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屍少女は何になる  作者: 島原流星群
第二章 入局・探索・氾濫
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第二十八話 繰返

 



 ———2回目の挑戦———


「紗綾香!前に出過ぎないのはいいけど臆しちゃダメ!もっと突っ込んでいって!」

「は、はい!」

「美幸!不用意に瓶を投げようとしない!転がした方がいい!」

「は、はいー!」


 ———3回目の挑戦———


「ちょ......こっちきたあああ!?」

「驚くな!私にだってできないことがある!落ち着いて対処!」

「光よ......!」

「ほ、炎よ!」

「あっ、ちょっと美幸!アンタまさか魔力全部———」


 ドォォォォン!


 ———5回目の挑戦———


「このっ......!」

「だから!前に出るな!第一回の時に言った!」

「あっすみませ、ん!」

「謝るなら覚えろ!毎日脳内で復唱する!」

「はい!」


 ———8回目の挑戦———


「下と上に同時に気をつける。下は這う敵が出てくるし、上は天井にへばりつく敵がいる。そう考えながら進んでいく。ただでさえ意識から外れやすいのに薄暗いから更に分かりにくくなる。」

「それ、もうちょっと先に言ってくれませんでした!?」

「う、うあー!」

「ちょ、美幸!?警棒振り回さないで怖い!」


 ———12回目の挑戦———


「......」

「......」

「何も喋らないのはよくない兆候。集中は視野を狭めることとおんなじだから程々に気を抜く。」

「えっあっはい!」

「は、はい......」


 ———17回目の挑戦———


「陽毬さん!右にそれて!光よ!」

「ふっ......!」


 ギィィーー!


「......うん、これならいい。これを毎回続けるようにする。」

「え?それって......合格ってこと?」

「紗綾香......!聞き間違いじゃないよ......!オッケー出たよー!」

「......はぁ、前言撤回。油断しないこと、後ろ。」


「「え?きゃああああ!」」


 ———そして、来たる20回目の挑戦。


「おはよう柏田。」

「おはよう柏田くんー。」

「柏田、頼んだもの用意してある?」

「おはようございます御三方、陽毬先輩が用意しろって言ったのは用意したっす。これどうぞ。」


 そう言って柏田が陽毬さんに渡したのは結構大きい道具箱のようなものだ。


「陽毬さん、何ですそれ?」

「ん?取り敢えず2Fに着けたら説明する。それまであと何回かかるか知らないけど。」

「いや、流石に今日で終わらせますって......」


 ここまでの19回を全て無駄にするつもりはないし、今回失敗したとしても21回目に成功するだけだ。失敗していいわけないけど。


「それじゃ柏田、行ってくる。」

「言ってくるね柏田君ー。」

「じゃあね柏田、次はガスマスク用意すること。」

「いってらっしゃい。生きて帰ってくるんすよー。」


 そして私たちは新宿ダンジョン1Fに20回目の挑戦を開始した。


「でも、まさか20回もかかるなんてねー。」

「まあね、でもそれも今日で終わり。今日完了させて陽毬さんに焼肉奢ってもらうんだ......」

「フラグ建設お疲れ様。そして累計12回目のそのやり取りもお疲れ。」


 ちなみに焼肉の奢りは何回やっても1Fをクリアできない私たちに陽毬さんが追加したご褒美だ。ぶっちゃけこれでかなりモチベーションが上がった節はある。


「あ、そういえば最近ダンジョンに入れろっていう運動が結構活発らしいですね。何でこんな場所にみんな入りたがるんだろ?」

「バカの考えることは私たちにはわからない。あとはダンジョンでの死亡報告を聞いてて入らなかったけど、時間が経って恐怖が薄まったというのがある。」

「ダンジョンの死亡報告ってー......ああ、METUBEのライブ配信でのことでしたっけー?」


 METUBEのライブ配信とはダンジョンに入って見たという人気のないtuberが軽率にやった結果起きた惨事だ。


 基本的にそういうことは禁止されてるしその配信のアーカイブは即座に消されたが切り抜きが何度消してもネット上に出回るといういたちごっこが起きている。


 ......まあ、その基本的に当てはまらないのがウチな訳だが......


「そう。アレからもう二ヶ月も経つ。そろそろ恐怖も薄れてもいいころ。」

「もうそんなに時間経ったんですね.......最近ちょっと記憶飛びかけてて......」

「そうー?私は、」


 とここで私たちは足を止めた。敵だ。


「ギィギィ!」

「ギュー!」


「敵は恐らく蝙蝠2兎1です。」

「了解、蝙蝠1と兎はどうにかするからもう一匹の蝙蝠お願い。」

「了解ー。」


 そして、魔物は突っ込んできた。


「やっ......!ぐっ......!」


 蝙蝠に対して銃剣を突き刺し、兎の突進を耐える陽毬さん。その上を蝙蝠が過ぎていく。


「光よ......!」


 私は蝙蝠に右手を翳して言う。その瞬間、蝙蝠は右に逸れる。


 ———それを誘導したんだよ。


 私は左手に持った蒼の短剣を蝙蝠に向かって突く。蝙蝠は驚いた顔をしながら慌てて体を浮き上がらせる。その先には、


「えいっ!」


 美幸の炎魔法を纏わせた警棒が投げられていた。そのまま蝙蝠は潰れて燃える。普通の魔力量ならできないが、魔力を貯蓄することのできる美幸だからこそできる芸当だ。


「終わった......!陽毬さん!」


 私は陽毬さんの方を向く。すると陽毬さんは丁度兎を貫いている所だった。


「ん。お疲れ様。」

「お疲れ様です。やっぱ飛んでると対応厳しいですね.......」

「もっと点や線の攻撃じゃなくて面の攻撃がしたいよねー。」


 私たちはささっと魔石を回収し、美幸のバッグに詰め込む。美幸は荷物持ちでも出来るということを言われたのが結構効いたのかしばらくはどうするか悩んでいたが、「私、闘いもするけど荷物持ちにもなるよー。」と言って大容量リュックサックを柏田に頼んでいた。


『アレ、いいんですか?』

『構わない。そもそも私たちは行軍中の物資が少ないことが欠点としてあったから美幸の決断はすごく助かる。』


 と陽毬さんは言っていたので、まあいいかと思った。この後荷物持ちの美幸に何度も感謝することになるのだが......


「地図を確認する、美幸、近寄って。紗綾香は警戒。」


 私たちは近づく。陽毬さんは戦闘以外の面もやりたいと言っていたので彼女は地図を書くようになっていた。それまで右手法で何とかしていたが、地図があると安心感が格段に変わる。


「やっぱりそこを右に曲がったら2Fの階段ですねー。」

「うん。それじゃ進もっか。」


 そして階段についた私たち。


「終わった〜。」

「お疲れ様ー、紗綾香、陽毬さんも。」

「二人ともお疲れ、美幸、ポーションお願い。」


 美幸から渡された賦活のポーションを飲む。原料を聞いたら「エナジードリンク各種を〔融合進化〕させたんだー。」とのこと。味はリンゴジュースを飲んでいるようで、炭酸入りのように口の中で弾ける。そしてこれを飲むとなかなか気分が上がるのだ。......ヤバいお薬ではない。多分。


「さて、私から見た今日の出来を伝える。」


 私たちはゴクリと喉を鳴らす。と言っても、結果は分かっているのだが。


「結果———及第点。多少飛行系の相手に苦労しているけれど、それでもなんとかなるレベル。ただ、連携しないと戦えないのはいただけないから一人でも戦えるようにする。これ以外は概ね良し!」


 私たちはホッと一息つく。少し前ならばすぐにでも飛び上がりたかっただろうが、今は一息つくだけだ。


「それじゃあ戻って奢る前に、2Fを見学していく。いくよ。」


 私たちは進む。そして2Fに入る。というその時、床をキラリと光るものに気づいた。


「すみません止まってください。」

「わかった。」

「紗綾香......?」


 美幸が不思議そうにするが無視し、観察する。ワイヤートラップだ。起動する罠は......


「って、今日は解除用具持ってきてないのか。」


 今度2Fに行くときは持ってこねば......と思っていると、


「はい、これ。」


 と言って陽毬さんが渡したのは出発前に柏田が渡した工具箱だ。まさか。


「紗綾香が『訓練室』で練習したり本読んだりしてたの見たから、そのために柏田に用意させてた。」


 .....本当に、この人には敵わない。そう思いながら私は工具箱を受け取る。中に入っていたのは———罠解除用のツール一式だった。


「えっ!?紗綾香何してるのー?」

「紗綾香は罠の解除をしている。荷物を持ったりする美幸やマッピングをする私みたいに何か覚えたかったんだって。」


 何で陽毬さん知ってるんだろう......その思いは誰にも言ってなかったはず......ああ、紗枝さんか。どうやら私の思いを陽毬さんに伝えていたようだ。


「よし、解除できた。」


 罠の解除が終わった。私は立ち上がる。


「どんな罠だったのー?紗綾香ー。」

「ん?大きな音を出すだけの罠だったよ。」


 普通ならただのドッキリ用の罠だがダンジョンなら音で魔物が集まってくるためブービートラップ間違いなしだ。今後も気をつけねば......


「それじゃあ、もうこれで2Fの階段前は踏んでみてもいいと思いますよ?」

「それじゃあ私ー、みんなでせーので踏みたいー!」


 ふむ、思い出づくりとしてはいいかもしれない。


「陽毬さん、大丈夫ですか?」

「それくらいは構わない。むしろ賛成。」


 そのまま私たちは一列に並び、手を繋ぐ。そして、


「「「せーの!」」」




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