11話【唯名論】
「あーあ連絡無ーい人もなーい。なんにも見つかんなーい」
「はぁ…」
話しかけても治療に長けた人が中々見つからない。何故だろう。此処まで来ると作為的なものを感じる。
実際の所治療に関する遺漏を持つ人は各国で医療に従事している為にオリンピュアの観戦には来る人は皆無に近い。しかしそれを知らないアディーとフリーダは探し続けてしまっている。
「あれ…道間違えたか…?」
声がした方を振り向くと車椅子の男性が地図とにらめっこしていた。
「あの…大丈夫ですか…?」
フリーダがおずおずと男に話しかける。
「僕アディー!こっちはフリーダ!助けは必要かな?」
「…ども…俺はセベロ…」
2人のテンションの差が激しすぎたのかセベロは少したじろいでいる様子だ。
「広すぎて場所がわからないのー?」
「…」
セベロは頷いた。まさかこんな小さな子に案内されるとは思わなかったのだろう。
「会場の裏に救護室があるって聞いたから少し相談しようと思ってたんだがな…」
「案内するよー僕が聞けば周りの人達すぐに手伝ってくれるだろうし!行こー!」
フリーダの手を引き継いてくるように促すアディー。
(車椅子引かなくても動けるタイプのやつ出し大丈夫)
フリーダもアディーに流されるままだった。
「助かった…すぐに見つけることができた」
「ん?どゆこと?」
アディーとフリーダが振り向いた。
セベロが立っていた。更に車椅子を潰し鈍器として振りかざしていた。
驚天動地だった。アディーが頭を殴りつけられ地面にぶつかり動かなくなる。
それを見たフリーダは呆然と見つめて次に(何故この男はメアリー・スーが効かないのか)と考えた。自身と同じく最初から好いていた訳でもない。
(この人は知り合いでもない…私みたいに昔の姿も知らないはず…っ)
「お前は遺漏持ちじゃないか…殴ったら死ぬな」
逃げれば何をされるかも分からない。
震えるフリーダを見下ろしセベロはひどく冷めた目でフリーダを観察している。
何故セベロが二人を襲ったのかがまるでわからない。
「目的はなんだか知らねぇけどよ、やったことは事実だろ?やったことには責任が伴うんだよ」
「子供だろうがなんだろうが躾けなければいけない。ただでさえ平和の祭典を混乱させて…どれだけの損失になるんだ」
手を伸ばし服の裾を掴みフリーダを持ち上げた。
「クソガキ二匹確保」
倒れて気絶したアディーと震えているフリーダ。抵抗は叶わずズルズルと引きずられていった。
セベロは二人を自身の為に予約した休憩室に閉じ込めた。予約制の休憩室という抜け道が人が訪れない完全な死角となって作用する。
「どうやって一瞬でアディーを殴ったの?」
「教えねぇ」
フリーダの質問を無視し煙草にライターで火を付け吸う。紫煙が部屋に匂いを広げていく。
「態々教えるような馬鹿じゃねぇんだよ」
「……」
部屋の隅にパイプ椅子を引き寄せそのパイプ椅子に腰掛ける。灰皿を近くの机に置いて煙草を楽しんでいる。完全に計画に成功したように気を緩めているように見えるが視線はこちらを見ている。まだ警戒をしている。
アディーはまだ目覚めない。布団の上に転がっている。
(なんで、何でこうなったの…)
フリーダはアディーの為ならと来たくもなかったオリンピュアの会場に来ていた。なのにこうなってしまった。
(でも一人にするのは駄目だし…結局こうなるのも時間の問題だったのかも…)
「お前は何で…」
セベロはフリーダに話しかけて止めた。
「はぁ、どの口が言ってんだって話だよな」
あの時の契約は正しかったはず。今こうして自由なのだから。セベロはあの時の会話を思い出しながらそう考えた。
————
「今からアディーとその友人を捕まえて欲しいのです」
「アディー…かそいつのせいで俺も言いなりにされていたのか確かに『これ』なら捕まえるのも容易いな。恩返しに捕まえてやる」




