50話【誰そ彼の怪物】
翠嵐海が【南西】を向きながら攻撃を受けた。吸い込まれるように取り込まれその力を相手へ拳で叩き返す。
その相手は雀と人工物に雪の結晶が混ざったような体に脳みその頭を持つエラー。そしてそれを植物の上で観察する植物を生み出す力を持つ遺漏者。
ランバはトモシビと共にその光景を上から見ていた。
「残る三人は…」
翠嵐海は毒に耐性がある。毒性のある植物をを操る遺漏者に対して優位だ。そしてエラーも同様毒が効かない。毒に対する耐性を持っていることがこの戦地に立つ最低条件だ。
ランバは自身の周囲に毒を隔てるように空間を常に操作する。トモシビはそもそも毒が効かない体質だ。
「僕はデージ・リンドベルイ。貴方達は何者?」
上へ向けてデージは陽気に話しかける。その姿は目に光がなくワイン色の瞳をしている。左目には眼帯。緑色の服。頭にヴェールのような被り物をしている。そして何よりそばかすが特徴的だ。
「ランバ」
「ワタクシはトモシビ。覚える必要は無いですよ。すぐに死ぬので」
愚直な宣戦布告。その言葉にデージは過去を想起した。
――――
「そばかす君〜」
「……」
「無視すんなよ酷いな〜」
人の容姿をからかう方が酷いだろ。その言葉は飲み込んだ。何か言えば増長してつけ上がられるのはもう身にしみている。
ずっとずっと虐められていた。容姿がどうとかなんだかムカつくとか単調な話し方がキモいだの無茶苦茶な理由だ。
学生時代ずっといじめられて成人してもこのいじめっ子共は精神が成長しない。相手にするだけ無駄とはいうがこういう奴らはそれを無抵抗だと喜ぶ。
「もう関わらないでくれ。僕のこと嫌いなんでしょ?」
そう言った。何度も口に出した。何年も。なのに、なのに態々関わりからかい嘲笑う!!
何が悪い?僕は何もしてないのに!ムカつくからっていじめて良い理由にはならないのに。
あの日もそうだった。
「っ…もうやめてくれよっ…!!」
掴まれて腕を大きく振るうとそいつの身体がバラバラになった。
「…?ぇ?えっえっあ、え?」
身体が震え目の前の光景に意味のない声が漏れる。
「ちが、おれは、ちがう俺じゃ、な…い…」
「やめてくれ…!」
必死に自分じゃないと言い聞かせる。
遺漏というものがどうとかたくさんの人が話をしていた。
…俺の遺漏は…植物を具現化させるもの。だから人を殺すとかそんなものじゃない。
でも植物の蔓で引き裂くとか?
死を想起させる。想像。それがいけなかったのだろうか。
周りの奴らが引き下がる、あるいは俺を捕縛対象として見る。
「ちがう、なにも…」
蔓が現れ悲鳴が上がる。
「植物で死ぬのは…」
毒のある花とか実とかで…俺はそんなのさっきは…
今、考えてしまった。
不安定な精神のせいか、それとも遺漏が具現化させるもので強い代わりに制御が難しいからだろうか。
マンチニールが大量に振り出し人々は叫び痛みにのた打ち回った。
「…俺が何かを考えたら人が死ぬ…?」
……。
…。
「最強じゃん」
もう誰にも馬鹿にされない。見た目でどうこう言われない。最高の日常が待っている。
――――
「僕見下されんの嫌いなんだよね」
ケラケラ笑う。
「僕が危険だから此処に閉じ込めたってことでしょ?」
「理解がお早いですね」
「お前ら僕のこと見下しているからすぐわかる」
デールは相手の態度ですぐに考えを理解できる。長年の経験則だろう。
「縛られたくないし態々絡んで殺しに来るとか嫌な奴〜」
デールは植物の蔓を操り二人に襲いかかる。
そこに翠嵐海が足を踏み込み蔦を破壊しウツシビを蹴り飛ばす。
「問題無いです」
肉体再生するウツシビへ更に足を踏み込み追撃しようとする翠嵐海。ランバはすぐさま空間を操り足をもぎ取るが再生される。
これじゃいくら攻撃しても意味がない。
「彼奴も来たよ」
デールが指差した方向からエラーが目に見えない波紋を出し脳を揺さぶって来た。既に経験しているのかデールはすぐに躱した。
ランバは空間を無理やり動かし防いだ。本来の力を取り戻したランバの空間操作では空間を変化させすぎると歪みが生じる可能性がある。だから常に影響を考えて扱わないといけない。
立ち直ったウツシビは新しく生命体を生み出す。
それはかつてランバが戦ったバエル。
ウツシビはバエルを召喚しその形を変化させランバに武器として投げ渡す。それはメイス型のモーニングスターだ。
「バエルは戦闘に長けた悪魔でしたので…透明化に武器の変形になった変身能力…反撃と参りましょうか」
ウツシビは自身に迫るエラーに300Kgはあるヒグマを自身の眼の前に上半身だけ出現させてその鋭く重い一撃でカウンターを食らわせた。
翠嵐海へ向けて大量のヘラジカが突撃しカバやシャチが噛みつく。
デージにも迫るそれらは大量のギンピ・ギンピやマンチニールを口に召喚して消していく。
「頭が回る分エラーは後回しにして翠嵐海とデールに集中するか」
ランバはモーニングスターをデールの頭に振りかざした。それを巨大な蔓が受け止める。
「お前の瑕疵だ」
モーニングスターが変形しショットガンに変わると大きな銃撃音がなる。
「あっぶな…」
デールと銃弾の間に大きな木が生えて防いでいた。
さらにショットガンが変形し巨大な斧に代わり力任せに木と共にデールが乗る植物を斬り落とした。
「ちぇっ」
「お前のフォールバックは使わせない」
新たな植物の気配。ランバは地面に斧を突き刺し変形させる。それは火炎放射器だった。
「おま、酸素が勿体ない!!」
ブゥンッ─
火が止まった。火が嫌だったのだろうか。エラーが火を消し去ってしまった。
ランバはいつの間にか後ろに瞬間移動していた。
バグは取り除かねばならない。
「ごめんなさい」
大きな鎌に変形させデールの首を切り落とした。
人を殺す事に躊躇が無くなった時点で彼はいじめっ子と同じ存在になっていた。それに気がついていたのかいないのかは本人しか知らない。
すぐさま翠嵐海の方へ見る。ウツシビはエラーを先に片付けようとしている。
「私は翠嵐海を相手するから」
残るは2名。




