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黄昏のオダマキ  作者: ないある
陋能転国編
12/26

12話【全国規模の大暴露】

「もう、どうにでもなればいい…」

結子は更に遺漏を振るう。指を曲げた途端壊れた壁からもう一体エラーが這い出てきた。大口で口が沢山付いている。(まる)で出来た蛇のようだ。

「………?…え?」

シズが目を見開く。それは、その気配は…シズにとって一番身近な存在。実母だった。

「母さん…?」

行方不明だったのは拉致されていたから?だから突然いなくなったのか?どうして…?

「はは、見たから…」

結子は罪悪感と全てを投げ出した諦めから全部吐き出す。

「陋能転国の悪い所知られたから…捕まえて処分しようとしたとき、『お前の息子を先に殺すぞ』って言ったら…こうなっちゃった」

シズは拳を握り締める。この悪魔は罪悪感を抱く癖にそんな悪行をよく行えるものだ。

「殺せってことか?母さんを?」

「…そうしないと死ぬんじゃない…?」

あはは、と枯れた笑いを結子は笑う。


自我の無いエラーと化したシズの母、それを足止めするべく身動きを取れないように千春が遺漏により提灯おばけの舌で絡め取る。

そして鈴彦はシズを離れさせている。

舌が食い込みエラーはさらに身を捩る。しかし動けなさそうだ。胴体に付いた口が舌を噛みちぎろうとするがその口を

 

「待って、待ってよ…それ、それは…駄目でしょ…」

ランバは声を震わせる。

「ずっと母を探してこんな結末なんてあっていいはずがないでしょ」

「現実は非情だよ…御伽噺じゃないんだから」

現実は努力しても報われない可能性もある。たまたま今回そうだっただけ。


「……」

「………」

「…、………」

ずっとずっとランバは考えていた。私は役に立てていない。今回だって私はただの移動手段としてかなれないのか?

「わ、私…こんなの、嫌だ…」

しかしその言葉に卯木は冷たく言い放つ。

「嫌だから何です?現実なんですよ。見た目が違う、気持ち悪いと差別される事実と同じ。嫌なものはそこに存在するんですよ」

自身の首裏を触りながら言う。背中には忌々しい遺漏がそこにある。

 

「娘っ子ら何語っでっかわがんね」

荒見はどれほど苦しめられれば悟ったように悲観的に厭世するのか測りかねている。

 

「………」

書き換えれればいいのに。この構造欠陥の現実を。

でもそんなの不可能で…。



「皆さーーーん!!大大大スクープですよっ!!」

場違いな明るい声が響き渡る。


ずっと陋能転国には正元の道具で作り出した結界か張られていた。そのせいでその内部にあるドス黒い闇は隠されていた。

「陋能転国は……人間を素材として利用していたんですよ!!」

この声、双がラジオでよく聞いていた波佐本 人見(はざもと ひとみ)の声だ。

「陋能転国の医療技術の臓器移植は………たった一人を生きたまま何度も身体を抉り出しあまつさえ慈善事業として皆様に提供していたんです!!とんでもないスキャンダルですっ!!!」


赤裸々に語る瞳が髪の毛で隠れた少女。全て遺漏で見てしまったのだろう。そしてそれを電波として日本全国に発信している。


「あ………」

結子はそれを悟ってしまいまた、笑う。

「人生嫌なものはそこにある…。現実はいつも…こう…因果応報…ははは」

  

―――― 

ごめんなさい…。完全な正義ではない。でも完璧な正義なんて今の世界ありえない。

 だから、悪と言われようと最悪の能力だろうと私は続けたい。だから道になって。そう思っていた時点で私は誤った道を歩んでいた。はは…。

どれだけ取り繕っても被害者を出した時点で善ではない。

人を傷つけて…もう、私は八方塞がりだ…。ごめんなさい。

「カク……や…り…、…ちがっ………てた…」

身体が絶望に行動して変化していく。…あぁ…これだ。石黒ヒム、永海旬と同じ…。

ミイラ取りがミイラになるってこういう事か…。 

――――

結子の体が変形していく。口の付いた箱の中から多足の人の体。そして首から上が目玉のような形に変化したエラー。

箱から飛び出したアパテーということだろうか。

その姿を見た途端血飛沫が上がった。

  


「結子…結子?…荒見さん……?」

結子と荒見を交互に見ながら鈴彦は硬直していた。

「ばっぱ!!」「荒見さん!!」

 

荒見の首に風穴を開けられていた。


 

荒見は首に手を当てて溢れた血が付着した掌を見つめる。しかし荒見はそこまで深刻そうな顔をしていない。

「大丈夫だ」


涙を堪え鈴彦が引導を渡そうとエラー化した結子の体を捻るが反発するように鈴彦の指が捻れる。お互い傷つき拮抗状態だ。

「……」


鈴彦は顔は歪めずにただ結子の成れの果てを見つめていた。悲しみ、悔しさ、どうして妹をこんな末路にさせてしまったのか。なぜ妹は此処まで堕ちてしまったのか。場所か、生来の性格か、環境か、全てだったとしてどうすれば解決できたのかなど今更考える暇などない。


結子は首に穴が空いているのにすぐ血が止まった。その上上に平気そうだ。

「あ、遺漏?」

「んだっちゃ」

「……ん?ぇ?」

ランバは目を丸くしている。荒見の遺漏なんて聞いていない。

「ばっぱは人類の幼い子供の共通の思い込みを具現化する遺漏。傘で落下を和らげるとか…。」


それなら動物は人間と同じものを食べられるって思い込む子供がいるから荒見が動物にあげる人間のご飯は普通に動物が食べられるようになるということか。…バグシィに人間用のご飯あげても大丈夫という理屈なのか?とランバは考えたが今はそれどころではない。


子供が大怪我をしてもそれが死に繋がると思わないように今は平気だがまた似たような攻撃を食らえば無事では済まないかもしれないのに。


「…エラー3体相手か…」

焦りと苛立ちから一樹は爪を噛む。

怪我人も大勢いる。それにエラーはまだ分からない事が多い。何より鈴彦の実妹。シズの母。

「クソッ…」

一同が緊張する中人見はただ静観している。面白いネタに食いついているただの部外者でしかない。

 

「あれ…?」

人見はランバを見て首を傾げる。

この人は何者なのだろう。気配が人とは違う。あけぼのクラブの人々も、陋能転国の人々も微かに感じていた普通と違う何か。


「……な、何ですか…?」

前髪で隠れて表情が読み取りづらい。何なんだこの人は。

「…貴方…人なんですか?」

人見はラジオの放送を切りランバから視線をエラーに戻す。


「偶にいるんですよね。オミッションよりも見た目がヤバいクリーチャーになる人間」


人見は日本全国の情報を伝えるだけでなく受け取ることもできる。スカイツリーや東京タワーのような存在。

「その話と自己紹介は後でしてもらう。けが人を外に出してくれ」

一樹は人見に言うとエラーに向き直る。


ズルズルと歩を燈矢、荒見と陋能転国から脱出させようと運んでいく。燈矢は羽を使い飛んでいた。

「もう…緊急放送しただけでこうなる…」

鼻血を拭いながら人見は3人と姿を消した。


『…貴方…人なんですか?』

「……」

疑いをかけられるのは初めてじゃない。自分でも薄々気が付いている。歩とも丁香兄妹ともまた違う存在の違和感を。


初めて目が覚めてバグシィを与えられて自身の力を知り多くの人と共同で暮らし、外へ出て世界の現状を知っても自分の生まれも何も、すべてを理解しきれていない。ただ世話をされて、今の今まで何か大きな事を成し遂げたか?


私は人を助けたい。このエラーを取り払いたい。そんな力あるわけないのに願ってしまう。

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