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神託の翻訳者~僕だけ読める神託の石板は最強のアーティファクトでした~  作者: 猫柱


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28.神の試練


『故郷』を見た。


この世の終わりのような街は、悉くが廃墟と成り果てていて。


記憶と、現実が相互に入れ替わる脳内。


暴れ狂うモンスターも、雄叫びをあげる異形も蹴散らして、『記憶』通りの景色を見た。


「バカ野郎、順序が逆だろうが...」


後悔の一言では足りぬ現実的に打ち拉がれる。

生け贄に捧げられた者が生き残り、見送った者が滅んだ。


選択権はなく、逃げることは許されず。

しかし、後悔はなかった。大切な人々を守るためと、自分に言い聞かせた。


そんな絶望を乗り越えて、生還した。生還してしまった。


帰宅しなかった理由は『恐怖』。


守るために捧げた命、守った者に『いらない』と否定されるのが怖かった。


だから、家族に会いたくなかった。

会っては行けないと自分に言い聞かせた。


その実、何も守れていない『現実』から目を逸らしていたことに気付いていなかった。


自分は、誰かを守る盾ではなく、その資格さえ持っていなかった。


せめて、仇は打ちたい。

尊厳を奪った奴らの尊厳を奪いたい。


多勢に無勢。

だが、手本は見た。多勢相手に戦う術を。


再現出来るかは自分次第。


土砂の波。


濁流の竜。


褐色の鎧。


どれもが己の恩恵(スキル)と使い方が違うのに、その違和感を無意識に押し殺していた。


『守る』能力は己の願望。


『殻』に閉じ籠っていたのは弱い自分。


『神』から授かったのは、最強の能力。


その事実から、目を逸らすことをやめた。


きっと、これは『試練(オーディル)』。

神が与えた絶対に必要な試練。


ならば、乗り越えて見せる。


己と戦う、試練が始まった。


「【絶対地圏(アブソリュート・オーディル)】」


地面が波打つ。


全てを浮かせる衝撃は、しかし止めを差すには至らない。圧倒的な高さ不足。


その僅かな隙間を埋めるように、夥しい刃が地面を埋め尽くしていた。


直後、グチャッと。


モンスターが断罪された。


「モンスター共、余すことなく滅ばしてやる」


惨劇は続く。


悲鳴が轟く。


やっていることはモンスターと一緒。


人が、モンスターに変化しただけ。


それでも。


モンスターを裁き続けた。


Ж


『リクッ!!』


飛び降りた友を追うため、『アース』と繋がる。


二人は、「追いかけて」と言ってくれた。

すぐに飛び降りた僕は、荒廃した街に突っ込んだ。


『地面』が揺れていた。


リクのスキルとしか思えなかった。


あちこちに散らばるモンスターの亡骸が、事態の深刻さを伺わせる。


『とてつもない量だ...』


不自然なほど、多すぎる。

違和感の原因を突き止めるより先に、リクの背中を視界に捉えた。


『リクッ!』


「...」


驚愕に息を呑んだ。

無言で佇んでいるのは、ライバルであり、友達。


その瞳が、赤く揺らいでいた。


「モンスターは、殺す!!」


『─なっ!』


強化形態をモンスターと認識した友が、地を揺らし、鋭利な刃を差し向ける。


『落ち着いてっ!! 僕は敵じゃない!』


人格が変わったと言っても良い。元々好戦的な少年は、全てを敵に回す勢いで、拒絶した。


「うるさいっ、モンスターは、敵だっ!」


土砂までは真似出来ないのか、無数の蛇が、波となって押し寄せる。


だが、それだけ。

同じ土俵にいる僕は、その攻撃を避けるまでもなく、受けきった。


「っ─!?」


ノーダメージは予想外だったのか、距離を開け、鎧を纏い始めた。


接近戦に持ち込むつもりか!?

明らかに異なる戦闘スタイルに、理解が追い付かない。


接近戦の結果なんて、決まりきっていた。

それが理解出来ない彼ではないと断言できる。


尚も攻め立てる『スキル』による攻撃を、回避する。友達に攻撃することには少し消極的だった。


そして、偶然、気付いてしまった─。


少年の攻撃にも、躊躇いがあることを。


『リクは弱い人じゃない』


「くっ」


振りかぶった拳。


顔面に迫るそれを。


僕は避けなかった。


衝突寸前。


拳が、止まった。


「...俺、は?」


『リク、意識はある?』


「ああ、なんとなく。迷惑かけたな」


『大丈夫?』


「この場所は、俺に幻を見せていたようだ」


『どんな幻を見たの?』


「弱い、いや弱かった自分自身だよ」


静まり返った廃墟の一角。床が開いて、階段が現れた。


「まさか...」


『この一辺は、ダンジョン?』


まだ先に進むわけにはいかない。仲間との合流が優先。


それがわかっていても、わくわくが止まらない。


「なぁ、手合わせしないか?」


『なんで?』


「その方が、二人の目に止まりやすくなるだろ?」


『天才だね!』


二人で、盛大な土合戦を始める。

這い出る土竜。それが、飛び掛かった。


天を衝く衝突音が、廃墟を揺らす。互の竜が、同時に砕け散る。


「何やってるんだ。二人とも!!」


怒られてしまった。悪態をつくトウカに状況の説明と謝罪の気持ちを述べる。


なんとか許して貰い、階段に向かう。

方角からして、階段はピラミッドに向かっているようだ。


ピラミッドに入口は無かった。ならば、入口はこれの可能性が高いと、皆の意見が一致した。


階段の先は、複雑な迷路。

ダンジョンと呼ぶに相応しい、石造りの壁。

果てしなく続く変わらぬ景色は、方向感覚を狂わせる。


けれど、僕にとって攻略は簡単。迷わない切り札があった。


神託が示す先は『右』、角を曲がって『左』。

探索開始から一時間。いつまでたっても出口は見えず、クラヴィスが音をあげる。


「少し、休みませんか?」


『うん、そうだね』


「なぁ、本当に道は合ってるのか?」


「それはマルスに失礼じゃないか?」


『でも、神託が間違っていたことは無いんだよね』


「次の道だけでも逆を行って見ようぜ。どうせ、引き返せば変わらないんだからさ」


その提案に乗って逆の道を進んだ後、すぐに階段を発見した。


そして。


「マルスの『弱み』は神託に頼りすぎてるってことだな」


そう指摘された。


このダンジョンは、誰かの『弱さ』を映す鏡のような機能があるのかもしれないと仮説を立てる。


現在3階層。

残るは二人。知っていれば、対処は容易い。

─そう思っていたのがたったの数十分前。


今は、謎のモンスターに追われている。


「あれは、何なんだ!?」


『順番的にはクラヴィスが一番詳しいんじゃないかな!?』


「私、光の玉に知り合いなんていませんよ!?」


「いや、クラヴィスが光の玉に弱いんじゃないか?」


『あれには、誰でも弱気になるんじゃない!?』


総身が白く、光に包まれた球体は、神々しさを感じる。


だが、実際は触れたもの全てを削り取る破壊の化身。近接攻撃は勿論、魔法さえ効かなかった。


『破壊の権化』が意思を持つ生物のように迫って来た。


特筆すべきはその執着心。クラヴィスを狙う姿はなにか因縁がありそうだが、本人は関係を否定した。


取り敢えず、逃げる。


壁画の描かれた通路を、勢いよく走り抜けた。

そして、角を曲がったとき、階段を発見した。


「はぁ、はぁ、どうやら、全てが同じ条件じゃないのかもしれないな」


「俺は、あれがクラヴィスの弱点説を推すね」


『寧ろ、弱点じゃない人を探す方が、難しいよ』


「一体、なんだったのでしょうか?」


ダンジョンはその機能さえ解明されていない。

得たいの知れない現象に答えを出すことは出来そうになかった。


そして、その先のフロアで、トウカが激怒した。


「............私の怪力は、弱さじゃない!!」


頭に血が上がった理由は、一匹のモンスター。

順番的に、トウカの『弱さ』だと思われるそれは。


両腕の太い、ゴリラだった。


「ふ・ざ・け・る・なっ!!」


「ぶっ」


抑えきれない笑い声がリクの口から漏れ、少女の顔を赤く染める。


「殺す!」


瞬殺。屈強なゴリラのモンスターが、真っ二つに切り裂かれた。


「くそっ、頼む、再生してくれ!!」


だが、亡骸が再生することはなかった。

行き場のない怒りを抱え、少女が震える。


「~~~~~~~~~~~っっ!!」


一同は気付いていなかった。

いや、気づけるはずはなかった。


試練を乗り越えた者に、試練は与えられない。


その事実に。

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