16話【人造オミッション】
「勿論良いよ。わやの遺漏なら直せるからね」
了承してくれたがアズメは前提条件を提示する。
「わやは今作っている物があるからそれを先に完成させてからね」
「作っているもの?」
「人造のオミッションだよ」
その言葉に目を丸くしぶどうジュースやカロリーバーを食べる手が止まる。
「オミッションを…作ってるの…?」
まひるは声を絞り出す。あんな危険な存在をつくるなんて正気とは思えない。
「まぁ概要だけならそう思うだろう?」
「だがね、わや達の目的はもっと高尚なものだよ」
アズメは事のきっかけから語り始める。
「カクさんは神を見たと言っていた」
「神…?」
それは本当なのだろうか。ただの妄想や幻覚ではないか?誰もがそう思った。しかしその疑問はすぐに解決した。
「しかしカクさんは言った『あれは本物じゃない』」
「『宗教の神を模したオミッション』だって」
「その神は『【多くの人間が作り出した人類が考える理想の宗教の神の姿が混ざり合い歪に顕現した姿】だと自身の生まれを説明していたらしい」
その神との出会いが今の実験に繋がっていく。
――――
マレーシアでカクの前に姿を見せたのはナイフを持ち帽子を被る宙に浮く人型。しかしその姿は異様なものだった。
帯化したヒマワリが身体にまとわりつき目が隠れている。下の先が蛇になっている。そして耳には赤い太陽のような模様のピアスが付いている。声は男だった。
『身は太陽と法の神【ミフル】也や』
『無論、紛い物でしかないが』
ミフルといえば千の耳を持ち万の目を持つ神とされている。つまり向日葵の花弁が耳であり管状花の部分が目である
『生命体が【ミフル】はこうでいてほしいという欲望や意識、無意識に抱いている神への畏怖が集合し集まった存在』
『オミッションとは人に作られた存在とも言える』
カクは神というのならばこの世の真理を教えて欲しい。理不尽にオミッションに蹂躙され欲しくもない力を与えられた人間の尊厳は何処にあるのかを尋ねた。しかし返答はなかった。それを伝えるべきではないと判断したのかもしくは知らないのか。
どちらにせよその真実は知ることができなかった。
――――
その話を聞いた時アズメは知りたくなった。肉体という物質よりもこの世界は意識…いや、魂が最重要視されているということなのか?この世の真実は何処にある?何故この世界はこんなにも変化した?
だから神の証明、オミッションの存在の在り方を問おうと人造オミッションの製作に乗り出した。肉体を作り、その肉体を持つ魂があるならば自身の事を話してもらおうと考えた。
「そしてカクさんはわえよりも更に追求した」
「この世界がこんなに滅茶苦茶になったのは誰のせい?この世界、いや宇宙を作り出した神のせいだろう?ってね」
アズメは一息ついてから更に目的を告げる。
「ならさ…その神を見つけて真実を得る。それが我々の目的なんだよ」
「ただ悪戯に遺漏を振るって人助けもどきをしていた結子とは違う。真実に目を向ける為」
その言い方には棘があった。もしかしたらアズメは知っていたのだろうか。あの非道な臓器移植を。
「方法は教えてくれなかったけれどカクさんは結界をすり抜けて外国に瞬間移動している」
カクはその国の現在の秩序。人々の様子を把握している。
「世界中どの国の人達に話を聞いても『謎の生物がオミッションという言葉など共通して教えられている』らしいよ」
その上教えた異形の見た目がバラバラらしい。ランバが目を覚ました時に出会った異形頭とは別の存在…。また謎が深まった。
「明らかに作為的なんだよ。世界が変化してからその名前を教える存在がいるなんてさ」
そしてその中心であるオミッション。
「オミッションを作ればオミッションの構造すべてを把握したことになる。0から1を作るのは大変だけれど手がかりがあるなら可能性は0ではない」
「構造を把握できるという1があればオミッションの存在、発生理由を知れる可能性…2に繋がる」
世界の真実を知れば真に人の為になると考えたのだろう。カクという人物も、このアズメも。若しくはただの知的好奇心なのか。
「…そりゃ大層な事だけどさ…それ作り終わるのに待てって?あと何ヶ月?何年?」
花菜の言葉にアズメは手を突き出し自身ありげに笑う。 「いや!あと2日もあれば終わるから!お泊りして!」
強制お泊り会が決行された。




