233.やっぱり胡散臭い。
更新、遅くなって申し訳ございません!
m(。≧Д≦。)m
「『聖水』とは呼称しないのか?」
ガンダロフがメダルで作った浄化水の入ったコップを翳してゆらゆらと揺する。
「ん~、『聖水』って、なんか胡散臭い」
と私が口角を下げるとガンダロフは、胡散臭い、とは?とそれこそ胡散臭そうに眉を寄せる。
「なんて言えば私のこのもやもや感が伝わるのかなぁ。
まず、『聖』というのがしっくりこない?というか、意味が曖昧で解らない。
それの、水。うん、やっぱり胡散臭い。
神社にお参りする時の、清らかさとか厳かな感じはよくわかるけど、アレは『聖なるもの』とは言わないような気がして」
「じんじゃ?」
「神様がお住まいになる社」
鳥居を潜った直後の空気が凜としたものに変わる瞬間、爽やかな風が吹き抜けて木漏れ日が柔らかく揺れてその場に歓迎されている雰囲気。
手水舎で手口を清める時の水の流れに自身の穢れが一緒に濯がれていく、拝殿で拝んでいる時の心の中の澱みが晒されて薄れる感じ。
一人旅で、日本三大怨霊の一人がお鎮まりになられる総本宮にお参りに行こうとしたら、電車が架線事故で止まった。
今日は来るなってことかなぁとその日は諦めた。
次の日の朝にお参りに行くと、観光客はほぼ私一人で、晴れて爽やかな陽気を存分に味わうことが出来た。
ゆったりとした雰囲気で手を合わせて旅の無事を祈る。静かで清々しい雰囲気になんだか胸がいっぱいになって満足して踵を返したのだけど。
赤い欄干の太鼓橋を渡った所で、あまりの静寂さに柏手を打たなかったことに気付いた。そういえば、神社だよね、ここ。拝殿が改修工事中で作業している人沢山いて御鈴が無かったから失念してた。仮拝殿の屋根に草木が生えてたし。
無事に帰宅したから、祈りは届いたんだろうなぁ。
ただ、朝早かったからお店が何処も開いてなくて、焼きたての名物お餅を食べることは出来なかったのは残念だった。「また今度お出で」って言われたような気がする。
「この世ならざるものの気配に満ちた場所。神社って、そういう所だって認識してた。
人が調えた場ではあるけど、主体は人じゃない。人の関与が及ばない。
うん。人間は関係無いというか、拘らない?」
「人間の関わりが薄いから、『聖なる』との表現がそぐわない」
私が取り留め無く流した言葉を、ガンダロフが噛み砕いて纏める。
「注意喚起の動画では、神官達が浄化水を使って外来由来危険物を撃退していたが、実際は精霊擬きの仕事の予定だからな」
うむ、とガンダロフは頷くけど、
「擬き、ではなくて、玉子の方が正確だしかわいい。成長して力が強くなったら精霊になれるかも」
って言ったら、向かいに座ってた麒麟がコクコクと激しく頷いて同意してた。
「卵?」
「玉子。玉の子ども。精霊は強い力の塊、玉のようなものだと思うから」
麒麟、何故頬を赤らめて涙ぐむ?
「っ!遅くなりました!」
ノックの後、レアンが息を切らしつつ入室する。
「お疲れ様~」
「何か問題が起きたのか?昼前まで『聖都』にいたのだろう?」
待ち人やっと来たって感じで私とガンダロフが声を掛ける。
先ずは落ち着け、とガンダロフがレアンをソファに座らせたので、私はローテーブルの浄化水入りのコップを傍に置く。
と、それをぐいぃっと一気飲みして
「プファーーッ!生き返る~っ!」
…浄化水って、疲労回復の力もそれなりにありそう。
「えぇっとですね、お昼まで『聖都』神殿の図書室で調べ物をしていて。
大神殿に戻って直ぐに合流するつもりが、キヨエさんに「ご飯はちゃんと食べなさい!」と叱られて食堂へ連行されてしまいました。
食事の後急いで奥の宮に行ったのですけど、地下シェルターだとジョーイさんに言われて急いで馳せ参じた次第です」
レアンは、キリッとして経緯を語ってくれたけど。
「…疲れてる?精神的な疲れって、流石に浄化水でも回復は難しいでしょうから」
と労ると
「じょ、浄化水?」
飲んじまったよぉ、と彼は空にしたコップを凝視した。
「毒ではないから心配するな」
いや気にしている所はそこじゃ無い、と口を歪めるレアンにガンダロフは
「それで、浄化水又は類似品に纏わる記述はどの様な状態だったのだ?」
レアンには浄化水について、過去に用いられた経歴があるのか、どの様な用法か等を文献から探るよう依頼していた。
「結論から言いますと、『浄化水』という表記はございませんでした。
類似品としては『聖水』、『精霊の泉の水』との表現が用いられております」
祭事・儀式を執り行う時、傷病者に医術を施す時に用いる水を『聖水』と称して使用していること。
『聖水』の実態は大神殿及び各地方主要神殿で秘密裡に濾過・蒸留等を施した精製水であること。
以前各地方に『精霊の泉』と呼ばれる湧き水由来の泉が存在していたが、100~50年程前に全て涸れて無くなっていること。
『精霊の泉の水』は飲用することで傷病者の回復を早める効果があったらしいこと。
「『精霊の泉』の場所については、アスト様達に手伝っていただいて纏めている最中です」
「アスト達に、ということは各地方にいる元眠れる司祭様達が細かく調べているのか」
「もし場所が判れば、現地に赴いて復活させるのも良いかも。
うん、大陸縦横断周回旅行。雰囲気的には御遍路っぽい?」
実際は歩いて行くのではないだろうけど。
「おへんろ、は判らんが」
ニヤリとガンダロフの口角が上がる。
「面白そうだ」
その不敵な笑み、大好き。
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
話の展開が見えなくて、手が止まりがちです。なので、今までのお復習いを兼ねて、『転生魔神』の更新をお休みして『聖者』の更新を再開します。お楽しみの所申し訳ないのですが、話のネタが溜まって見通せるようになるまで暫しお待ちくださいませ。




