13話【神の宴】
煙草の次は炭酸飲料を飲んでいたセベロ。アディーとフリーダの二人が逃げ出さないようにずっと同じ部屋にいる。セベロは炭酸飲料を机に置くとスマホを弄り出す。そしてふっと口角を上げた。
「ネット…お前らにすごい批判集まってるぞ」
セベロにそう言われフリーダは歯を食いしばる。
「禄にウルツのこと知らないくせに…!」
知っているのは外面だけ。皆が皆ウルツの遺漏で狂ってるだけ。真の彼を知るのは私だけになった。アディーの恩恵にあやかっていると思われることすらあるが違う。私は彼を肯定していたい。自分が世界から消えるような孤独を癒やしてやりたい。たとえ希死念慮があってもそれを止める為に。だから此処までついてきた。フリーダは焦燥感に似た感情を抱きながらそんな思考に陥っていた。ウルツを側で守れるのは自分だけなのだと。
ウルツはため息を漏らす。早くここから出たい。死ぬとしてもこんなジメジメした場所は嫌だ。フリーダに暇潰しのように話しかけ続ける。
「誰か助けに来ないかな…」
「…バルダーさんなら来るでしょスタメダリアスも…それに…」
「皆ウルツの為に騒いでるし」
そうは言うもののウルツの顔は晴れない。薄々自分のしでかしたことの大きさや周りの動きが変わってきたことに。そんな感情に引っ張られ後ろめたさと同時に自嘲的な言葉を漏らす。
「ウルツじゃない。皆アディーが好き。メアリー・スーのアディーがね」
「…どっちにしろ…」
そこまで言ってフリーダは口を閉ざした。傷つけそうな言葉を言いかけたことに自分を殴りたくなった。
————
マヤ神話のペテウからはそもそも嫌われている上にお茶の文化がない。北欧神話のオーディンもエールのほうが良いしお茶請けも合わないと拒否される。
ギリシア神話の面々もそれどころじゃない。試合に集中させろと言われた。そもそも葡萄酒の神のデュオニソスのいるギリシア神話の神々に言ったのは間違いだった。
「もしかして私…嫌われてるのでしょうか…」
「御言葉ですが前にも敵意向けられてましたよね?」
アンガシャの言葉にトモシビは嫌われているか否かには答えず事実を述べた。
オミッションの神々とお茶会をしたい創造神アンガシャ。力はあるのに社会性が皆無に等しく手当たり次第当たったのが不味かった。
「まだです…お茶…というかミルクティーがポピュラーなエジプトの神…メジェドは死者の心臓を食べたり火を吹けるのなら…飲み物も飲めるはずです。」
(お茶の神なら中国神話の神農がいらっしゃるのですが…)
トモシビが助言をするよりも前にアンガシャはメジェドの元へ向かってしまった。
アンガシャは遠くでオリンピュアを楽しむメジェドをお茶に誘おうと脳内でお誘いのシュミレーションをする。創造神だが形を持つ以上全能ではない。性格があるのならそれ故の欠点がある。
(そもそもお茶に拘る必要もないのですが…『折角の新作の茶葉なので飲んで頂けると』…いや)
(『美味しいお茶は如何ですか?』シンプル過ぎますかね…)
(『優雅にお喋りをしながらミルクティーを嗜み、試合を鑑賞するのも一興ですよ』これにしましょうか)
結果としては
「まぁ…断るのも悪いか」
メジェドが頷いた結果で上々だった。ようやくお茶会相手が見つかったアンガシャはふふ、と嬉しそうに「ありがとう御座います」と礼を言い席に共に座り早速トモシビが用意したミルクティーを差し出した。
「巷ではタピオカミルクティーなるものがまた流行しているみたいですよ?」
「あの茶色いチョコボールのような?」
「そうです。定期的な流行は最早人間の風情ですよね」
二柱が穏やかに世間話に花を咲かせる。ようやくお茶しながら試合が見れると思った束の間
何かが飛び出してきた。
紫色のワイバーンのような怪物。胸から手を生やし選別するように神々を見据えている。
アディーがスタメダリアスと呼ぶオミッション。
「探している存在はいますよ。此処には沢山。ですが我々神々はそう簡単には人間達の作戦に手出しはしません」
人間達の生活に無闇矢鱈に手は出さない。神の方から興味を持つかそれ相応の祈り、祀りがなければならない。
メジェドが目からビームを出しスタメダリアスの手を消し飛ばしアンガシャが指を振ると下半身が消し飛んだ。
「トモシビ」
その呼び声にすかさずトモシビが蹴り落とし下へ飛び降りようとした。そこで制止された。
「ランバの仕事は『誰も死なせない』ですから邪魔にならないように此処まで」
「了」
トモシビが再び持ち場に佇む。
ミルクティーを飲みながらアンガシャはメジェドと会話に戻るがその瞳の奥では今の現状の動きを把握し今後のランバがどう立ち回るのか楽しみにしていた。




