8話【パターナリズム】
「神に支配されるなんて最悪だ」
「世界の殆どの人間は何かしらの神を信仰しているのだから今更だろうに」
文句を言うのは遺漏により獣人の姿に変わった包帯まみれの男。名前は『カジス・ウルボナス』かつてリトアニアを恐怖で支配した【ペルケトラヴィマス】のリーダー。
そして彼に語りかけるのはミフル。ゾロアスター教の契約と太陽の神のオミッションである。
「身の助力を得れるのだ。身がいなければ汝は死んでいた。存分に祀るが良い」
カジスは瀕死の状態で倒れていた所をミフルに拾われて駒にされていた。胸に包帯を巻いたカジスは契約で罪の免除の代わりに神々の為に人を救えという契約を結ばされ嫌々従っている。
「薬師如来に先を越される前に終わらせる也や」
「先を越される…?」
「汝は身の眷属となった。助力が得られるのなら力も増す。汝の活躍が身の信仰になる。信仰されれば力が増す。」
「…つまり目立てということか」
「然り」
「今目立っている彼奴を助ければ…今こそナイチンゲールやクララ・バートンの如き不屈の魂を…」
自身を鼓舞しひたすら命令に従った。
今はただ指示された場所にオミッションを倒しながら向かわねば。
そうすればきっと力も得て豊かになる。カジスは今生きる目的を無くしていた。ずっとマズロー達とペルケトラヴィマスでリトアニアを統治していたのにそれがいつの間にかおかしな方向に向かっていた。罪の意識しかなくミフルに振り回されて。
(今吾輩は目的を欲している)
なら従えばいい。ミフルもこの時を待っていたようだし。きっと正しいはずだ。
実際の所従うだけではなく自身でやりたい事を見つけたいのだが。
「ミフル神、一つ気になる」
「聞こう」
「…このオリンピュアでトラブル…彼奴が現れる事は予知していたのか?」
「知らぬ。ただ何か異常事態が起きる事は漠然とだが知っていた」
ミフルの言葉は正直だった。自分の知る限りの事は話す。知らないことは知らないと言う。
「そうか。何故知っていた?」
「厄介な存在がオリンピュアに手を加えていたからだ」
「…そうか」
その厄介な奴に直接関わろうとしないのならその厄介ナ存在はミフルでも敵わないのだろう。これ以上踏み込むとその厄介に目をつけられるかもしれない。カジスはそれ以上踏み込むのをやめた。
腹が減った為にケバブや唐揚げを食べた時だった。分厚い肉に肉汁が滴り食べがいがある。オリンピュアという場だからか懇切丁寧に作られいくら食べ進めても飽きない。
「ミフルは食べないのか?」
「神は本来食事は必要ない。娯楽のような物。供えられればそれが信仰心として力になる」
「それに今身は姿を隠している。神かその眷属以外には見えん」
「…そうか」
一人で全部食べきれるのならそれでもいいが。
食べ終えるのを待たせるのは気が引ける。
「あまり身に気を使う必要はない」
言われても気になるのが人間の性なのだが。




