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黄昏のオダマキ  作者: ないある
逢魔が時編
26/31

26話【墓前】

レヰチの頭を修繕したと聞き退院後アズメは真っ先にレヰチの元へ駆けつけた。

可愛らしいケーキの模様の入ったカップの頭に黄金色の蜂蜜が垂れた頭はそのままカップの部分は金継ぎされていた。

「わえその金継ぎ好きだよ!」

アズメは喜んで褒めていた。もしかしたら自分を助けたせいで死ぬかもしれなかったのにこんなに綺麗に修繕させてもらえたなんて本当に良かったと心の底から安堵した。

嬉しそうにしながらも何と答えればいいかわからず「ありがとう…ございます」と巨大な両手をモジモジと動かしているレヰチをソファに寝転がる敦己は見ていた。

もっと自分の気持ちを素直に吐けばいいのに。だけれどそれができなくて悩んでいる。

くぁあ、と大きな口を広げ欠伸をしながらそんな光景を眺めていた敦己。

さて…どうアドバイスしてやろうか。そう考えた時

チーン。

無機質な機械の合図。電子レンジが料理を温め終えた音だ。

「ねーぇ…俺休みたいんだけどー疲れたー」

「まだ5回しか電子レンジ動かしてないんだけど?」

電気は双の遺漏で賄っている。いつもいつも人数分の料理を作っているからまだまだ回数は必要なのだが…。

双の文句に答えるために敦己はキッチンに向かった。

こういう時は2人きりにして話の場を設けるのが良いだろう。

 

――――


暫くの差し障りの無い平凡で愛おしい日常。

それが壊れるのはあのオミッションと結界、遺漏が現れた時の様に唐突だ。

アズメが死んだ。

それも恐らく殺されたのだと誰もが理解した。

全身バラバラにされ断面部分は凹凸がなく綺麗だった。そこら辺のオミッションには出来ない所業。

彼が最期に何を思ったのかもわからないし未来が絶たれてしまった。せっかくこれからより親密になれると思った矢先の出来事だった。

レヰチは特に悲しみに暮れていた。しかし異形の頭には『泣く』という機能が搭載されていない。どれだけ悲しくても泣いてコルチゾール(ストレスホルモン)を排出する事が出来ない。そもそも自分にコルチゾールがあるのかはしらないがストレスは感じる。どれだけ苦しくても悲しみの表現が出来ない。

泣き声をあげようが涙も鼻水も出ない。せっかくアズメが作ってくれた造形なのに。

誰が殺した?何の為に?悲しみと怒り、二つの感情がないまぜになり断腸の思いで葬儀を終わらせた。


アメトリンの大きな一角は墓地になっている。人がよく死ぬ今では墓が多く建てられる。元々葬儀屋だった人が管理を担当しているらしい。

その一つ、アズメの隣にあった墓前には『珠美家』と書かれている。さらに反対側には『石黒家』と書かれている。

「あぁ…レヰチさん」

鈴彦がレヰチに気がつくと悲しげに微笑んだ。

「私も喪中です。妹が最近亡くなりまして…」

それを言っても今は何があるかわからないから喪に服す暇もないのだが。

暇さえあれば卯木がお墓参りや墓の手入れをしにやってくる。いつもきれいな花が飾られお供え物をささげて線香をあげる。それほどまでに慕っていてくれていた人が側にいた。それだけで鈴彦は心の澱みが消えていくのを感じる。

レヰチも今同じ澱みに沈んでいる。少しでも凪いでくれれば良いのに。

そう言えばシズも深夜に墓前で黄昏ている事がある。母が亡くなったという苦しみは人には見せないがやはり心のなかで大きな負荷になっている。

「最近家族を亡くした人を見ると身につまされる想いなんです。」

自分の事のように相手の悲しみを感じてしまう。家族が死ぬという事が日常化した現在。それでも苦しみの重さは変わらないのだ。

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