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黄昏のオダマキ  作者: ないある
陋能転国編
10/26

10話【再会】

咲弥は自室のベッドに包まっていた。

コンコン、とノックが鳴り一樹の声が聞こえた。

「すまん、頼み事があるが…聞いてもらえるか…?」

「…開けていいよ」

そう咲弥が返事をするとギィ…と控えめにドアが開く。

「うわっ、猫ちゃん…?」

一樹の足元を通り過ぎドアを通り入ってきたのはバグシィだった。

「お前いつの間につけてきたんだよ」

バグシィは一樹を無視して咲弥に近づく。

ふんふん、と匂いを嗅ぎ咲弥の気持ちを感じ取ったように優しく顔を舐める。

「うわっ、…くすぐったい…って」

でも嫌な感じはしなかった。何だか生きていることを肯定されているようで、労いの感情を向けられているようで。

「みゃあ」

「ただの猫じゃ…ないよね?」

「まぁ、それはそうだが…そいつは後で説明する。先に聞いてほしいことがあるんだ」

「単刀直入にお前の遺漏の事とか、あの日のこととか色々お互い話してない事があって…それに…」

一樹は覚悟を決め口を開いた。

――――

あけぼのクラブ

 

「またすぐに刺客が送り込まれる」

シズのその言葉に空気がピリつく。

「陋能転国を瓦解させないといけない…でもそうしたらインフラが…」

ランバは自分達の為に陋能転国を崩壊させる事による他者への迷惑を懸念している。

「それはそうなんだが…」

「他人をすり潰して作り上げた物でインフラ整えるなんてクソゲロだよ。…でもまぁ…あたしらもその甘い蜜吸ってたわけだけどさ」

花菜は椅子をガタガタ揺らしながら対応に頭を悩ませる。あのエラーは何なのかを一樹に聞いた。


『元人間』である事。発生原因は不明。そして鬼燈の口ぶりから一人ではないこと。陋能転国にはそれ相応の『何か』をしていること。

しかし陋能転国を潰せばインフラを整える事が出来なくなる。

「え?皆何悩んでんの?普通に鬼燈引きずり下ろして別の人が頭になればいいじゃん。仲間は催眠食らってんでしょ?それならまともに戻る可能性もあるし」

敦己が頬杖をつきながら言う。

「………たしかにそうですね…このまま放置して誰かが知らない内に犠牲になる前に…」

「グズグズ語ってられね。わらわら行くべさ(グズグズ話してられない。早く行こう)」

敦己の言葉に鈴彦と荒見が同意する。保証も無ければ正しさも無いかもしれない。でも此処で停滞するのは間違っていると誰もが思うだろ。

「あの、あけぼのクラブに残る人は?」

千春はバグシィやブレナンの様子を見ている為の人を考えたいと挙手をする。

「ごめん…俺お荷物だ」

ブレナンは自責の念に囚われている。

「いんや、仕方がないでしょ。僕のもふもふ触って良いからゆっくり休みな。それが仕事だよ」

無理やり自分の毛並みをブレナンの左手で触らせる。

「あ、柔らかい…」

「手入れは欠かさないんだよねぇケハハ」

 

「まぁ、それはさておき誰行く?瞬間移動でランバは必須だけど」

「おいは行く」

荒見が名乗りを上げた。

「ばっぱ!?」

周りが登米に入ろうとしたがあけぼのクラブの代表が顔を出さないわけには行かないという理由に周りは何も言えなくなってしまう。

更にシズ、千春、鈴彦が向かうことに決まった。シズは危険だからやめろと言われたのだが、母に関係する情報を手に入れたいと言って聞かなかった。

あの触手の遺漏者…名前は『彩尤灯月(さいゆうひづき)』も殺されたとか人質とか勘違いされないように連れていきたい。

そこまで話が纏った所でノックの後に二人が入ってきた。

「待たせた…咲弥だ。やっぱり遺漏の火力は一番だ」

作戦の要として起用された咲弥がお辞儀をしてぎこちなく挨拶する。

「こんにちは…」

 

――――

ランバの瞬間移動により陋能転国のロビー…正元と出会った場所に到着した。そこには誰も居なかった。ただ正元が作った道具が雑多に放置されていた。

皆静かに廊下を歩き鬼燈のいるであろう部屋…あの時エラーが現れた場所に向かう。

ドアの前に立った所で咲弥は廊下に隠れて待機をしてもらうことにした。最初の作戦『説得』が失敗した時の為のフォールバックの要だからだ。

ドアを開き中に入ると鈴彦が前へ進んだ。

 

「お久しぶりです……結子」


そう鈴彦が挨拶した相手は卯木ではなかった。

鬼燈だった。

彼も今までメイドの方が妹ではないのかと考えていた。赤い瞳に白い髪の毛。しかし顔を見れば分かる。髪の毛は染めて偽名まで名乗る程の徹底ぶり。

「…兄貴…アイツらの所にいたんだ」

「はい…結子を探す為に…生きてて良かった」

「……そっか…失望しないんだ」

意外にも鈴彦の好意は素直に受け入れた。

しかし

「でも…止まらないよ。だって此処まで来たのに諦めるなんて気はサラサラない。家族だろうが口出しさせない…」

「…っぅ、そ……んな…結子…」

なんで、どうして…家族なのに、家族だから心配しているのに。無条件で受け入れる覚悟はあるのに。


―――― 

むふふふといつも笑顔で特徴的な笑い方をしていてそれを見るのが好きだった。


「勝手にいなくならないで」

私はそう結子に何度も懇願した。

どれだけ周りから傷つけられようが私だけはあなたの味方だよと何度も何度も懇切丁寧に伝える。どれだけ傷てられようが私から目を逸らさないで。味方は此処にいる。

笑顔が減った。

胸が痛い。


私からしてみれば唐突だった。

何処かへ消えてしまった。

私は、妹を守れなかった。

一人にしてしまった。

「兄貴」ともう呼んでくれないのでしょう。

心の何処かでもう私一人では庇えきれないことは知っていた。でも逃げる当てもないから此処にいるしかなかった。それが間違いだったのだろう。


「…ごめんなさい結子」

私は置いていかれるのが怖くてずっと引き止めていただけだったのかもしれない。

本当は私は私自身の事にしか目を向けていなかったのかもしれない。

失望させてしまったのかもしれない。

だから、結子は私を置いて逃げてしまった。

 

――――

 

卯木を介して鬼燈を止めさせるという作戦だったがまさか鬼燈が鈴彦の妹だとは思わなかった。しかし逆に好都合だと思っていた。だがしかし鬼燈…いや、結子は止まらなかった。

(止められなかった…瑕疵だ…でもフォールバックを…)

ランバがそう考えた時結子が指を動かした。あの遺漏の力だ。

「アパテーって知ってるよね?『欺瞞』『不実』『不正』『失望』を働かせる女神…嫌われて当然の力なんだよ」

「母さん…?」 

(シズの気配が遷移した…?)

結子の事を母親として見ている。

「そうだよ…よく頑張って見つけてくれたね…此方へおいで」「もう怖いことも悲しい事もないよ」

両手を広げてシズを誘惑している。

「まっ……」

止めようとした時シズはよたよたと結子に近づき…顔面を殴り飛ばした。

「え?」

「???」

頬を押さえて結子が混乱している。折角催眠をかけたのに失敗するとは思わなかったのだろう。

「母さんは…そんな事は言わない」

「本当はお嬢さんは殴りたくなかったんだがな…ましてや鈴彦の妹となら」

「だが母さんを愚弄するお前は許せないから何度でも殴る」

(今お嬢さんって言った?)

(伊男の側面が見えた気がする…)

(マザコン強い…)

(マザコン最強説)

ランバと千春がコソコソとシズの意外な一面が見えた事に驚いている。

「聞こえてる。マザコンは悪い事じゃないだろ」

シズに牽制され縮こまってしまう。

「ちょ、まって、何こいつ、遺漏無いじゃん!何でそんな強いの!?」

鼻血を卯木に拭かれてある結子がそう訴えるがランバの後ろにいる灯月は悟ったように言う。

「普通に筋骨隆々は強いでしょ」

遺漏で体が強化されていても高身長で筋肉質な男に顔面を殴られれば怯む。


「…鬼……結子様のお顔に…傷を付けましたね」

結子の顔を拭いていた卯木が立ち上がる。

「許しませんっ…お兄様だろうがそのお仲間が傷付けたのなら全員責任を取ってもらいますっ!!」

卯木が手に持つ箒を逆さまにし先を地面に鳴らすとドアが破壊され2体の遺漏者が姿を現した。

一人は鉄の羽を持つ女性。もう一人は赤いドラゴンの姿をした男性。

「フィリピン神話のミノカワとドラゴンです」

「私達は忌み嫌われてきた。それにはそれ相応の力があるんですよ」

卯木は結子を部屋の隅に隠し二人に命じた。

「侵略者です。迅速に三人でこの者たちを殺してくださいっ!」


「えっ俺は?」

灯月は何故同じ仲間なのに一緒に殺されそうになっているのか分からず声を上げる。

「結子以外の奴は替えが効くってことだいか?」

荒見がそう言うと灯月が悪態を吐き捨てた。


「………クソ百合ビッチメイドがッッ!!!」

 

その言葉が火蓋を切り戦いが始まった。

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