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黄昏のオダマキ  作者: ないある
人造オミッション編
18/26

18話【一方その頃】

あけぼのクラブでは陋能転国の人々と共に日常の修復が行われていた。

旬がまだ昏睡状態に陥っており陋能転国の頭がいなくなった現在あけぼのクラブの人々の手を借りる必要がある。

あけぼのクラブもまた陋能転国の協力無しでは日常生活に支障を来してしまう。

双の見回りなど普段の仕事を代わりにする必要が出ている。

今現在外で歩は物資をアメトリンで配り歩いている。

歩の羽は破れてしまって飛ぶことができなくなった。治療できないわけではないのだが治療には順番がある。歩はまだ軽症の部類であり応急処置だけを受けた。

「私には歩を傷物ドラゴンにした罪がある…!」

隣で手伝っている咲弥は何度も謝罪を繰り返している。

「傷物ドラゴン…」

反応に困る。あのときは敵対していた上に結子に催眠をかけられていたから仕方がないのだが。咲弥はどうにも自責の念が強い。

「あんま自分を責めんでね」

咲弥に声を掛けたのは荒見だ。首に包帯を巻いている。

「あ……う、うん」

そうは言うが罪悪感というものは中々取れないものだ。薬を飲んで鬱はかなり良くなったのだがまだ心の整理には時間がかかる。

「…咲弥。これは治療できるからもう良いよ」

「だからや(そうだね)」

歩は柔らかい声色で羽根をを動かしてみせた。

――――

「ランバがいなくても君はあんまり寂しくない感じ?」

バグシィが旬から離れないものだから燈矢は自然とバグシィの世話をするようになった。

バグシィは普通の猫じゃないと聞いたが確かに薄い紫色の毛色も黄色の模様も普通の猫とは違う。神秘的にさえ思えてくる。

旬を心配しているから今はランバに気を向けていないように思える。

「はぁ…目が覚めたとして俺はどんな顔して旬に挨拶しろって話だよな」

返事がないのはわかるけれど懺悔の言葉を吐きたかった。

あんなに酷いことをして土下座で済むわけない。催眠に掛かっていたからなんて言い訳は免罪符にならないと思う。罪悪感、罪悪感が拭えない。この手で沢山臓器を引き抜いた。

バグシィを抱き上げた時ぽん、と前足を鼻に当てた。慰めてくれたようだと勝手に解釈して小さく笑う。

「君は優しいな」

バグシィはクチャクチャと口を開閉する。

「…?」

「……薬のこと?」

こころのくすり。咲弥やシズが正元が作り上げた薬で鬱症状が改善したというあれを飲めと?確かに瓶に入った錠剤ならまだ沢山あるが。

言い当てたようでバグシィは開閉を止めた。

「…確かに良いかもね。でもこれは俺が背負っていたい罪悪感だから」

弟に真摯に謝って、赦されたら改めて考えるとするよ。

――――

千春は埃の溜まった部屋の片付けを終え一冊の本を取り出した。

ライトノベル『イオタの暮らすリンクスにて』だ。

[イオタはファンタジーな山猫座リンクスに静かに過ごしている。最近異世界からよく人がやってきて生活が変化していく。元々の静かな生活が欲しくて星の守護ドラゴンに相談をする事にした。]

あらすじにでてくるこのドラゴンが歩の遺漏の元になっているようだ。遺漏を知る為に様々な媒体に手を出しいつしかそれが趣味になる。人生何があるか本当にわからない。今日も昨日もきっと明日も何かに触れるのだろう。

「知識沢山頭に仕入て困ることなんてないはず」

――――

「ばっぱは今何処に?」

ブレナンは片腕での生活に慣れてきたようで器用に片手での作業に慣れてきた。

「アメトリンの方に。一樹に会いに行くってさ。自分の足で行きたいらしい」

シズは皿を洗いながら答える。花菜が溜めておいてくれた水で洗っている。

「あの人はいつも率先してるよね………書類以外は」

「あぁ、それでその書類はあんたの仕事だ」

シズが秘書の役割を担い信頼されているのはシズもよく知っている。

知らない土地で秘書の仕事をするなんて本人も思いもしなかっただろう。

「あんたは書類仕事得意だよな」

「姉さんが事務系の資格は取って損はないからって色々教えてくれたんだよね。お節介だけれど役立ってるよ」

大学生なら将来の就職に今からでもと色々な資格の勉強を勧められていた。オフィス仕事をするって決めたわけでもないのだが。

「…会えるといいな」

「会えるって信じてるよ」

――――

人見は周りには明るいと思われていたが今も昔も根っこは根暗だ。

人見は放置子だった。

幼い頃から放置子で他の家に迷惑はかけるし叱られるし社会常識を身に着けてこなかった。

何度も両親が知らない大人に叱られているのを見るのは苦しかった。

小学生になってだんだん自分が周りと違うと意識し始めた。臭いし食べ方汚いと。

虐められるようになった。周りと違うということはそれだけ異質に見える。悪目立ちした私はいじめられ更に孤立していく。

中学生になった頃両親が家に帰らなくなった。何を思ったのかも分からない。両親の考えていることなんてわからない。何も、何も教えられなかったから。

その内学校にもいけなくなっていた。無論高校受験なんてする気も無かったけれど。

ずっと一人で気力もなく過ごしていた。保護されても苦しくて仕方なかった。ぐずぐずとその場に泥のようにへばりつく毎日。そんな中オミッションや結界で世界が一変した。

私は、私は変わりたいのになんで世界が変わるんだって悔しかった。嫉妬した。

私に遺漏が目覚めた。傍受して、発信する。それは正に誰かと繋がるための遺漏。私には真逆のような力。でも何処か心の内で欲しかった力好きなものを身に着けて。

自分の好きを発信して伝えることがアイデンティティだと思った。

私の知る人はもう皆何処かへ行ってしまっていない。私は最初からいない子だったけれど。

「こんにちは!大変な世の中を明るく過ごさせてみせてます…私の声を聞いてください!」

私のラジオの第一回目はそうして幕を開けた。


「あの…人見さん?」

その言葉に過去から引き戻された。

「あぁ…鈴彦さん。私貴方に謝らないといけないんだろうなって思ってたんです」

メディアとして人を取り上げる際のリスクについて。

「貴方の妹の結子さん…世界中に悪名を轟かせたんですから」

「………それ、ただの事実ですよ。結子は頑張りすぎてああなった。貴方は事実を述べただけ…責める気になんてなれませんよ」

私が今落ち込んでいるからかもしれませんが。なんて軽く笑っているけれど。

「……ごめんなさい」

一言昔みたいに薄暗い声で謝った。

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