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黄昏のオダマキ  作者: ないある
戦々恐々編
46/56

46話【意地でも守る】

暴力描写と精神的に生々しいシーンがあります。

あけぼのクラブから飛び出たのは旬と人見だった。メタは「外は怖いから隠れていて」と言われバグシィと一緒に中にいる。

「起きたばっかりなのに!!」

人見が叫びながら旬を追いかける。まだ体調が分からないのに戦いに向かうなんて。

そういえばアメトリンの人達は大丈夫だったか。荒見さんがあらかじめ注意を促していたけれどカクというやつはアメトリンの方は何もしていないという保証は無い。大丈夫だろうか。

そんなことよりも今はカクを止めないと。


燈矢はルルイエを出した反動で疲れが溜まり影に隠れて呼吸を整えている。

花菜が遠距離で水を操ろうと思った燈矢に言われ水は危険だとホースを触手のように操るしかできない。自身のバイタリティが 薄れるように感じる。


卯木の攻斬撃を躱しながらギャラルホルンを吹く隙を伺うが彼女が隙を作らせてくれない。周りの木々もろとも切り捨てようとしてくる。卯木の遺漏的に蔦で攻撃してもすぐに再生して這い上がってくる。ゾンビのような女。

ガキン、と金属音がさらに増えた。

人見が自衛の為に持っていた自衛の為の武器の鉈で攻撃してきた。更に振りかざそうとすると蔦に弾かれてしまう。

カラン、と無機質な音を立てて転がってしまう。拾い上げる隙もない。戦った事などない。ただ情報に特化した遺漏では何もできない。

でも、情報戦なら得意だ。

ぜぇぜぇと息を吐きながら言い放つ。

「情報…欲し、いんでしょ…?…あげるよっ!!」

カクの脳内に世界中の膨大な人々の会話を無理矢理受信させる。

「…!?…ふふ、お前の遺漏…羨ましいよ」

脳が壊れそうになり鼻血を出しながらしゃがみ込む。大きな隙が出来た。

卯木が刀で首を切り落とそうとして人見が血を吐き出しながら床に落ちた鉈を拾い上げ震える手を叱咤し振りかざす。

しかし脳に無理矢理入り込んだ情報を遮断するためにカクは蔦で自身の脳にダメージを与え気絶、そして更にダメージを与え気付けするという荒業を行った。

「情報は後で余すことなく整理するよ」とする貪欲な知識欲に人見は歯切れが悪く「そう…」と返すしか無かった。

 

しかしその前に人見と卯木の間を裂き旬の触手ががカクの喉と口を裂く。

「がッ…ァっ」

「……」

「カク…だっけ?」

今の状況を振り返る。目が覚めたら知らない場所で目を覚ました。ぬいぐるみのような子が猫と一緒にいた。ベッドの脇に兎のぬいぐるみが置かれていた。そして自身はコードに繋がれてかなりの重傷。記憶をたどると地獄のような思い出。

兄がいて、そして陋能転国の知り合いもいる。

「旬!!」

影に隠れていた燈矢が顔を出し今までにないくらい大きな声を上げた。目を覚ました。話をしたい。しかし今はそれどころではない。唇を噛みながら戦いに戻らないと。でも旬を巻き込みたくない。でも彼が自分から動いたなら…。

 

振動が響く。まひるが自身と兄の身体を貫いた鋭利な刃を折り2人は爪を立てて壁を這い上がる。血塗れでまだ刃が刺さっている。それでも這い上がり闘志を見せてくる。


カクが獣人の姿をしている兄妹は遺漏により迫害された同志と決めつけているようだ。まだ息のある2人を無視し旬、燈矢・花菜との戦いに決着をつけようとしている。

「無視された……まひる、ばっぱを安全なところに運んで」

「うん」

体中に刺さった刃を抜き地面に投げ捨てながらまひるは荒見に向けられた蔦を爪で裂き遠くまで運び出した。

「…まぁ僕もこれじゃあ全然役立てられないや」

まひるがいなければ発動できない。特にカクは恐怖なんて感じなさそうだし。

「人見ちゃん。もう限界でしょ」

「…お恥ずかしながら役立てず」

「いや役に立ったさ」

刃を抜き垂れる血を気にもとめず人見に真昼の後をついて歩くように指示を出し蔦や地面の警戒をしながら後ろを歩く。燈矢に視線を向ける。

「燈矢は?」

「まだ動ける。旬が起きたんだから、俺も…」

「そっか」

そう言うと敦己は治療の為に戦場を後にした。

――――

カクは卯木を嬲り続けていた。

「怪我がすぐ治るんだよね」

「旬と同じようで違う」

ぐり、と傷口を足で抉るように擦り付けても痛みに喘いだりしない。すぐにじわじわと再生していく。

「…」

「何も言わないんだ。そっか君たしか自傷が趣味だったね」

「…」

「隠れてストレス発散にやってたのバレバレだよ」

その言葉に花菜が叫ぶ。

「やめろよっ…!そんなんだからモテないんだろ!」

花菜が足を引っ掛けるように卯木を狙ったカクの足に蹴りを食らわせた。

「モテるとかそういうの興味ない」

「そうかよ、きったねぇ人格洗い流してやるっ!!」

しかしまだ立ち上がる。カクの体の硬度が異常だ。

「君の頭の血の上りようは凄いな」

「うるせぇ関係ねぇ。黙ってのびてろ…この─」

「─ザーメンタンクがッ!!!」

カクの体を押しつぶしたのはローラーだ。ローラー付き洗濯機は流石にカクも驚き退いた。

「あぁああっ!?逃げんじゃねぇよ!知れよ!知りたいんだろ!?遺漏の秘密!!」

花菜が叫んだその時

あけぼのクラブに瞬間移動したミキが人見の左足を食い千切り壁を壊し陰に隠れて休んでいた燈矢の前に現れ燈矢の下半身を食い千切り絶命した。

「ぐっ…」

「ぎゃっいだいいだいっ…!誰か助けてっ…!」

限界に近い人見が無意識に発動した遺漏により陋能転国に遺漏で救助依頼を送ると気絶してしまった。

――――

「はっ!?」

旬は後ろを振り返る。今変な怪物が現れた。

「…ミキ?」

カクもまた動きを止めて振り返る。

その隙に花菜は髪の毛を留めていたかんざしを取り出し首裏を貫こうとするが手をすぐさま払われ逆に手の甲に刺されてしまう。花菜はカクの見えない瞳を見つめる。

「…っぐ…っ何笑ってんだよ」

「笑ってないが」

「…いや…あたし自身に言ってんだよ」

こんな目にあってもまだ笑ってる。本当に可笑しい。仲間を守るために命をかけているのに追い詰められて笑ってる自分に心底苛立つ。

「くっ……くふ…」

「あぁ…っ…あたしは…」

仲間を、守れなかった…?

花菜にとっての初めての敗北だった。

「っじゃねぇっよ!!!まだ終わってねぇんだから離れんなよ!!っまだあたしは生きてるぞ!!!」

「トドメ…トドメを刺せや爪甘クソ無能のゴミチンカス!!」

「爪が甘すぎてお前が死ぬのが目に見えるぞ!!」

何時でも首元を噛み付いてやらんと目をギラギラさせている。手足が壊れてもまだ胴体がある。胴体がなければ頭だけでも転がりお前を殺してやろうと体を這わせる。

「テメェの血で服をブチ汚して洗い直してやる…!」


人見の止血をする丁香兄妹。燈矢に駆け寄る旬。場はさらに乱れていく。

「兄さん!」

駆け寄った旬は比較的安定しているように見えるが燈矢はその内心まだ恐怖に満ちていることを察した。

「再生できるでしょっ!?兄さんも!」

燈矢に再生をしろと叫ぶ。

「いや、俺はそんなの…」

出来ない。でも、神話的にはハスターとクトゥルフは兄弟という扱いで、再生ならあの神話の神々なら大体出来そうだが…。

倒れ込んだ燈矢は息が荒い。此処でできなきゃ死ぬ。

(痛いとかそういうのも消える感覚がする…)

生きなきゃ、生きて、旬に土下座しなきゃいけないのに。ただのひと言も謝れていない。燈矢は自身の限界まで遺漏を集中させ再生を強く意識した。旬の言う通り身体は再生できたがもう限界で意識が途絶え旬の声と遠くから聞こえる敦己の声が遠のいた。

――――

異常な緊迫感。緊張と絶望、悲しみを感じ取り

バグシィは尻尾を振り何かを呼び出した。

それはカクと面識があり、かつ不信感を感じていた人物。ムフパ・ズマリディだった。

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