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黄昏のオダマキ  作者: ないある
人造オミッション編
14/25

14話【アクリエイティ】

『正元の…あの機械…直せるかもしれない人知ってるから…教えとこうと思って』

「え?」

その言葉に思わずランバは身を乗り出した。

「どんな人!?」

『陋能転国のメンバーの一人だったんだけれど結子様との意見の食い違いで独立した組織【アクリエイティ】の一人…名前は『星場(ほしば)アズメ』

『アズメは機械を完璧に操る遺漏を持っている』

「つまりその遺漏を使って修理してもらうってこと…ですか」

鈴彦の言葉に電話越しから肯定の返事が聞こえた。

卯木の声が小さくなる。人見が集中しイメージを受け取っているようだ。

「海沿いの所でで…ほら、此処だって」

人見が地図を指差すと海辺りの都市の石巻市だ。

「荒見ばっぱのふるさとじゃん…てか石巻市とか大雑把過ぎんだろ」

「石巻のどの辺なのか詳しく聞きたい」と花菜はどこら辺に建物があるのかを詳しく問いただす。

「具体的な地域は?建物の目印は?」

人見は遺漏でイメージを受け取り地図に目印をつけた。

そこは海岸付近の建物が極端に少なく人目につかない場所だった。沢山の機械を使う建物なら大きいだろう。

人見は連絡係としてあけぼのクラブで留守番をするとして誰が向かうか。

ランバは当事者として当然向かうとしてだ。

「陋能転国でランバも疲れているけどさ…前にあけぼのクラブに残って人達が向かうのが良いと思うよ」

千春の言葉に頷く荒見。荒見は怪我がまだ残っており地元民だが行くことはできない。

「俺に丁香兄妹に花菜でしょ?」

双が椅子をガタガタと揺らしている。

「妥当」

花菜が嬉しそうに腕を振っている。完全に戦闘態勢だが戦いに行くわけでない。

「ごめん、本当にごめんって」

ブレナンは自身の腕が欠損したことで外で活動できないことを謝っている。

「良いって良いって。ブレナンのおかげで資料は作れてるんだから」

片腕だけでも器用に荒見の秘書として彼は活躍している。彼は元々難しい書類が苦手な荒見の代わりに資料の製作に携わっている。それに家事も手伝っている。

「そ、そうかな」

「んだっちゃ」

荒見の肯定にマフラーで口元を隠してしまう。

「あ、忘れてた」

隅っこで座り込んでいる咲弥に双がしゃがみ込み目線を合わせて優しく話しかける。

「取り敢えず飲む…?『こころのすくり』」

「待て待て待て薬を回し飲みするな」

まひるが止めに入るが双は止まらない。

「大丈夫、処方箋の薬じゃない」

「そういう問題じゃ…」

双を止めようとまひるが手を伸ばすがその前に咲弥が動いた。

咲弥は迷いなく『こころのすくり』を飲んだ。人を殺した。友人を亡くした。その辛さは耐え難かった。

「遺漏で作り出したゲームの薬だからアレルギーとか副作用とか気にせずに飲めるだろうね。でもね?絵面が良くないの」

まひるがそう言いながら咲弥を見やる。 

咲弥は微笑を浮かべている。一樹はそれは引きこもる前とはまた違う笑顔だと気がついた。昔はもっと不敵に笑っていた。

一度『壊れた』心は万能な薬でも覆らないということか。この『こころのすくり』もそうだが心に効くその壊れた経験を乗り越えるためのものということだろう。


「はぁぁ…まったく…もうう…」

 

一樹はホッとため息をついたが現状の問題について話し始める。

「悪い…ちょっと遺漏使い過ぎて長距離移動が今できない」

「え?仙台から石巻だよ?めっちゃ時間かかるんじゃないの?」

「いや、目的地の海岸付近まで一気に行こうかと思ってもそこまで今行けないって事で」

アクリエイティの建物がある場所は石巻駅からかなり離れている。なら石巻駅じゃなくて別の駅で降りるという手もあるがそこまで回復してないのだろう。

「石巻駅で降りて歩きで向かっても良いんじゃないかな」

ランバはそんなに無理して急がなくてもいいと皆のペースに合わせようと提案する。

「まぁその方が有難い」

昨日の今日で疲れが完全に取れるわけでもない。

「今から行くの?」

うええと花菜はまだ外に出たがらない。

「ゆっくりでいいから準備してこ」

ケハハと花菜の珍しいワガママに笑っている敦己。

準備を終えたら集まるとして一旦解散した。

ランバはバグシィを探しに向かった。いつもあの猫は気まぐれに屋敷をふらふらしている。

最奥の部屋には永海旬が寝かされている。その兄である燈矢は旬の寝顔を泣き腫らした顔で見ていた。バグシィはその側にいた。

声をかけるには空気を読めていないだろうか。その場を後にした。

「…ふぅ…」

バグシィは傷ついた人の元に行きたがる。私は傷ついていないからあまり側にいてくれないのだろうか。

旬の治療なら陋能転国が一番だと思うがあの場所は()にとっては忌地だ。トラウマの場所より治療道具をあけぼのクラブに持っていきそこで治療したいと燈矢が言ったことで保護することにした。



花菜は途中だった家事を終わらせて満足げだ。他の面々も集まり一樹が遺漏で電車を召喚し一同は乗り込んだ。

【この電車は石巻行きです】

電車が揺れ異界を通じ石巻へ向かった。

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