第三十四話 転生
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「陽毬さん......大丈夫かな......」
私は紗綾香に言われた通りに待つ。近くにはゲルウダの死骸とその他多くの魔物の死骸がある。
「......何も、できなかった。」
紗綾香は八面六臂の活躍をした。陽毬さんは挑発し自分に矛先を向けた。では、私は?
......何も、していない。
「強く......なりたいなぁ......」
本当に、そう思う。私は強くなりたい。後方でしか戦えないというのは嫌だ。前に出て戦いたい。
「勇気が......ううん、力が......欲しい。」
無力な私は嫌だ。何か自分を強くするための力は持っていないか?
「あ......」
ふと、思いついたものがある。〔融合進化〕のスキルだ。
〔融合進化〕
自らが素材と認識しているものを二つ組み合わせて上位の素材にする。
もしかして.......
私はゲルウダの死骸に近づく。その灰を手に取り、
「私の体をベースに......ゲルウダの死骸を......〔融合進化〕。」
すると、灰が光の粒となって私に吸い込まれていく。
<〔融合進化〕を開始します......成功。各種ステータスが上昇します。>
<汎用スキル〔土魔法〕を獲得します。>
<冒涜スキル〔簒奪 lv1〕を獲得します。>
「あ......」
私はステータスを確認する。そこには確かに〔土魔法 lv1〕と〔簒奪 lv1〕があった。
「う......あ......」
やってしまった。死体への冒涜だ。私はやってしまったのだ。
(......でも......)
......私は、紗綾香の言葉を思い出す。
『もしも美幸が誰かを傷つけたり、殺しちゃったりしたとしても......』
『それは、ぜーんぶ私が悪いんだから。』
あの言葉は、救いだ。
「そうだよ......悪いのは紗綾香......私は悪くない......」
私はイカれた理論を展開する。けれど紗綾香が言ってたことだ。間違いはない。
「紗綾香が悪い......紗綾香が悪い......」
そのまま、魔物の死骸を灰に変え、私は融合し続けた。
「えへへ......紗綾香ぁ......」
この時、紗綾香を思う自分と、
(......気持ち悪い)
それを嫌悪し俯瞰する自分がいた。
§
「ぃ......き、たぃ......」
......言われた。言われてしまったならば生きさせなければいけない。そして、そのための道筋はわかっている。
「......わかりました。今しばらく眠っていてください。起きれば、すぐに終わりますから......」
私は蒼の短剣を手首に押し当てる。その時に〔医術〕スキルを意識しながら手首を切る。
傷口から出てきたのは陽毬さんが流している赤い血とは違う青い血だ。それを陽毬さんの口に含ませる
......うまくいきますように......
成功することがわかっていても思ってしまう。暫くそのまま含ませていると、陽毬さんの体が震え始めた。
......始まった。私は陽毬さんの体を眺める。最初は体全体を使って起こっていた震えがいつしか肉が震え、骨が震え、内臓が震えるようになった。
顫動を繰り返す陽毬さんの体。そして何度も小さな膨張と収縮を繰り返す。
「......」
わかっていた。わかっていたことだが......それでも罪悪感はかなりある。
私がやったのは陽毬さんを[不死族]化させることだった。これにより陽毬さんは[不死族]として助かり、私の眷属となる。
人間を辞めさせるというのにも、かなり抵抗があるが、それ以上に———
......落ち着け、私。美幸のためならば私は何でもできる筈だ......
震えが収まる。それと同時に陽毬さんとの間に繋がりができたのを感じた。
<眷属「五十嵐 陽毬」を生成しました。>
<専用スキル〔絶対権限:五十嵐 陽毬〕を獲得します。>
<汎用スキル〔軍勢〕を獲得します。>
<特定行動を確認......聖典スキル〔安息〕のlvが上がりました。>
「......ん。」
陽毬さんが起きる。
「おはようございます、陽毬さん。......お加減の方は?」
「特に問題ない。でも......なんか変な感じ。気を抜くと紗綾香の事を『ご主人様』って呼びたくなる。」
やっぱり。私は少し落胆する。陽毬さんがそのまま残るわけではなかった。ここに残ったのは『少し変わった陽毬さん』だ。
それでも陽毬さんの形をした何か、とは思わない。陽毬さんは蘇った。そう考えなければやっていけないから。
「これから二人きりの時とかならご主人様って呼んでいい?」
「......ええ、構いませんよ。」
陽毬さんは嬉しそうに笑う。まったく、そんな顔されれば否定できないじゃないか。
(———ごめんなさい。ちょっとこっちの方で色々あったわ。貴女達大丈夫だった?)
お、紗枝さんが帰ってきた。どうやら肉体の方で何かあったようだ。
「これが大丈夫に見えますか?少なくともみんなボロボロですよ。」
「ん。でも勝った。」
私たちはボロボロだ。だがそれでもゲルウダには勝てた。
(そう......よかった。じゃあすぐに帰ってきてね?今日は結構疲れたって感じだと思うから、ゆっくり寝るのよ。)
紗枝さんの念話はそれっきり切れた。
「それじゃあご主人様、美幸のところに戻らなきゃ。」
「それもそうですね、行きましょう。」
私たちは美幸のところに戻る。
「あ、お帰り紗綾香、陽毬さんも。」
そこにいた美幸は一見何の変わりようもなかった。しかしそれはこの場において異常だ。
私はてっきり、陽毬さんに関して不安で震えているものとばかり......
「ん。ただいま美幸。元気だった?」
「はい。陽毬さんのことは心配だったけど......紗綾香が助けるって言うなら、そこに間違いなんてある筈ないでしょうし。」
んん?いよいよ持っておかしくなっているような?
しかし私は疑うこと自体が美幸に失礼だと思い直し、聞き返すことはなかった。
「どうしてそこまで紗綾香を無条件に信頼できる?」
「?そんなの......紗綾香だからに決まってますよ。何かおかしいですか?」
しかし陽毬さんにとってはそうもいかなかった様で、陽毬さんは聞き返した。それに対して美幸はまた変な答えを返す。
「まあまあ、それよりも早く脱出しましょう?いつ魔物が来るかわかったもんじゃありませんから。」
「......ん。それもそう。」
陽毬さんは私の言葉に説き伏せられ、それ以上の追求を辞めた。これ以上美幸から何か聞いてはいけない気がした。
そして私たちは前線基地に戻った。
なんで灰なのかというと灰が一番素材視できたからです。




