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黄昏のオダマキ  作者: ないある
世界編
40/56

40話【タンザニアにて】

タンザニアのアルーシャにて


ムフパ・ズマリディ。生まれも育ちもタンザニアのアルーシャで育った男。今現在タンザニアでは可能な限りの外出禁止令が発令されている。だが生きるためには外で食料や日用品が必要だ。あまり変わってもいない気がする。オミッションとやらは自警団が倒し人々の生活が脅かされるといった実感はあまりない。

実際ムフパも今外を散歩しながら日光を浴びながらダフ(タンザニアのココナッツジュース)を飲んでいた。

建物の影に猫が蹲っていた。足にゴミが絡まり動けない。おとなしい気質なのか力無く「みぅ…」と鳴いている。

「あー」

中身が溢れないようにダフを地面においてから右手で優しく撫でて落ち着かせ、ゴミを取ってやる。

猫は最初こそヨタヨタとしていたがすぐに元気に走り去っていった。

「元気そうじゃん」

ダフも飲み終える頃には散歩も終わり何となく良いことしたと気分も良くなり夕方頃帰路に着いたムフパは家の玄関を開く。

「おかえり」

そうリビングから話しかけてきたのは同居しているブライトン・ハミシだ。その姿は遺漏の影響で変質し仮面をしていて顔が見えなくなった。本人は別に気にしていないようだが。

その遺漏は相棒のギャルソンと共に主人公がペルシルを使い道を作り迷子の異世界の住民を元の世界に返してあげるっていうストーリーだったかな。『ギャルソンペルシル』っていう幼児向けアニメに出てくる悪役(ただイタズラするだけしてコテンパンにされるお決まりのただのいたずらっ子)。だが能力は意外と凶悪だ。杖みたいな修正ペンで文字通り消すんだから。溜まったもんじゃない。こいつがいつも気だるげな引きこもりで助かった。

「夕飯はお願いな」

「はぇ?今日は俺じゃなくてブライトンが担当だろ?」

「オレ今日はやらなきゃいけないことがあるんだよ」

「やらなきゃって何さ」

俺が疑念を浮かべ問いただすとブライトンは尻尾をフリフリと揺らしながら山積みの本を指差す。

「拾ったこの本達、今日中に3冊は読み終えたい」

「おいふざけんなよ」

 こいつのマイペースは今に始まったことではない。俺の趣味の動画投稿はもう出来なくなったのにこいつは趣味を満喫しててなんだかとても不公平だ。

仕方ないから ゼアポット(気化熱を利用した冷蔵庫のようなもの)の中身を見るが…中身が空っぽだ。

「野菜…何処…」

「さっき自分で食べてたろ?」

…朝どうしても腹が減って2人で仲良く食べた光景を思い出し頭を抱える。

「ついでに買い出しすればよかった…」

仕方ないから買いに向かう事にした。

「ハハ、夕飯楽しみにしてるから早く帰って作ってくれよ」

「へいへい。ご注文どうも」 

家を出て夕焼けの日を浴びながら人通りまでの道を目指して歩く。しかしまぁこの時間でも外にはまだ人は多いはず。不必要の外出禁止令は無意味だったということか。

異常な気配を感じて目を凝らすと見知らぬ人がいる。ここら辺に住む人とは顔見知りだが東洋人はいなかったはず。

「…誰だ?」

肩にに虫のような生き物を乗せた男。

ぐにゃり、突然何かがが歪んだ感覚。

――――

神話関連のオミッションはどれも信仰対象とは同一視されていないのは同じだが国ごとに遺漏への対策はまるで異なっている。

免許制、使用の完全禁止、申請義務化、元の作品がある場合可能なら作者に連絡し著作権の確認、軍用化とあらゆる対策が国ごとに行われているのを見てきた。



今まさに世界中が再び繋がったことによりさらなる混乱、国ごとにバラバラであり世界中で連絡が取れなかったことへの弊害が巻き起ころうとしている。

結界が消えた?知り首を傾げている。

「何故今?理由は?…日本に何かあったのか?」

日本に向かおうとするが現地民に声をかけられた。

「…誰だ?」

「いや、自分はただ」

「……名前は?」

「カク。鷹目カク」

「失礼。俺はムフパ・ズマリディ…それで知らない人がいたから話しかけたんだか…」

ちらりと肩に乗っている生き物を見る。

「そいつは何だ…?」

「知らない。だがミキと名付けた」

会話はあまりしたくないという雰囲気をピリピリ感じる。

(そもそもどうやって来た?此処らへんに東洋人がいたら目立つ筈。情報は広まりやすいのに…)

「何故此処に?」

「世界の真実を暴く為」

「は?」

何を言っている?まぁ確か不思議なことは起きたが真実を知るなんて大それた事は国とかに丸投げでいいと俺は思う。

「お前こそ何か用か。先ほどから質問ばかりで邪魔だ」

空気がピリつく。なじみ深いこの土地が急に俺に牙を剥き始めたように錯覚するほど孤立感を覚えた。

「…」

遺漏を使うか?そこまで思考が進んだ時

「今すぐ日本に繋いでくれ」

そう肩に乗せた謎の生き物に告げるとカクは瞬きをする暇もなく姿を消した。

「日本…」

そこへ行けばカクに追いつけるか…。

「はは、ウケる。行けるわけないだろ」

日本はすごく遠いのに。まぁ、俺が行って何になるんだって話だし。

「はぁ…とにかく夕飯作らないと…買い物…」

人が沢山いるいつもの日常に戻るとなんだか酷く安心した。

――――

『結界が壊れました!結界は生きていました!やばいやばいグローバルが加速してマッハだ!!!!』

「死んでも自分を殺した人達に貢献させられるって無限地獄だよなぁ」

ブライトンはムフパが家を出た後人見がジャックしたラジオを聞いていた。付くはずのないラジオから音が聞こえて最初はぎょっとした。それよりもその内容が悍ましかった。

人見という日本人が暴露した実情。

【遺漏濾過ダム湖】

政府が機能しないリトアニア。そんな異常事態で非人道的な解決策を模索した異常な組織があるのだと人見が叫んだ。

遺漏を持つ人をエネルギーに変換し生きたまま半永久的にエネルギー生成の素材にする。

身体が溶けて液体になる苦しみを抱きながら身体を鳥に啄まれるように削られまた身体からエネルギーを作る。それを繰り返し続ける。精神が崩壊してもひたすら繰り返す。

それを実現させる遺漏者が何者なのか。それが気になったが人見という人物はまだそこまで知らないのか話さない。

それもエネルギーを搾り取る為にどのようにして半永久的に持続させるのかも。

『鼻血のダムが決壊しました。失礼しました〜…!』

限界らしい人見の通信が切れてラジオは再び沈黙した。

その後大量の食料を抱えたムフパが家に帰ってきた。

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