閑話その5 反応
<『特対課』3係>
「いいか!?絶対に手に入れるんだぞ!」
「へいへイ、わかりましたヨ。」
柳沢に対し、野洲川は適当に返答する。
(......そんなに強調しなくてもいいと思うけどねェ?)
野洲川はそう考える。柳沢はどうやらかなり復讐心を燃やしているようだ。
(マ、言われたからにはやりますカ......)
そこで退室しようとする野洲川。しかし、退室前に振り向き柳沢に問う。
「そういや、対象の状態はどうすりゃいいんですかねェ?」
「ん?ああ、死んでいなければいいぞ。早く出ろ!」
その返答にニヤリと野洲川は笑い、退室した。
「おかー、班長。」
「おかえり。どうだった豚の様子?」
「ン?そりゃもう笑えたゼ、あれハ。お前らにも見せてやりたかっタ。」
戻ってくると、彼の班員が声をかけてきた。
そこは『特対課』3係の一部屋。デスクはあるが、そこで働く人員は不思議といない。
「で?豚は何の用だったの?」
「おウ、コイツを見て来レ。その対象を持ってこいとヨ。」
そこに書かれていたのは紗綾香の情報。彼の班員はそれを見つめる。
「へー、結構いい顔してんじゃん。こんな可愛い子でも俺らの毒牙にかかっちゃうとは、気の毒だねぇ。」
「だロ?全く、この仕事やってると悲しい事この上ねえなァ。」
「そんな事絶対思ってないくせに、班長も悪いねぇ。」
彼らは話し合う、仕事の内容について。
『特対課』3係。そこは魔物の襲来から重要人物を守るという名目でありながら、実際は権力者のための恐喝を得意とする貸し出し用の武力機関であった。
「あっちが俺たちに黙ってついていくならそれでよシ、そうじゃなかったら実力行使も仕方ねぇよなァ?」
———彼は動く、己の欲を満たすために。
<『特対課』 4係>
「ぐふ、ぐふふふふ......やっぱフル×ワドは最高でござる......!百合こそ至高......!」
薄暗いオフィスの一角。そこでは、一人の男が不気味な笑いを響かせていた。
男の眼前にはパソコンが一台。その画面には『運命少女☆フール&ワールド!』のシーンが映っている。
「おい、金田!」
「うぴっ!?」
そこでアニメを見ていた男、金田は頭を叩かれる。
「な、なんでござるか......?か、かかりちょおおお!?」
「声がデカい!もう少し静かにしろ!」
周りで仕事をしている職員から睨まれ、金田は身をすくめる。仕事をしている者の画面はダンジョンや魔物の画像などで一杯だ。
『特対課』4係は広報・情報統制が職務だ。出すべき情報を公開し、出さないべき情報を公開しないよう努める。
故にこの係は他と比べて人数が少ない。この係に金田がいるのはそのプログラム知識を買われてのことだった。
だが、金田の、ひいてはこの係の真骨頂とはそれではなく———
「ほらよ、これ。」
「?係長、これなんでござるか?」
渡されたのは女子高生の資料。
「あー、簡単に言うと他の係がその子狙って色々やらかしそうだから守ってやれ。お前、そういうの好きだろ?」
「な、な、な、なにぃぃぃぃ!?係長それを早く言うでござる!」
その言葉を聞いてすぐに金田は支度をする。
「あ!また誰彼構わずやっちまうんじゃねえぞ!ちゃんと証拠掴んでからやれよー!」
「了解でござるぅぅぅ!」
そのまま即座にタイムカードを切り金田は退勤した。いつものことだった。
金田は走る。彼の理念には『JKは守らねばならぬ!』というものがある。
『私たちが貴方を倒すことは、すでに運命によって決まっているの!』
『運命少女☆フール&ワールド!』に出てくるキャラクター、流転少女フォーチュンの言葉を思い出す。
———フォーチュンちゃん、某はやって見せるでござるよ......!
金田が紗綾香達が入院中で、一週間ほど学校に来ることはないと気づくのは、この2時間後の話。
———彼は動く、自分の信じる正義のために。
<『特対課』5係>
「おーい、夜弦ー。」
「んー?」
5係のエース夜弦 光流はその声に反応する。視線の先には5係の係長であるうら若い女性がいた。
「はい、これ。」
「お、さんきゅ。」
係長は夜弦に封筒を渡す。
ここまでの流れを見る通りこの二人は仲がいい......というか、恋人同士だ。
「で?これは?」
「まあまあ、とりあえず中身見てからね?」
夜弦は中を確認する。そこには何枚かの資料がある。
「んー......あれ、これ『特攻課』の資料じゃん。どうしたの?」
「えっとさー、今係長の間でこの子の取り合いがブームなの!」
そう言って係長が指したのは紗綾香の写真だ。
「志野 紗綾香ねぇ......眼鏡かけてるけど結構いい顔してるじゃん?」
「夜弦〜?」
「っと、ごめんごめん。桜みたいなことにはもうならないって。」
係長のヤキモチに夜弦は慌てて訂正を入れる。係長もそれがわかっていたのかやれやれと言わんばかりに矛を収めた。
「で......この子、俺たちはどうすればいいの?」
「ん、ん......まあどうにかしたいって訳じゃないけどさ、やっぱり政治道具みたいにこんな子が使われるのは結構気分が悪い訳。だからお願い!この子守ってあげて!」
係長の嘆願に夜弦は苦笑い。今回のような頼みは初ではないが、それでもない方がいいな......と思う。
「わかったよ......それで、いつからやればいい?」
「今は『特研課』にいるから安全。でも来週には学校通い始めるからさ、それから頼むね!」
そのあと、少し恥じらいを見せながら係長は夜弦の耳に口を寄せて、
「それでさ、光流。この後......」
「......わかったよ、予約しておく。」
その直後係長は顔を赤くし、逃げるようにデスクへ戻った。
夜弦はもう一度資料に眼を通す。
「さて......可愛い彼女の頼みだ。やれるだけやって見せよう......」
———彼は動く、自分の恋慕した女性の頼みを聞いて。




