第三十一話 人型
......それから暫く、私たちは戦い続けた。
何分戦ったのだろう?10分?30分?もしかしたら一時間?とにかく戦った。
最初の頃は30体だった魔物も、途中からの追加があり総計70程になったはずだ。途中からは無心でやったから何体いたのか正確には覚えていない。
「ハァッ!」
「キュー!?」
私が短剣を最後にきた兎に突き刺す。これで終わりだ。
「......はぁッ、はぁッ......」
「ふー......、ふー......」
「けほっ、けほっ......」
私たちは酷い有様だった。陽毬さんは服の所々が裂け、その柔肌が見えている。盾も凹みばかりで、元の原型をとどめていない。何度も深呼吸するその顔は疲労感に満ちている。
美幸も何度か咳をしている。最初はただポーションを渡すだけだった美幸も途中から炎魔法や警棒で戦いに参戦するようになった。
歯が何度も打ち鳴らされ、口からは涎が垂れている。そして美幸がポーションを入れていたリュックの横のスペースは......空だ。
私も似たような有様だ。右腕はふるふると震えながら垂れている。折れているわけではなく、力をもう入れられないだけだ。視界も霞んでいるし、頭だって鈍い頭痛がしている。
しかし、終わったのだ。これで終わりなのだ。
そう思った時、ヌッと出てくる影があった。
「ひと......がた......?」
大きい。高さは2m程の大きさで、肥満体系だ。黄土色の肌をしていて、荒い息を吐いている。
「オ、オンナ。オンナ、サンニン、イッパイ。」
その眼には獣欲が宿っている。顔も豚顔であり、その腰には蓑が付けられているが、それでは隠し切れないほど盛り上がったものがある。
———オーク。
豚の獣人、あるいは魔物。数々のそういう作品で女を陵辱することを得意とする存在で、雑魚として書かれる時もあれば、強敵として書かれる時もある。
そして何よりオークは人型だ。人型の魔物は今まで出てこなかった。
「なんで......ここに......」
すると、吸い込まれるようにその右手が目に入った。粗雑なメイスだ。石を削って作っているが、その一撃は重いだろう。その証拠に、メイスにはまだ赤い血と脳漿がついていた。
(まさか......)
私は思い出す。魔物たちが進軍してきた時、彼らの眼は一様に恐怖に満ちていた。まるで、何かから逃げるように。
「オ、オレ゛......ケシカ、ケタ。オンナタチ、ツカレタ。オレ゛、アタマイイ!」
ああ、クソ。今こいつの口から証明された。
魔物を向かわせたのはこいつだ。こいつが私たちを疲弊させるためにこいつがやったのだ。ああ、確かに頭がいいだろうよ!
「......ハァッ......」
しかし、動けない。私は終わったと思った、その時点でスイッチが切れた。もう、このままでは。
「ふ......んッ......!」
しかし、陽毬さんは違った。陽毬さんは立ち上がり、盾を構える。
「オ......?オンナ、テイコウ、ヤメル......オレ゛、アタマイイ。オマエ、カナワナイ!」
「どうだか......」
陽毬さんはこちらをチラリと向く。その眼には『今のうちに回復を』という意志があった。
「ン......?」
「私たちを疲れさせたってことは......オマエ自身のステータスは高くない。大方、弱いから雑魚をけしかけただけってところ?とにかく、そこまで強くないでしょ。」
「ナ......!」
その間に私たちは立ち上がる。美幸は警棒を持ち、私は短剣を持つ。
「疲弊したところを襲うのは雑魚の証。さっさとかかって来れば?ざ・こ!」
「ブ、ブモォォォ!オンナ、ナマイキ、コロスゥ!」
そして、私たちとオークの戦いが始まった。




