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第9話 入部体験1

「なんすかー?」


呼ばれた森下が、部室の奥から返事をした。


黒瀬が奏多を示す。


「結城の相手してやって。」


「ん?」


森下が奏多を見る。


奏多も森下を見る。


二人は初対面だった。


「……よろしくお願いします。」


少し緊張しながら、奏多が頭を下げる。


「おう! よろしく!」


森下は明るく返した。


その一方で、奏多と一緒に来た男子も、別の部員に声をかけられていた。


「僕もやっていいんですか?」


「もちろん。」


男子は少し驚いたあと、嬉しそうに頷いた。


奏多は森下と。


男子は別の部員と。


それぞれ別の場所へ向かう。


「じゃ、またあとで。」


「うん。」


二人はそこで別れた。


奏多は競技機の準備を始める。


向かいでは森下も手慣れた様子で準備を進めていた。


「昨日が初試合だったんだって?」


「はい。」


「じゃ、気楽にいこうぜ。」


その軽い調子に、奏多も少しだけ肩の力を抜いた。


やがて、二人の武器構成が表示される。


奏多は――


ブレード。

シールド。

ライトシューター。


対する森下は――


ランス。

大鎌。

ブレード。


森下はその中からランスを選んだ。


どこか楽しそうだった。


二人が向かい合う。


開始のカウントが始まった。


奏多が構える。


森下の手元にはランスが生成されていく。


そして――


《START》


森下はすぐには飛び込まず、生成されたランスを軽く構えた。


少し動かし、感触を確かめる。


(実戦で使うの初めてなんだよな)


正面の奏多を見る。


そして、一気に踏み込んだ。


ランスの穂先が真っ直ぐに伸びる。


「うわっ!」


奏多が慌てて身体をかわした。


だが、森下は止まらない。


すぐにランスを引き、次の突きを放つ。


狙いは――奏多のバッテリー。


奏多は身体を引いてかわす。


(惜しい!)


森下はさらに追った。


もう一度。


また、バッテリーへ。


奏多が避ける。


さらに突く。


やはり同じ場所。


「またそこ……?」


さすがに奏多も気づいた。


「くっそ、当たんねぇ!」


森下は悔しそうにランスを引く。


狙いはすっかり露骨になっていた。


それでも、森下は攻めるのをやめない。


距離を詰める。


奏多は後退する。


一歩。


また一歩。


ランスの穂先が迫った。


「まずっ……!」


奏多はライトシューターへ切り替える。


その間にも森下は来る。


「うわっ!」


奏多は慌ててライトシューターを構え、そのまま連射した。


狙いを定めている余裕などない。


ただ、迫ってくる森下へ向かって撃つ。


森下もランスで射撃に対応する。


何発もの弾が飛ぶ。


その中の一発が――


森下のバッテリーに命中した。


直後。


ランスが破壊される。


「え。」


森下が止まった。


「……え。」


奏多も止まる。


一瞬、妙な間ができた。


森下が奏多を見る。


「……今の狙った?」


「いや……」


奏多はライトシューターを持ったまま答える。


「適当に撃ちました。」


「だよなぁ。」


森下はちょっと悔しそうだった。


森下は武器選択を開く。


破壊されたばかりのランスは、もう選べない。


残るのはブレードと大鎌。


「じゃあ、こっち使ってみよ。」


森下が大鎌を選択した。


グリップから長い柄が伸び、大きな刃が展開されていく。


それを見た奏多の顔が、わずかに曇った。


「うわぁ、大鎌かぁ……。」


昨日の試合で苦戦させられた武器だ。


だが――


「……ん?」


奏多が眉をひそめる。


何かがおかしい。


正面から見ている奏多には、森下の手元から大鎌の全体までよく見えていた。


上下が逆だ。


しかし、森下は気づいていない。


そのまま大鎌を振る。


そして――振った瞬間。


「……あれ?」


森下の動きが止まった。


大鎌を見る。


手元を見る。


「あ、逆か。」


グリップを百八十度持ち替える。


その隙に、奏多はライトシューターを森下へ向けた。


「ん?」


発砲。


「ちょ、待っ――!」


何発かが森下に命中する。


奏多はそのまま撃ちながら後ろへ下がった。


森下が大鎌を持ち直す間にも、距離を取っていく。


ようやく森下が大鎌を正しく構えたときには――


奏多はすでに遠い。


大鎌を構えた森下は、離れてしまった奏多を見て呟いた。


「……離れすぎた。」

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