバルダーはランバも攻撃対象だ。二人の狙いはアディーだ。
首の口で首裏に噛みつこうとするがそれを察知し掴みかかりカジスに向けて投げ飛ばす。
カジスはそれを避けランバに高速で腹に潜り込み頭突きをした。
バルダーは何度か地面にぶつかりながらも着地しぷっ、と唾を吐いた。
(マジで疲れる…でも…)
まだ戦える。一番対処が容易そうなのはネストルだ。
バルダーは何処かへ連絡を取ろうとしているネストルへ飛びつきの耳を掴んだ。
「離せ!」
ネストルは耳をを掴まれ引っ張り上げられじたばたと暴れている。
しかしやられっぱなしではなかった。体をひねりその手腕に一撃を食らわせた。
「……っふふ」
(可愛い…!
なんて可哀想で可愛いんだ…!
自分も可哀想な目にあって可愛い…)
憐憫の感情が高ぶり笑いが漏れる。
「あはっハハッ!」
気分が高まり闘志が燃え上がる。ネストルを蹴り飛ばし乱闘を繰り広げるカジスとランバの間をすり抜け二人の視線を向けた。その瞬間二人の顔面を殴り飛り怯ませた。
「弱いって思ったか?」
自分に構う暇がないとは思わせない。
「チッ…」
「私はアディーを保護する為に来たのに…」
「あの子は保護されている暇などない」
(ミフル神、聞いていないぞ…目立つだけなのに)
カジスは内心ミフルに毒づいた。
地面に転がり放置されたファティを起こそうと肩を揺らしながらネストルは早くティタが助けに来るのを待っていた。
(作戦って何なんだ…)




