21話【戦場拡大】
「ぎぃはは、」
頭を転がし笑う。その断面からごぽごぽと黒い液体が溢れ出した。
それを見て思わず思考が停止した。
「キショ…いや、キモイ!キモいキモイキモイ!!」
花菜が堪らず顕現させたホースでそれを外に吹き飛ばした。
その液体は形を猫やカエル、蜘蛛に形作り襲おうとしてきたが水圧に吹き飛ばされ壁を突き破り外に投げ出される。
もぞもぞと蠢き個体が集い軍団を作り出していく。
「うわ、あれ66の軍団の一部ってこと…?」
悍ましい軍隊が工場に入り込んでくる。小さいが群れると大きな塊になり体を食い荒らそうと這い回る。身体にくっつかれたらもう終わりだ。
「雑魚が邪魔すんじゃねぇよ!俺は、アイツをぶっ殺さないといけないのに!!」
「落ち着け双」
まひるは双に声をかけながら敦己と視線で合図を交わす。
二人の遺漏は二人が揃った時にお互いの力を一番発揮する。
工場内外に振動が起こり対象になった悪魔達が身動きが取れなくなる。ランバ達も無論振動を受けているのだが悪魔達はその比ではない。
お互い工場の壁に対比するように立つ。
敦己は工場の分厚い壁に足を爪で食い込ませ、まひるは反対側の壁に遺漏の振動で音響浮揚している。
工場には取り残された機械だらけな上に共振、遺漏という特殊な振動という条件が組み合わさり可能になった現象だ。
敦己の遺漏は『まひるの振動を受け恐怖した相手の体を操る』というもの。まひるがいなければ発揮できない。
しかしその力は今この場で最高のアドバンテージを生んでいる。大量の軍団がバエルに反逆し襲いかかる。
更にまひるは地面に着地すると地面を蹴り上げ硬い床の破片や機械をを弾幕攻撃としてバエルに投げつける。
一気に形勢が逆転した。
しかしまだ軍団は残っているはず。
バエルは頭を自身の首にくっつけ戻すと姿を透明にし辺りをかき乱した。
何処に隠れた?何処にいったのか分からず混乱が生まれその隙を狙い一体一体自身の配下を手ずから葬り瓦礫を避けていく。
「あァ、自分の部下を自らの手で葬るのは心が痛む…本当に…自身の力を削るなんて…」
「そうか…自分の軍を減らされることを懸念して出し惜しみしてたんだ」
ならまた軍団を出される前に殺さなければいけない。
ランバは声のした方向にナタを振りかざす。
「英語の着けているメガネは流し台でケーキを着る!」
何を言っているのかは分からないが図星だったのかと思う。声色が慌てている。
姿を現しその頭をカエルに変え舌を伸ばしナタの面に張り付いた。
「っ離して!!」
「ランバ避けろ!!」
敦己が叫ぶ。咄嗟にランバが敦己の後ろに瞬間移動する。
まひるが大量の水を放出しその水に電流を乗せて軍団の生き残りを巻き込みながらバエルを感電させた。
更に『可愛いものを作り出す』レヰチがピンクダイヤモンドで作ったモーニングスターで殴りかかる。
「ぎゃ、ギァアア…ハハ、はっはは!」
「感電して殴られて笑うとかアイツもしかして…」
「それ!以上!!言わないでッ!!!」
双は花菜にそう言いながらも未だこれでもかというくらい電撃を放ちながら殴り続けている。
こいつは殺しを楽しんでいる。母を原型がなくなるほどいたぶり殺した。その報いを受けさせなければいけない。
「まだあったかな…」
お互い情報交換をする為にあけぼのクラブからは人見が、此方からはランバがお互い連絡手段になっている。そしてランバは武器を失ったことであけぼのクラブにある倉庫にある武器になりそうな道具を取り出そうと空間を開いた。
その時だった。バエルが体を変形させ首を飛ばし緊急離脱した。その断面から再び軍団が噴き出した。バエルの配下の悪魔の軍団は散り散りになっていく。
その中に体を小さくしてランバが開いていた空間に飛び込んだ集団がいる。
「っ…瑕疵った…!」
アイツただ自分達と戦うつもりじゃない。アイツは人間を無差別に殺すつもりだっ…!知っていたのに!この空間はあけぼのクラブに繋がっているのに!!
「今そっちに行ったゲロゴミ集団をぶち殺せ!!!」
空間の向こう側に向けて花菜の絶叫が響き渡った。
――――
バエルがバグシィを隠した場所にはランバにバグシィを託した異形頭がバグシィを猫用ケージから救出していた。
異形頭は誰かと話しているようだ。
「えぇはい」
「…バエルですか?…今見た所特に問題は無さそうですが…あの方々で十分ですよ」
バグシィを優しく抱き上げ燃える異形頭にゴロゴロと喉を鳴らしている。
燃えている部分は熱くないようで頭をちょいちょいと手を伸ばしている。
「バグシィの尻尾にも怪我もないですしこのまま安全な所へ置いて終わりですかね」
「…そうですか?」
――――
花菜が出現させたローラー式洗濯機のローラーで蜘蛛の脚を絞るがその都度体を変形させて再生する。
イタチごっこでしかなかった。
「アイツをぶっ殺せる手段…」
何かないだろうか。
バエルも戦いの中で考えを巡らせていた。
どちらの異形頭もこの世の理から外れている。不純な存在。
真に警戒するべき異形頭は燃えている方…しかし何処にいるのかわからない。殺すために力は温存したかったのだが。
あの頭が燃えていた異形頭はスイーツ頭よりも理そのもののような、…やはりわからないものは考えても意味がない。




