第十七話 理由
今回も疑問に思うところがあるかもしれませんが、設定ミスではないはずです。
誤字報告や質問があれば嬉しいです。
そのまま、柳沢係長は青い顔をして帰っていった。
私———いや、美幸も、五十嵐さんも、柏田も、優希課長秘書も、『特装課』の皆さんも、八千代課長のことを見ている。
八千代課長は最初の挨拶の頃からは考えられないほど引き締まった顔で佇んでいる。
私は、意を決して八千代課長に話しかけた。
「あの、八千代か———」
「怖かったぁぁぁぁぁぁぁ!」
瞬間、八千代課長が座り込んで叫び始めた。
「......は?」
「うわああああん!怖かったあああああ!何!?あの目!強く睨んできてきつかったんだけど!?最後なんて恨み込めてたし!しかもあたしの言うこと何度も何度も言い返してくるし!」
八千代課長は涙目だ。そこには先程柳沢係長を言い負かした女傑の姿はなかった。
「ていうかあの係長酷くない!?あたしまだ14歳だよ!?それなのにあの係長私に向かってぶちぎれるし、容赦ないしほんともうやだー!」
八千代課長は叫ぶ。そこに優希課長秘書が近づき、
「よ、よしよし〜がんばったね〜偉いね〜桜ちゃん。」
「うえええええええん!紗枝さぁぁぁぁぁぁん!」
八千代課長を抱きしめた。八千代課長はそれに甘える。
しばらくすると、ゆっくりだが八千代課長は静まっていく。
そうすると、次第に周りが湧き立ち———
ある瞬間、一斉に拍手が起きた。
「ふぇ......?」
「八千代ちゃんやるなぁ!」
「柳沢係長にあそこまでいえるだなんて!」
「見直したよあんたのこと!」
「すごいねー、紗綾香!」
「うん......本当に。」
私たちも拍手をしていた。それほどまでにすごいと思ったのだ。
「う、う、五月蝿いですよ!不敬ですよ!?さっき柳沢係長が何でああなったかもう忘れましたか!?」
そう八千代課長が言うと、歓声は一気に静まり返った。
「......でも、ありがとうございます。何だか褒めてくださって。」
八千代課長は照れ隠しに言う。
みんな笑って目を合わせる。
そんな中、一人だけ表情の変わっていない五十嵐さんが前に出る。
「八千代課長。」
「へっ?」
「私は八千代課長のことを課長にふさわしくないと思っていた。」
「ぐふっ......」
なかなか辛辣な物言いをした五十嵐さんは続ける。
「どもってばっかりで、左遷されて、優希課長秘書の尻に敷かれてどうしようもない人だと思っていた。」
「ごはぁっ!」
......いや、確かに優希課長秘書の尻に敷かれてはいたと思うが、それ以外は......いや、間違っていないか。
「でも、あなたは今の口論で私たちに対して、自分が課長であることを示した。自覚はないかもしれないけど、確かに示した。」
「え......」
そして、五十嵐さんは八千代課長を立ち上がらせ、対面する。
「私はあなたのことを課長だと思う。だからこそ、言わせていただく。———これから宜しくお願いします、課長。」
そうして、五十嵐さんは頭を下げた。
そこで私たちも一緒に出る。
「八千代課長〜、紗綾香のためにありがとうございますー!このお礼は必ずー!」
そう言って、美幸は頭を下げた。
「申し訳ありません、私が素直に短剣を受け取っていればこんなことには......本当に、ありがとうございました!」
そして私も頭を下げる。
「俺からも、桜ちゃん......八千代課長に言わせていただくっす。救ってくれて、ありがとうございますっす。!」
締めに、柏田が頭を下げた。
「いや......私はただ......半分くらいはただ柳沢がむかついただけで......」
「ふふっ、ならもう半分は何なのかしら?」
「あー、うー......」
優希課長秘書が問うと、八千代課長は俯く。
「......もう半分は、部下にいい武器を与えたかったって言うだけですよ。」
八千代課長は照れるように言った。そして、
「いい武器が有れば、死ぬ確率は減るでしょ?」
そう泣きそうな顔をしながら、言ったのだった。
トラウマになっているようです。ならない方がやばいかもしれませんが。




