10話【二者対立】
「はっ…はひゅ……っな、なんですかこれぇ…っ」
カタカタと震えながら鈴彦は顔面蒼白で混乱している。
「アッハハハハ!ネットすげぇ大荒れ!!」
双は真逆にSNSを見て笑い転げている。
『何アイツ関係者?』
『遺漏のせいか?』
『きっしょい』
『アンチコメ消せ消せ』
『二人組やたらVIP対応じゃね?』
『クソガキつまみ出せよ警備員何してんだ』
『てかそいつ今行方不明とか笑えないんだけどオリンピュア終わりだ終わり』
『はやくアディーちゃん見つかって…アンチに負けないで…!』
ネットも批判の嵐だ。しかし会場にいる人々はその批判に反論する投稿で溢れている。
無論あけぼのクラブにもその波は来ていた。
「八方美人は別に良いが『私が主役』感が鼻につく。皆主役なのによぉ…あああっあああああ!!!!苛つくその顔面ぶっ潰して顔面整形させてやる!!てか今何処にいんだよ!!」
「ケ、ケモ耳と尻尾だけでケモノアイドル…?ふざけてんのか…?」
あけぼのクラブは混乱する者、珍事件過ぎて爆笑する者、怒りに震える者と千差万別だった。
「み゙ゃあああっ!!にゃぁあああっ…!!」
イカ耳でいつものやんのかステップのバグシィが凄まじい勢いで例のアディーを取り上げている番組に向かい叫んでいる。
双のスマホにランバから着信が来た。
「もしもし?ラン…」
『うああああっ!!!孤立無援だよ……!』
やはりと言うべきかオリンピュアはかなり凄惨な事になっているようだ。
正気な家族に安堵してランバが電話越しに泣き喚いている。
双はスピーカーモードに切り替えた。
『なんかさぁ…!仕事の関係で詳しいこと言えないけどなんか凄いんだよ!!』
「落ち着いて深呼吸して。それじゃあ何も分かりやしないよ」
情報力が皆無な泣き言にまひるが落ち着くように促す。
『すぅ…はぁあっ』
「良い子」
落ち着いたようだ。まひるの言葉にランバは(子供じゃないのに)という言葉を言いかけて飲み込んだ。
『それで、えっと…アディーの遺漏が原因かもしれないんだよ…皆アディーを褒め称えてて…正気じゃいられない狂った世界…!』
『…電波越しでは効かないみたいで助かったけど…』
ランバは話終えると再び深呼吸を始めた。
「確かに会場にいる人とそれ以外の人がネット上で罵りあってるよね。会場にいる人がおかしくなったって」
「レスバしてる暇あったらさっさと完備班仕事すればいいのに」
梦の言葉に歩はその大きな肩をすくめた。
「リトアニアみたいな感じ…?」
「怖くて従うんじゃなくて…えっと…考えを変えられている感じだね…」
メタに分かりやすいようにアニタは優しく説明をする。
「ブライトンは大丈夫だろうか」
ムフパの声にランバは口を噤んだ。分からない。あれからブライトンを観ていないから何とも言えない。選手は試合自体は続けているからそこまで強い影響は受けてはいないはず。アディーも流石に試合をする人達に話しかけることは控えているのか。
「怖くてもう遺漏で会場見れないなぁ」
人見はニュースを見てから遺漏を使うのを控えている。もしかしたら影響を受けるかもしれない。
「1回こっちで休む?」
『いや、飛行機使わないで帰ったら不法入国に…』
燈矢の言葉にランバは電話越しに首を横に振った。
「そっか…そこは守るんだ」
『でも気分は落ち着いたよ。しばらく繋いだままでいい?』
「別に良いけど…電話代…」
『気にしないで』
「……」
ブレナンはそれ以上追求するのはやめた。




