49話【欲のまにまに】
暴力描写が多めです。
ジェレナから死刑宣告を受け周りは一斉に戦闘態勢に入る。
「遺漏が貪欲の私に勝てると思ってる思い上がりの頭が欲しい!!」
ウェズへ向けてジェレナは指から何かを飛ばした。避けたが軌道が曲がりウェズの脇腹に辺り服が溶け肉が抉れた。
「まぁ…」
「お前はもっと言葉を選べ」
(これ以上死人を出させるわけにはいかない)
デレックの遺漏である八意思兼命。解決の糸口を手繰り寄せる。ジェレナを効率よく抹殺する方法。
「…やはりそうか」
「何か糸口が?」
「口と指を潰さないと喰われる」
遺漏は口と指で発射する。そこを潰さないと近づくこともままならない。
「なるほど…潰せば勝てる…ふひひ…!」
ウェズはナオスピカの右手のみ召喚しジェレナの背後から狙う。
「舐めるな不敬者があっ!!」
後ろに手を回し指から大量の液体を発射するとたちまち腐食したようにナオスピカの手が消えた。
「ひゅー…まだお腹いっぱいにならないのかい?」
「ウザいゴミ死ね!!」
「口が達者だからまだいけそうだね」
ウェズとジェレナのやりとりを見たタニアに歩が尋ねる。
「相性が悪すぎます…」
「性格の話?」
「いや遺漏の話…」
「ロボットを作るウェズに物質を消す力があるジェレナは無理があります。ウェズを移動させるべきかと…」
「彼奴のことだ。一人で行かせるのもリスキーだ…歩について行ってもらうか…」
「逃さないから」
口から液体を発射し更に走り距離を縮めてくる。とっさに歩が発射した凍りついた星が盾になる。
「冷たっ」
顔を顰めるジェレナにタニアの回し蹴りが当たる。更にデレックとウェズが追撃し連鎖していく。
「何故これで意識が消えない…?」
はっと八意思兼命が発動した。
「そうか、食べた物を身代わりにするのか…くそ」
「え?じゃあ餌付けしたことになるじゃないか!?」
最悪だ。先程食べてた食事もナオスピカの右腕も相手に有利にさせていた。
「っ」
腕に液体をかけられ咄嗟に袖を破りタニアは間一髪腕を持っていかれずに済んだ。ジェレナへ向けて更に近づき拳を腹に当てる。ジェレナは吹き飛びながらも靴を突き破り足の指から液体を発射した。
「遺漏が尽きないのも他者の遺漏からエネルギーを取っていた…とか」
梦の考察が当たっているのなら時間経過でどんどん不利になる。タニアは地面を踏みコンクリート破片を投げつけ盾にする。
「…っ今更横腹が緊張してドキドキしてきた…」
「止血してなかったのですか!?」
思わずタニアが声を張り上げもう片方の袖を引き千切り止血をする。
大きな戦闘の音は人を呼ぶ。マズローが空いた瓦礫から部屋に入ってきた。新たな敵の出現に驚く一同。
「マズロー!?」
ジェレナも驚きマズローに目を向ける。
「………」
マズローは何も言わず指を向ける。
最高率でジェレナが動く。
(サポート?)
ジェレナが手を回しデレックの攻撃を受け流し肩を踏みタニアとウェズの方へ動く。梦がジェレナの足を掴み地面に落とそうとすると長いジェレナの舌が梦の首を刺す。
手が緩みタニアとウェズを同時に向け口から液体を飛ばし貫いた。
タニアはとっさに腕で防御したが手負いのウェズは心臓を貫かれてしまった。
「マズローやるときは言ってよ…まぁうざいやつ殺せたけど」
ジェレナはそう言い振り向くがマズローはすでに姿を消していた。
首を抑えながら梦はジェレナをタニアから引き離そうと服を掴み投げ飛ばす。
「口と指、」
守れなかった苦しさと自身の怒りに震えたタニアがジェレナの懐に潜り込むと両手を掴む。抵抗しようにもタニアは筋力が強すぎる。ピクリとも動かない。みるみるうちに身体がガラスに変化していきそしてジェレナの手を握り潰すと足で顎を砕く。
「ご、っぎ、ァ…マがっ!!」
さらに両足をデレックが潰した。
「梦!!やれ!!」
と叫ぶ。
デレックが翼を広げ離れ歩が耳を塞ぐ。
「 」
自身の遺漏の名を口にする。
悲鳴。
手足と口を潰されイモムシのように這いつくばり声にならない枯れた声を上げながら何かから逃げようと藻掻いているジェレナの頭を掴み梦は壁に打ち付け破裂させた。
「……」
沈黙。仲間一人失った。だがそれは相手も同じ事。
「遺体は後で回収する」
連れて歩くのは危険すぎる。胸が裂ける思いだがウェズの遺体は此処に置いていくしかない。
デレック達は更に奥を目指し走り出した。
――――
アンネマリは柄にもなく悩んでいた。いつも余裕綽々で周りを翻弄する自分が意中の相手と組織の仲間に板挟みになっている事に。
一番役に立てる方法?
それはペルケトラヴィマスの仲間を裏切ることになる。好きという気持ちで裏切るにはあまりにも重い。だけれど…
『…嬉しいな』
あの顔、声。私に微笑んでくれた。愛に応えてくれた人。厚かましいけれど私にとって運命の人。だから、私の運命は決まった。
「首と地図」
この組織を壊すのが目的ならそれを手伝おう。住民の首を手土産に場所を教える地図に私がなればいい。もう紙の地図なんて要らない。
アンネマリは遺漏濾過ダム湖のスイッチをオフにし電源を叩き壊した。
ダムが止まりエネルギー供給がストップした。
「後は…」
カジス、マズロー、ジェレナ、誰でもいいから隙をついて首を取る。デメテルを洗脳しているマズローを狙うべきだろう。
『豊穣の為に』
私も悪だ。帳消しにはできない。あの人の隣には立てない。だが贖罪はできるはず。
振り向こうと体を動かすと。自分の首が転げ落ちた。
「……あ…」
誰かを殺す前に自分が死ぬとは。
――――
一刻も早い終止符を打つために。
「タニア」
「はい?どうされました?」
タニアはデレックに耳元で指示を出され別の道へ走っていった。
最奥には会議室らしき場所と個人用の部屋へ続く廊下があった。そこにいたのはペルケトラヴィマスのリーダー。
「吾輩の名はカジス・ウルボナス」
カジスは歩達を睨みつける。
「アンネマリを洗脳したのはお前達か。マズローが裏切っていたと話していたぞ。始末する手間がかかったと」
しかし歩も一歩前に進む。
「許せない…僕を慕ってくれた娘を死に追いやるなんて…」
「許さない」
「お前こそ…アンネマリを誑かしたな」
「「殺してやる」」
アンネマリは正しくファム・ファタールだった。




