14話【誘拐犯と警備員】
─ガタガタ、バゴンッッ!!
扉が外から破壊された。
「誘拐されていたとはのぉ…」
ぬるりと高身長故に扉をくぐるように入ってきたのはルアン。遺漏によりアディーとフリーダの居場所を最初から知っていた彼には隠すという行動は無意味だった。
「まだ味方いたんだな。メアリー・スーに魅せられた思慮の浅い味方が」
セベロは特段焦る様子も見せなかった。ルアンはゆっくり首を横に振った。
「味方…余はこのオリンピュアの味方じゃよ。2二人の護衛の仕事をしとるだけ」
確かにメアリー・スーに影響を受けている。しかしオリンピュアの為にウルツとフリーダを保護するという目的が元々ありそれが噛み合い変わることはなかった。
「未成年誘拐の罪は重いぞ。大人しく投降してくれると助かる。自首すれば罪が軽くなるかもしれんぞ?」
「いやさ…俺も車椅子から五体満足にしてくれたからにはエイルに恩返しする為しなきゃいけねぇんだよ。一生歩けない体から五体満足になるなら未成年誘拐だって軽いもんだよ」
「…はぁあ…思考回路が根本的に違う」
自分の為なら他人を害する事に躊躇しない。もしくは誘拐くらいなら殺さないから出来るとでも言いたいのだろうか。
強硬手段。今此処で護衛としての矜持を果たさなければ。
ルアンは自身の両手を地面に埋めた。何をしているのかとセベロ達は固まったが地面が揺れセベロの周囲の地面から指が大量に触手として飛び出し拘束しようと逃げ道を塞いでいく。
しかし次の瞬間セベロは囲いのなかにいなかった。
「お互いの手の内がこれで見えてしまったな…」
「…ほぅ。高速移動にしては助走が見えない。なら…時間停止か」
「正解。カイロス神だよ。時間を止めてチャンスを作る。」
自身の体の時間の流れ(老化)も止めながら動くという荒業。それにより周囲がふさがり切る前に自身の周りの時間を止めて脱出した。
————
「足が普通に戻った…なら」
(わかるでしょ…っ!体の不具合に苦しむ人の気持ち…っ)
形は違うが精神も身体も健康な人にはわからない気持ちを。その人達の尺度で見られて生き苦しむ日々を。同じ苦しみを持つ人を踏み台にしないで。
自己憐憫だった。だが紛れもない本心。ずっとアディーの皮を被った中でのウルツの叫び。
セベロが何を考えているのかウルツにはわからない。
フリーダはか細い声で泣くウルツを慰めていた。
————
「時間停止ができる奴とは初めて戦うのぉ。実に興味深い」
指を引き抜き臨戦態勢に入るルアン。
(いや、困るな…。実戦経験が雲泥の差だ)
セベロは奇襲は得意だが相手は二人の子供の護衛を任せられた歴戦の猛者。
ルアンに近づき時間を止め周囲の物体をルアンの周りに投げつけ時間を再び動かす。この戦法が得意だった。それに加え相手が動けない間に殴り飛ばす。
しかしルアンは殴られても微動だにせずその腕にルアンの指が絡みついた。
もう片方の腕で投擲されたものを弾いていく。そしてセベロを殴りつけ地面に叩き伏せた。
完全にルアンが優勢だ。此処で終わると思われた。
しかしセベロは何事もなかったかのように立ち上がり服についた土ぼこりを払う。
「普通ならあれで気絶してたろうな」
セベロはエイルの眷属になり加護を受けている。つまり強化されている状態だ。




