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黄昏のオダマキ  作者: ないある
戦々恐々編
47/56

47話【ポイント・ネモの天獄】

精神的な面で辛いシーンがあります。

二人だけで良い。2人は死んでも死なない。だから片方が生き返った時に動けなくても片方が救えば良い。どちらも動けなくなることを避ければ時間さえあれば勝てる。

ランバは両手を動かし空間操作で非常に強力なオミッションやエラーポイント・ネモに集める。大量殺人などの大罪を犯した遺漏者も突っ込む空間【天獄】を作り出す。

これはただの私刑である。しかし秩序を保つ役割を持つ自分でしか今後の死者を減らすことはできない。

ランバが休憩している間中では乱闘が起きている。血で血を洗う地獄絵図。だが中にいるのは力を得て増長した神を騙るような驕った者共だ。エラーがどんな人生を辿ったか、遺漏者がどの様な生まれかは関係無い。他者を傷つけるから集めた。

「私は何処まで人の匙加減で生きれば良いのだろう」

人と暮らしたい。でも人とは違う規律がある。秩序を守る為。そうは言うが人の側で人から見て人道から外れた様な仕事。

「ワタクシは何も言うことはありません」

「……」


――――

 

数年前のポーランド

お腹が大きく膨らんだお腹を優しく撫でて耳を当てる。

鼓動、内側から揺れる腹。メトーディはその動きに微笑む。

「あぁ、ウェラ…君に似て…とてもとても元気いっぱいだね。」

「検査では女の子だったし…本当に君そっくりの美人さんになるだろうねぇ」

そう微笑むと妻のウェラはは笑顔になった。

「嬉しいわ親子3人で初旅行は何処にしようかしら…」

初旅行だなんて気が早い。まずは安静にしてもらわないと。

産まれるまで懸命に世話をした。日に日に辛そうになる君にどうしたら少しでも安らぐのかを考えて健康を祈った。

出産を終えてから母子共に無事と聞き心から安堵した。

入院が終わり家族3人での生活が始まる。

「俺が家事するし仕事も休む…だから今はとにかく二人は体力を回復させて」

「…ありがとう…本当に」

そう微笑む妻の顔はやはり疲労で一杯だった。何とか無理言って休みを貰い家の家事を全て引き受けた。

本やネットを読みあさり『妊娠性痒疹』や『マタニティマッサージ』という言葉を覚えなんとかウェラが妊娠中も快適に過ごせるように配慮した。

――――

娘が1歳になってから全てがおかしくなってしまった。

一番世話が大変な時期かもしれない。しかし彼女が口にしたのは最悪の言葉だった。


知らない男がいる。その男は首を傾げている。この奇妙な空気だ。無理もない。 

「貴方はただの戦犯の子種役」

「もう用済みだから【本当の父親】のプシェメク・ピウスツキと暮らすからもう縁を切るから」

「え」「は?」

本当の?本当のって何だ? 

「なぁ、何を言ってるんだ?…」

俺は…俺、それって…俺は父親とも見られてないし愛すら無かった…?そもそも…一回も抱っこさせてもらっていないことに気がついた。

『これ以上居座るなら警察呼ぶわよ』

「……な、なんでっ…、なぁ…」

「うだうだ五月蝿い」

「貴方の血が嫌いだから」

愛を装う下劣な魔女がそこにいた。

もう、耳を塞ぎ何も聞きたくなくて絶叫し蹲るしかできなかった。

「……なぁ」

浮気相手の男…プシェメクが口を開いた。先ほどから視線の端にちらついていたその男を見たくはなかったが…。

「俺、離婚してバツイチになったって聞いたのに…ドン引きだわ。何考えてんだよ」

「わざわざ何も知らない俺も巻き込んで何がしたい訳?こんな胸糞ドラマ未満の茶番見たくねぇんだけれど」

男は立ち上がり詰め寄る。しかしウェラは笑っている。

「今此処で理由を話さないと何も解決しない。」

「貴方はメトーディの絶望の為の道化」

プシェメクすらも道具でしかない。母は最初から誰かを愛してなどいなかった。

話を聞くと数代前の先祖の女を父の先祖に手酷く捨てられた上に流産させられた上に殺されたと。その悲劇を血が繋がっているというだけで無関係のはずなのに復讐を遂げようと同じく血が繋がっているだけで無関係な子孫に絡んでいる。

酷く惨めで酸鼻極まりない。そんな事しても意味がないのに。関係など無いことに巻き込まれたというわけだ。プシェメクは本当に巻き込まれただけだ。

 

母は父の祖先に自身の家系を蹂躙された。それを今更ほじくり返して父に八つ当たりしている。父は何も知らない。ただ愛に応えて愛しただけなのに。ただ娘を抱いてやりたかった。抱きしめて、その温かさに触れたかっ た。


「無関係な他人を巻き込んだ時点で正義なんてねぇよ…本当はただ他人を弄びたいだけだろ」

「いや?そんなことはない」

「今さらお前の言葉は信じられないな」

「…そう」

ウェラは隠し持っていた包丁を取り出した。

「おいっ!逃げろ!」

大声でプシェメクはメトーディを外へ出るように突き飛ばした。

――――

痴情の縺れというのはあまりにも闇が深い。

愛とは何なのだろうか。

「…ぅっうっ…」

悲しい。とても悲しい。今は娘に会う気力もない。あの女の血が流れているのとかはどうでもいい。会わせる顔がないんだ。

――――

数年後

8歳になった。祖父母に育てられた私は父や母という存在は記憶にない。1歳の頃浮気?のようなもので殺人事件にまで発展したと聞いた。父は生きているが重度の鬱病で私を育てられないらしい。

祖母の『ジャネタ・レヴァンドフスカ』と祖父の『ダウィド・レヴァンドフスキ』はとても優しいがいつも悲しげな目をしている。それでも愛してくれた。ただ私を甘やかしすぎな気がする。少し太り気味になってしまった。

オミッションやら遺漏とやらで部屋にいることが増えてしまった。アルバムを捲ると父と母が写る写真があった。

父はとても悲しい人だったらしい。

まだ2桁にも満たない私にそんな話はするもんじゃないと祖母が祖父に怒鳴っていたがそれまでに聞いた話。

妻に浮気をされた。

浮気相手はなにも知らなかった。

喧嘩になり浮気相手と母はお互い死んだ。

愛していた妻を殺された。

そんな苦しみが父を変えてしまった。

――――

結界が緩むと父が行方不明になった。この国から逃げたかったのか。それともただふらふらと無意識なのか。私はひたすら他国へ行こうとする周りの人達のように様々な国を歩いた。

リトアニアやチェコにスロバキア…沢山巡った。父はハンガリーで見つけた。

人の燃えカスが沢山落ちていた。どうして?どうしてこんなに理不尽な目にあっているの?

私に近づく。異形の怪物。

「かぁあいいっ…ね…ぇ」

「だっ…こ……させ…て」

「だだごで…ぎ……いぉ…っ」

「ぱぱだ…よ…ぉっお…っ!」

「ぱ……」

その変貌した姿では私を抱き上げることは叶わない。それでも愛したい、自身が父親で愛していることを伝えたい。手のないヘビのような姿。そんな叫びを見て、私は自分の生まれを呪ってしまった。

私が確執の原因であった。もし父母どちらかが不能であれば良かったのにと周りも呪った。

――――

叩き潰してしまった。


父親殺し。ここまで悲惨な運命を辿ったのに実娘に殺された。殺した。

私のせいで

せめてその異形の遺体に血まみれの私が抱きつくことしか出来なかった。

それに…復讐劇の為に産まれた私は何?道具でしかないの?

「パパ…愛してくれて…ありがとう…もう…苦しくない…よね…汚い此処(現世)じゃなくてあっちで一緒に暮らそう…ね…」

「だから…っまっ…ててね…ぇ…っ」

絶望した私は父と同じ運命を辿った。


――――

「…ただ、ランバ。死なないとはいえ何度も死ぬようなことがあれば『心』がある貴方は壊れてしまいます」

「先ほど能力を使い疲弊している事も忘れないでください。それだけです」

その心配に心はあるのだろうか。しかし自分からアンガシャの秘密をバラしたり自律思考はあるはず。

「了解」

雀と雪の結晶が混ざったような姿のエラー、最初のオミッションの『翠嵐海』、そして植物を自在に操る遺漏者の三つ巴に二人で飛び込んだ。

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