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黄昏のオダマキ  作者: ないある
戦々恐々編
43/56

43話【あけぼのクラブにて】

「人見、体調は?」

「ん、大丈夫だよ〜鼻血も治まってきたし…それより、誰か来た…」

あけぼのクラブ・アメトリンでは警戒が続いていた。人見は限界からまだ回復しきっていないにも関わらず常に周りの気配を探っていた。そこに底知れない気配を感じた。

「かぐれてらい」

荒見に隠れてろと旬とメタの眠る部屋に押し込まれる人見。手には護身用の武器である鉈を持たされた。暗に『2人を守る砦となれ』と示唆されている事を読み取った。戦えないがもしもの時は砦になると。

「うん、隠れてるね」

さらに近づく気配。

「敵の拠点に来るよねそりゃ」

まひるが立ち上がり花菜も戦闘態勢に入る。

「態々ぶち殺されに来てくれて助かるわ」

カクという名前しか聞かなかったあけぼのクラブ、その姿を知っている陋能転国の面々が外へ出る。

そこにはあけぼのクラブに向かってくる帽子を被った黒髪の男がいた。彼が鷹目カクだ。

「陋能転国を潰したんだってね?今は【あけぼのクラブ】の傘下かな」

「ありがとう。潰してくれて」

「あの女はやり方が緩かったよ」

オミッション、エラー、遺漏…何故誰も研究しようとしない?オミッションや遺漏という名称を名付けた異形頭の所在もとカクはそれを知りたくて動いていた。

カクは自分の目的を優先し過ぎて少しでも他の事を優先すると烈火の如く怒りだす悪癖は自覚していた。しかし治しようがない。

卯木はカクのその発言を聞き眉間に皺を寄せた。

「結子様をまたも愚弄するか」

燈矢は卯木を小突く。

「いちいちペース流されるな〜?」

「ふん」

荒見は閉じた傘の先をカクに向けた。

「はやく帰らい」

買えるように促すがまた一歩近づく。帰りには毛頭無いようだ。

ダァン!!重いショットガンの銃撃の音。

「チッ…」

カクは思わず舌打ちをした。銃ではない傘が銃として運用されているなんて思いもしなかったのだろう。

「ミキ」

肩に乗せている生き物。ミキが体を膨張させ肩代わりし地面に銃弾が転がる。

「殺す」

カクが殺意を明確に表した。

それを聞いた途端荒見は軽機関銃に切り替えたように連続射撃を行った。

ダダダダダッ!!と大量に銃撃が発射されるがそれを走り躱すと物陰に隠れカクは手の中に『ギャラルホルン』を持った。これは遺漏の元になった『廃蛾魔人の邂逅』の主人公ナノクの魔笛『ギャラルホルン』であり吹くと草木等の土が人々を破滅させるために動き出すものだ。

草木や土が動き出し荒見達に襲い掛かる。

「バリア」

荒見はそれを全部バリアの一言で防いだ。子供が遊びで『バリア』の一言で敵の攻撃を無効化する理不尽なものを流石に全て防ぐ芸当は出来なくバリアにはヒビが入っているがこの攻撃は防ぎ切れることが分かった。

「あの婆さんの遺漏…滅茶苦茶だな」

カクが苛立ち立ち上がると振動が起きた。体が振動により動きにくくなった所を卯木と燈矢が突っ込んできた。

ギャラルホルンと硬い腕で卯木の手に持ったハンマーを防ぎ逆に破壊した。

「お前…っ!」

武器を失った卯木は一旦後退した。

燈矢は脳内で(海を出したら利用されるだけ)と考えていた。しかしただ殴る蹴るでも駄目だ。

「ルルイエ」

近くの海面が羽状し海底都市が現れる。

狙いをカクとミキに定めるとカクが眠気に抗えず倒れ込む。ミキには効かなかった。必死に起こそうとわちゃわちゃお動いているが簡単には目覚めない。

燈矢は今のうちに攻撃をするために全力で力を貯める。

しかしギャラルホルンで変化した土地が動きカクを守るために動き出した。

「寝てても動くのか!?」

自立して動くなんて陋能転国にいた時も聞いていない。

まだカクは目が覚めない。しかし攻撃される。

まひるは回避し続けているが躱しきれなかった。それを敦己が鋭い爪で弾いた。

「カク!起きてアイドルの僕を見てよ」

悪夢に囚われているよりも僕を見ろと大声で叫ぶ。あまりのマイペースさに守られていたまひるも「え」と目を点にした。

「…ファンサービス旺盛だな」

声量だろうか。カクは立ち上がる。

「ばっぱ、盛り上げて!!」

「はいよ」

雲が変化した。

子供が妄想する『雲に乗れる』つまり質量があるということ。それをまひるの振動により落とさせた。

「はぁ…?」

雲なんて柔くて何もないだろう。そう思ったが

カクにより周りの変化したヒノキを『火の木』に変え燃え盛ると雲に燃え移る。火事にならないように花菜がいるがかなりの荒業だ。

雲を持ち敦己がカクに突っ込む。

「熱くなってきたなぁ!!お前も燃えろよ!!」

獣人の重い火の拳がカクを劣勢に追い込んでいく。

「逃げんじゃねーよ!殺すんだろ!?」

花菜はホースでカクを拘束し回避できないようにした。


「これけっから」

卯木に傘を差し出す。それが刀に変わった。

遺漏の限界になったのだろう。鼻血を出して座り込んでしまった。

「おいはもう動げね、若い子に任せっがらや」

「…はい」

卯木は再びカクに向けて突撃した。


ミキにより食いちぎられたホースが床に散らばり消える。

「お前強いな!獣人と同じくらい!」

敦己が笑い爪を立て引っ掻く。両腕が鎧のようになっていて硬いカクの腕はそれを弾き同じように爪を立てる。そして足で蹴りを入れる。殴り、殴られて特殊な遺漏を押しつけ合う泥仕合。

ミキはカクの方にいて離れようとせず燈矢が空を飛び超速で弾くと吹き飛び倒れまひるが振動で動けなくしてミキを叩き潰そうとするが自身が怪我をするのも気にせずギャラルホルンを吹きカクはミキを守ることを最優先にした。

まひるはそれを見て人質にできると考えた。しかしそれをする余裕ができなかった。地面が陥没し敦己が落ち底が鋭利な刃だらけになっており敦己は串刺しになりまひるが助けに行こうとしたがまひるも同じ穴に落とされる。荒見は蔦で拘束され首近くに蔦の鋭利な先を向けられた。

形勢が一気に逆転した。

「あの中にミキと同じ気配を感じる」

今この場で戦えるのは燈矢・花菜だけ。あけぼのクラブにいれるわけには行かない。

「シカトぶっこいてんじゃねぇよ馬鹿にしすぎだろ」

「まだここに三人いる」

花菜はホースを使い、燈矢は飛行能力、卯木は自切と回復を繰り返しながら突進して周りの蔦を切り刻んでいた。

それを見てカクはミキに指示を出した。

「ミキ、中にいるやつ捕まえて」

ミキが一瞬で姿を消した。

――――

メタと旬の眠る部屋の中に現れたミキ。それに気がついたバグシィが威嚇をしている。

「うわぁあっ!?」

人見は飛び上がったがとっさに鉈を向ける。

「油断大敵!小さいが凶悪な強さ…!」


「シャアアアアアッ!!」

バグシィがミキに対し威嚇をしている。

「ヂィイイイッッッ!!」

ミキもまたバグシィを威嚇する。

メタが飛び起き何事かと下を見ると二匹の生き物が威嚇しあっている。

「なに、その…虫?違う…熊?」

虫とクマが組み合わさったようなバグシィよりも小さな生き物。

「メタ!ベッドの裏に隠れて!」

人見はそう叫ぶがその前にミキは口を大きく開き旬とメタを丸呑みにしようとした。

そこでバグシィが何かに気が付き尻尾を大きく振った。ミキはそれを慌てて止めようとする。

─すっと人影が現れた。

アンガシャがベッドの縁に立っていた。ミキは怯え震えているが抵抗しようとする意思は消えていなかった。


「病人の寝込みを狙うとは面白い事を考えますね」

「対等にしましょうか」

「一度だけですよ。気をつけてくださいね」

バグシィの頭を撫でて去る。その瞬間メタの反対側のベッドに寝ていた旬が目を覚ました。


「あれ?さっきのは?」

人見は首を傾げる。ミキがいない。


あけぼのクラブ外

「…ミキ?」

ミキの気配があけぼのクラブから消えた事に気がついた。

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