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黄昏のオダマキ  作者: ないある
陋能転国編
7/25

7話【エラー】

私は目の前に現れた異形の黄色に身体を震わせながら皆に叫ぶ。

「一旦逃げようっ!!ブレナンが危ない!!!」

一樹はハッと正気に戻り鬼燈に言う。

「取り敢えず一旦引く。それまでそいつが何処の誰だったのか教えろ。何したのかもはっきりさせてもらう」

「……」

鬼燈は黙りこんでいた。しかし

「エラー…」

鬼燈がボソリと呟いた。

「…また…あぁ『こいつも』エラーか…」

人体のエラーとでも言いたいのか。

「お前…」

目を伏せ何かを言いかけた一樹にシズが声を出す。

「触手だ!!」


触手を展開し始める目の前の異形に一樹が遺漏を発動し真上から電車が突撃する。オカルト要素の欠片もない使い方だがかなりダメージを喰らったように見える。しかしすぐに再生し始める。

「駄目だ…対策を考えないと…」 

鬼燈は怪我がいつの間にか完治していたメイドによたよたと歩く。

「どうしよ、ね、もうあれ使って医療も出来ないし駄目な所見られちゃった」

と子供のように泣き始める。

「やっぱり私は駄目だった…ああぁあっ…!卯木!卯木!!助けて…!」

「……大丈夫です。鬼燈様はいつも頑張ってます。私はわかりますよ。遺漏を使ってまた閉じ込めれば良いんです。後のことは私達に任せてください」

鬼燈は言われるがまま手を引きあのエラーと呼ばれたものの動きを操り破壊した壁の方へ戻していく。彼女の遺漏は洗脳辺りなのだろうか?

怪物がいなくなった部屋には静けさが戻る。

やはり…何か知ってて元々閉じ込めていた?

もう此処は安全だろう。

「…一旦戻るから。また会いに来る。その時『アレ』について話してもらう」

一樹はあの怪物に思うところがあるらしい。それを問い詰めるために再び訪れる宣言をして私達に言う。

「ランバの瞬間移動で帰るぞ。ランバ、出来るな?」

「あ、はい…!」

一樹達が私に触れて私は瞬間移動を使いあけぼのクラブに戻ってきた。

良かった…。成功だ。

慌ててブレナンをシズが背負い私は叫ぶように皆に怪我を伝える。

「ブレナンが大怪我した!」

真っ先に駆けつけたのは花菜だった。出血を見て驚きつつブレナンを優しく受け取り治療を開始した。

「あとで一切合切説明してもらうからな」

花菜は手慣れた手付きで治療を開始した。彼女の遺漏ではないらしい。しかしもう出血も治まっている。ただ切断された腕はやはり戻らないようだった。

治療しながら異形、薬、鬼燈等一連の話を聞いた花菜が口を尖らせる。

「ダブスタ二枚舌のクソアマだったってことじゃん」

「組織構造がグロキモすぎる」

言葉に棘が張り付いている。しかしオブラート無しだとそうなる。

「ブレナンはもう大丈夫なんだよね……ぁあ…っよかった……」

心の底から安堵する。私では助けられなかった…。良かった…生きてて…。

ブレナンは今は痛み止めも飲んで安らかに寝入っている。

私達はリビングで更に詳細を話して今後の事を決めていこうとする。


「鈴彦…赤い瞳と白い髪の毛の女がいた」

シズは鈴彦と似た同じ容姿の女がいたと伝える。恐らく探している妹なのではないかと考えたのだ。すると鈴彦は立ち上がり「本当ですか!?」と聞き直す。

「あぁ…鬼燈に心酔しているが…」

「そうですか……生きてた…」

鈴彦は眼鏡を外し涙を拭う。

「生きていればそれで良いんです…っ生きてさえくれたら…」

「……そうだな」

シズは静かに肯定した。シズも母が生きてさえくれればそれで嬉しいと思うだろう。ただ陋能転国にいたとは。


――――

俺はアメトリンの一つの家に足を踏み入れノックをする。

しばらくすると鍵が開く。生活臭が漂う。まだゴミは片付けてなかったか。

目の前の女…本条咲弥(ほんじょうさや)に柔らかい口調を意識して話しかける。

「…(あきら)と同じ異形を見つけた。エラーと呼ばれていた」

「そう……」

元気が見えない。仕方がないが。

「それだけだ。……また来るから…あ、ゴミ片付けようか?」

「……お願い」

ゴミを纏めて袋と共に部屋を出てまたあけぼのクラブに戻る。いつもあそこは賑やかで俺みたいな罪人には似つかわしくない。 

双と千春、ランバの三人が修行しようと3人で話し合っていた。

あぁ、良いなぁ。あんな風に3人で集まってたっけなぁ…。俺は遠くからそれを見ているとまひるに話しかけられた。


「知ってたの?」

まひるが一樹に尋ねる。 

「あぁ」

「何で教えてくれなかったの」

「俺達と同じ苦しみを味わってほしくなかった」

「そんなのエゴだ」

「知ってるよ。でもそれに縋らないと…人助けの気分にならないと生きるのすら難しくなってんだ」

自分が生きる為気持ち良くなる為に友人を利用している形になっても…死ぬよりマシだと。

福坂は咲弥の苦渋に満ちた顔を思い出す。あんなに元気でヤンキーですらあったあの咲弥が毎日部屋に引き籠もり息をするのに全力を出さなければならないほど追い詰められている。

それを…皆にもさせたくなかったから。そう言えば聞こえはいい。

「…実際は俺があぁならない為にってのが第一なんだよなぁ…」

「どういう事?」

「……俺も部屋から出られなくなれれば共倒れになるってことだよ」

そうだ。俺は友人がエラーになってしまいそれを殺した。その罪悪感から咲弥は引き篭もり、俺も一時期ずっと上の空で定期的に泣いていた。でも咲弥のために今外に出てエラーの原因を探し歩いている。

俺がアメトリンを作ったのも罪滅ぼしみたいなものだ。

 

――――

 

認められなきゃいけない。

死にかけたあの日からそう誓った。

生まれ故郷を逃げ出した。でももう逃げるのはやめにしようと。

臓器提供のための犠牲も家畜を作るようなもの。

生きる為…。今までの人間社会と変わらない。豚や鶏、牛が平和の秩序や豊かな社会を目指す人類の礎になるためと同じ。

そうしないと舐められる。評価されない。

周りが反対しているので仕方なくアパテーを使う。

仕方がないの。

皆救われる。

偽りだろうと泡沫の夢だろうと一瞬の時だけでももう会えない人と再会できる幻想も作れる。そんな甘美な夢で救われる。


そうだ、私は…遺漏を発言してその悍ましい能力を使いオミッションを退けた際に私の住んでいた町の人々に見られた。そこから罵詈雑言を浴びせられ、恐れられる日々。たまらず逃げた。逃げ続けるのは終わりにしたい。欲しくもなかった遺漏を手にしてなぜ此処まで追い詰められないのかいけないのかわからなくなった。だから差別された人々で集まり認められるように日々社会貢献しようとして此処まで来た。

ただ差別されるなんて許せない。この世界を変える為には普通の方法では無理だ。

私はもう止まるわけには行かない。

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