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神託の翻訳者~僕だけ読める神託の石板は最強のアーティファクトでした~  作者: 猫柱


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29.新天地開門!


終点が近いと感じる。


梯子の先は太陽が覗いており、少し暖かさを感じる。勿論ダンジョンに本物の太陽などなく、外が透けているか偽物の可能性があった。


迷宮(ダンジョン)の終着点はというと、ご褒美として財宝があったり、遺物が奉納されてたりする。


誰が先に昇るかを検討した結果、防御力の高い男子が先行することになった。


そうと決まると、二人はほぼ同時に動いた。順番を決めるのは、やはりじゃんけん。


勝利の女神は、マルスに微笑んだ。

決して、神託で相手の手を読んだ訳ではない。


『大丈夫そうなら、合図するね』


そう言って、梯子を昇る。

登りきったところで見た光景に、思わず手が止まった。


隙間なく古代文字が刻まれた室内(フロア)は光り輝いて、太陽に思えたのは奉納されたアーティファクト。


高速で回転するアーティファクトから溢れ出す、凶悪な魔力。


アーティファクトが侵入者に光線を放出する。


『っ!? 罠だっ!!』


大気を突き抜ける衝撃を咄嗟に庇ったのは、神託の石板だった。


『があっ!?』


落下する背中を、何かが受け止める。

気にする時間はない。石板が光線を反射ながら赤熱し、火花が飛び散った。


遥か上空、天を貫く光線は反射しても尚、その威力を衰えさせない。


攻撃が止まるのが先か、石板が壊れるのが先か。まるでチキンレースのような状況を変えるべく、必死の形相で石板を動かした。


『ぐぬぬぬぬっ!!』


ほんの少し。


照準のずれていた光線が遺物を捉えた。


─明滅。


ぱらぱらと、天井の欠片が降り注いだ。

晴れ渡った空。雲が浮かぶ、本物の空に、穴が空いていた。


「...空に、穴?」


視線は天井の大穴、さらにその先にある小穴。

小穴から見え隠れする浮遊大陸が、この世界には存在しないものだった。


この世界の上に、別の世界が存在していた。

─それ以外の推測が出来なかった。


「なんだ、ありゃ?」


「...わかりません」


起き上がろうとした体の強化状態が切れていたことに気付き、『アース』を探す。

魔力を使い果たすほど頑張ってくれたようだ。


発見した『アース』はぐったりした様子ではあったが、命に別状はなさそうに見える。


しばらくは強化形態は温存。となると少し心許なく感じてしまうのは、強化に頼りすぎていたのだと反省した。


「大丈夫、罠はなさそうだな」


リクの言葉に、僕たちは上を目指した。

室内はボロボロになっていて、終着点なのかは判断出来なかったが、天井を抜ければ、脱出で来そうに思えた。


「扉はないみたいだし、昇るか?」


土で作られた梯子を昇り、天井を抜ける。

そこは、想像通りピラミッドの頂点。眺めの良い場所だった。


空の穴について報告するため、一時帰還。

僕とクラヴィスは飛び去る航空機を見送る。


詳しくいうと、誰かが残る必要があった。

空の穴からモンスターが出現したら一大事。

だから、全員の帰還は悪手。監視を兼ね、僕らが残ることにした。


理由はある。


クラヴィスは『スキル』によって、物資を調達することが出来る。よって採用。


僕は単純な戦闘員。


つまり、適材適所。二人が監視役を連れてくるまで、穴の監視を続ける予定だ。


「何か必要なものはありますか?」


シュトラントコルプに腰かけたクラヴィスが、トロピカルカクテルを手に問いかける。


「いや、なんか家の中より快適なんだけど?」


ここは外、けれど、生活に必要なものが、全てある。


「まあ、マルスは誉め上手ですね。欲しいものがあったら、遠慮なく、仰ってください」


『スキル』も無制限に使用出来るわけではない。クールタイムは必須。故に欲しいものはリスト化して、順次召還するルール。


そして、また一つ。供物が降臨した。

一角が、物で溢れかえっている。


「あれ?」


その異変に気が付いたのは偶然。

穴の縁からふわふわと光の玉が降りてきた。


目を凝らさないとわからない大きさ。

しかし、光の玉は確かな意志を持って、供物を持ち去った。


「あっ、私のストラドバディウスが!?」


バイオリン、翼を授かる。

それだけではない、日傘、ブランケット、カップメンなど様々なものが穴の中へ吸い込まれていく。


「追いかけましょう!」


「え、追いかけるの!?」


「逃がしません!」


少女が召還したのは大量の足場。ジャングルジムに似た鉄パイプの集合体。それが神業とも言える角度で積み重なり足場となる。


その上に足をかけ、大空を目指す。

正しくは、浮きあがった供物に跳び付いた。


少女が掴んだのはバイオリン。


僕もすかさず飛び込み、日傘を掴み取った。


引力は衰えない。見えない力に引っ張られ、未知の穴を通過した、その時。


「─うわ!?」


「これは、ダンジョンの...」


凄まじい数の光の玉に取り囲まれた。

点滅する光の玉を、直感が『翻訳』する。


「『抵抗するな、ついて来い』」


「───って言ってるよ」


「それでは、大人しくついて行きましょう」


幾つもの『浮島』を飛び越え、一際巨大な島に降り立った。


「ようこそ、おにいちゃん、それと王女さま」


そこには、探し求めていた妹、エリシアが二人を迎え入れた。


「エリシア!! どうして此処に?」


「ここは『天界』。数多の世界の想像主がいる場所で、わたしの生まれた場もあるの」


「ここが、エリシアの故郷?」


「正確には、発祥地ね」


「はっしょうち?」


「私達は狭間の国『レグナリア』を含め、あらゆる世界の監視を目的として、作られたのだから」


背後から答えたのはもう一人のエリシア。

─エリシアが二人いる。そして同時に僕らを『監視』していた事実に驚愕した。


「君は、君たちはエリシアなの?」


「「そうでもあるし、そうではないとも言える。おにいちゃんの記憶はあるけれど、私たちがおにいちゃんに会ったのは今日が初めてよ」」


さまざまな感情が脳を駆け巡る。

再会を、喜ぶことが出来ないくらいには混乱していた。


「この先に『王』がいます。ついてきて」


踏み出す一歩が重く感じる。

状況の整理もままならないまま、先導するエリシアの後ろを離れないように歩き出した。


やがて辿り着いたのは、大理石で作られた宮殿。


「この先、決して無礼のないように」


そう釘を差すエリシアに頷く僕らは、両脇に光の玉が並ぶ通路をまっすぐ進み、玉座に辿り着いた。


『待っていたよ。愛しい我が娘よ』


「お父様!」


玉座の手前、そこに拘束されたいたのは、レグナリア王。クラヴィスは駆け寄り、抱き締めた。


『愚かな。盗人風情を『父』と呼ぶとはな』


クラヴィスに届いていないであろう言葉。

『翻訳』で通訳することを躊躇ったのは、伝えるべきではないと判断したからである。


『意図的に『隠す』ことは、果たして優しさと読んでいいのか?』


─読まれている。

色々な葛藤を抱える僕の心の声に誰かが語りかける。その声は、玉座から発せられていた。


「あなたは、いったい?」


『私は、この『世界』を統べる『王』。そこな『偽物』とは違う、絶対的な存在である』


光の玉が、自らを『王』だと宣言した。


『連れていけ』


「クラヴィス!? ─ぐっ!!」


無数の光の玉に拘束されるクラヴィスを助けようと動いた体が床に叩きつけられる。


「クラヴィスを、放せ!!」


『慌てるな。連れさられた愛娘、異常がないか検査するだけのこと』


「連れさ、られた─?」


『分からんのか? あれほど無闇矢鱈(むやみやたら)と拐っておいて。いや、あの『堕天』が勝手にやったことか...』


「なにを言って─────」


『【勇者召還】』


「─────────っっ!!」


渦巻く魔力が奔流がとなり、『異世界』から『勇者』を呼び寄せる。それは、紛れもない『勇者召還』。


レグナリア国が誇る、『召喚術』。


そして───。


召還されたのは、一人の騎士。


『呼び声に答えし『勇者』、この男は『神の領域』に侵入した大罪人である。処断せよ』


「神よ、仰せのままに」


見覚えのある最強の騎士が、剣を抜き『スキル』の名を告げる。


色彩操作(クロマ・ドミニオン)・赤」

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