7話【メアリー・スーに気がついて】
「……なんか…空騒がしい」
遠く神々のオミッションがいる場所に羽ばたく影。
エジプト神話のセトかメソポタミア神話のティアマトか…はたまたペルシア神話のアジ・ダハーカだろうか。遠すぎる上に速い。見えづらい。
「……わ、すごっ」
メキシコが試合で優勢だ。ゴールを華麗に決めた。イラリオも喜んでいるだろう。
「…?」
なんか変だ。周りの盛り上がりがおかしい。
『治療ができる人…?』
『医者の人とかそういうの持ってない?』
『アディーちゃんの為なら…』
いまいち盛り上がりに欠ける。皆何かを探している。ランバは近くにいた観客に話しかけた。
「あの…どうしたのですか?…アディーってあの白い髪の毛に猫耳と尻尾の…?」
「そうっ!そうなんです!皆アディーちゃんの願いを叶える為に試合どころではなくて!」
「…え、えっあ…っそうですか…っ分かりました…」
人のいない場所に駆け込みスマホでティタに連絡を入れた。
「あの!皆アディーちゃんアディーちゃんばっかり!!!」
『あーしょうがないんじゃない?アディーってなんか惹かれるし』
「………」
電話を切り立ち尽くす。
「うわあああああっ…!!!何コレ胸がムカムカする゛!!」
取り付く島もない状態だ。
(アディーちゃんアディーちゃんアディーちゃあああん!!!??皆試合を見に来たんでしょ!!!?)
崇高な試合はどうしたのだろう。あの熱気は何処へ?
「うわあああっ…!」
(もしかしてアディーは何か魅了系?洗脳系の遺漏を…?もしかして護衛対象じゃなくて捕縛対象?!)
そうだとしたら既にVIP扱いされていた時からティタとネストルは洗脳されていたことになる。思えば保護者のいない2人の子供がVIPなんて不自然すぎた。
(私は人じゃないから洗脳効かないってことか…)
孤立無援?こんなのどうしろと…。
(神はどうなるのか。もし神を魅了し始めたら…いや、アンガシャが側にいるし平気だろうか…うん。そうだ。いや、今は…)
「今ルアンが接触したら私の敵になる可能性っ!?」
「やばいやばいやばいやばい!オリンピュア終わる!!」
あらゆる最悪の事態を想定する。オリンピュアが失敗に終わり人々は混乱と怒りにまみれる。アンガシャの計画した神々のオミッションへの信仰増加作戦が失敗。結果としてアンガシャに殺される。そして仕事ができず9力ももらえない。人が怪我どころか死ぬ。そしてアディーが人々を傀儡にして世界を侵攻…。
ランバはルアンを追いかけようと空を飛びルアンの向かった場所を探し始める。つまりランバがまだ向かってない場所。
会場の運営者の使うスペースのさらに奥に着地して一息つく。
後ろで大きな爆発が起きた。
「え?」
そこには大きな紫色のドラゴンらしき存在。顔がカタツムリに寄生するロイコクロリディウムを思わせる模様で細長い。
会場から大きく離れていたから死者は出なかったもののこんな爆発を起こせる存在が近くにいるのは許しがたい。
「今それどころじゃないのに!」
でもこれも仕事の内…!このオミッションを殺してアディーを捕まえてルアンを正気になんとか戻す方法を…!
じっと視線を感じる。このオミッションは攻撃というより観察してくる。
「っ…!」
背後に回り翼を掴み投げ飛ばす。
地面に叩きつけられたオミッションは胸から手を二本出すと勢いよく立ち上がりランバの動きを観察して勢いよく地面を抉りながら向かってくる。
ランバは空間を斬り不審な手を斬り落とした。オミッションはそれを喰らうと一目散に逃げ出した。空へ羽ばたいて視界から消えていく…。
「…とどめ…」
いや、今は力はアディーに残しておこう。
ランバは再び移動を開始した。




